【07-14】新中間層が牽引する中国市場
徐 向東(株式会社中国市場戦略研究所代表) 2007年10月20日発行
中国沿海都市部は高度大衆消費時代を突入し、北京、上海、広州とその周辺地域は所得向上に従い、消費生活には革命的な変化が起き、高品質なライフススタイルを追究する消費志向が広がっている。
とりわけ中間層の人口規模が拡大し、現在は全就労者の約16〜18%を占め、2億人規模まで拡大しており、このまま推移すると、2020年に中間層が全人口の約35〜40%を占めるようにいたる。
1990年代後半から急速に台頭した中間層のほとんどが20〜30代。彼らは、日本の団塊世代にみられる「やる気・パワー」と団塊ジュニア世代にみられる「高い情報処理能力・感性」を兼ね備える中国の「 新中間層」である。
しかし最近になって、新中間層は年齢的に30〜40代に移行し、経営管理や専門技術などの重要なポジションにつくようになった。高成長が続くなか、仕事のプレッシャーが増え、心身の健康に寄与し、さ らに落ち着いた高品質のライフスタイルを求めるようになってきた。
「行け行けドンドン」から「癒し・安全・安心」へと変わる中国の消費変化は、「環境にやさしい」「健康増進に寄与する」に長らく取り掛かってきた日本企業にとってまさに市場チャンス拡大の好機である。
第二の時代のもうひとつの象徴的な変化は一人っ子世代という新たな消費主力層の誕生である。15〜27歳の一人っ子世代が2億8000万人を超え、デジタル製品やファッションの消費をリードしている。
近年、日本企業が中国でのブランド力が低下し、販売力が弱まっている。その理由は、日本企業の中国マーケティングをサポートするコンサルティング機能の不在と迅速な意思決定機能の欠如などが考えられる。日本企業の最大の課題は1.販売力の向上、と2.ブランド力の向上である。そのために、販売体制の構築と 現地優秀人材の活用に力をいれ、さらに、エモーショナル( 感情)要素の導入や「顔」の みえるPRなどによって、企業ブランドの強化を図る必要がある。そし て何よりも重要なのは、「最新技術や最新製品で、中国の経済発展や国民生活の向上に貢献している」と積極的にアピールすることである。
北京五輪と上海万博後の中国における最も確率の大きいシナリオは、「貧富格差が解消しないが、安定成長が続けていく」ことであろう。巨大市場中国で勝つた めには強い製品力を生かしながら、現 地適応力を構築する必要がある。販売ネットワークを構築し、現地社員のモチベーションを強化する体制作りにもこれから ますます必要とされるのであろう。