日中大学フェア&フォーラム開催報告&資料
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日本の産学連携に関心 日中大学フェア&フォーラム中国参加者

2018年08月31日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 日本と中国の大学や企業が意欲的な研究成果を展示する「日中大学フェア&フォーラム in JSTフェア2018」が、8月30、31の両日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた。中国側からは会場で来場者への展示説明などに当たった約120人を含め、大学や企業その他科学技術関係機関から200人以上が来日し、来場者や科学技術関係者たちと交流した。

 展示ブースで研究成果の紹介に当たった中国側参加者にとって、JSTフェアや別のフロアで同じ日に開催された「イノベーション・ジャパン2018~大学見本市&ビジネスマッチング~」の日本側展示を見るのも重要な仕事。これらの人々から、日本の大学が実用化を目指す研究に力を入れていることがよく分かったという声が多く聞かれた。日本国内では、産業化を狙った研究ばかりではなくどのように役立つかはっきりしない基礎研究にも力を入れるべきだという声とともに、産学連携による十分な成果が出ていないという厳しい評価が併せて聞かれる。しかし、産学連携に関しては日本の方が中国より進んでいると見る中国人が少なくないことが、中国側参加者の声からうかがえる。

 「日中大学フェア&フォーラムin JSTフェア2018」の会場には、中国から22の大学・機関の展示ブース28が並んだ。清華大学北京大学浙江大学上海交通大学など世界的な評価も高い中国を代表する大学が含まれている。ただし展示数としては、JSTが研究支援あるいは事務局機能を担う研究プログラムに参加する大学、企業の展示を中心に、日本の展示がはるかに多い。内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の展示コーナーには、「エネルギーキャリア」、「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」「レジリエントな防災・減災機能」など五つのプログラムの研究目的や成果が紹介された。これらは早晩、中国でも切実な課題となる研究開発課題・領域といえる。

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戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能」

 また、10年後の社会のありようを見据えた挑戦的な研究開発課題が並ぶ「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の展示コーナーも関心を集めた。こちらには、ビッグデータ解析によって認知症の予防と早期発見を目指す、あるいは自動運転技術など機械の能力と人間の能力をうまくかみ合わせ、新たな機能創出を目指すといった産学連携の共同研究プログラムなどの展示が並んだ。

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COIプログラムの展示エリア

 「ロボット研究をはじめ日本の大学は企業が求める研究をよくやっている。新エネルギー、材料、AI(人工知能)など日本が先端を走っている分野で一緒に研究をやりたい」。こう語るのは、中国科学院大学創新創業学院の王暁飛副院長。王氏は「中国のイノベーションは企業主体の面が強い。これからは大学が主体となり企業と組んでイノベーションを創出するのが大学の役目」と、中国で大学の産学連携の取り組みがまだ十分でないことを率直に認めた。中国科学院大学は、博士課程に7,000人、修士課程に9,000人の院生を抱えるが、学部生は400人しかいないという特異な人的構造を持つ。学部生を採り始めたのが2014年からのためだ。このため北京以外の地方の一流大学との連携強化が大きな方針となっている。王創新創業学院副院長とともに展示ブースで来場者の応対に当たっていた李金柱・科研所副所長も、「日本のよいところを吸収し、日本との関係を点から面に広げたい。大学の先生たちが日本と共同研究が出来るような仕組みをつくりたい」と、日本の大学との連携にも強い意欲を示していた。

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中国科学院大学の展示

 「日本の大学が高齢化に対する研究に力を入れていることが分かった。これからぜひ共同研究をしたい」。同じような声は、北京大学の李士杰・産業技術研究院副院長からも聞かれた。日本の大学が社会的課題の解決や実用化をイメージして研究を進めていることに対する評価が共通している。浙江大学の展示ブースでは、ロボットから医療・ライフサイエンスまで多様な実用技術を紹介していた。浙江大学サイエンスパークに2014年に設立されたという企業「百格基因(BIOGLE)」の銭揚文氏は、「日本の展示を見て、基礎段階から出口を意識した研究をしているイメージを持った。中国の大学が学ぶところは大きい」と感想を述べていた。同社はすでにゲノム編集技術を利用して多様な事業を展開しており、名古屋大学の研究者とも大豆に関する共同研究を行っている。

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浙江大学からは3ブースの出展があった

 このほか、バイオゴミからメタンや水素をつくる技術開発を進めている清華大学環境学院の博士課程大学院生、王邑維氏は「『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)』の展示の中で、アンモニアを水素のキャリアとして活用する研究を進めていることを知った。私の研究とも関係しているので今後、交流したい」という希望を明らかにした。また、大学での基礎研究レベルの有望な成果から既に大学サイエンスパークで商品化されている技術まで合計九つの展示を並べた上海交通大学のブースでも、郭超・国際技術移転担当主任が、「AI、画像認識、自動運転に日本が大きな関心を持っていることが分かった。来年は産学連携の分野で日本の関心が強い展示をそろえたい」と語っていた。

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