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【19-006】中国「外商投資法」

2019年3月27日 中倫律師事務所東京オフィス

 注目されていた「外商投資法」が2019年3月15日に公布されました(2020年1月1日施行)。
「外商投資法」は、現行の「中外合弁経営企業法」、「外資独資企業法」及び「中外合作経営企業法」(いわゆる「外資三法」)に替わる、中国の外商投資の促進、保護及び管理に関する新たな枠組みとなる重要な基本法です。

 同法の要点は、次の通り。
1 外資と内資の平等化(国民待遇、外資三法の廃止、政府調達への参加許可等)
2 外商投資参入ネガティブリストの法律化
3 投資保護の強化(知財保護、クレーム処理等)
4 投資管理の透明性(許認可に代わる情報報告制度)
「外商投資法」の公布により、合弁企業は今後、合弁契約や定款を修正する必要が生じてきます。また、これに伴う中国側合弁側との交渉も避けられないと予想します。

 以下に「外商投資法」の日本語訳を掲載致します。皆様のご参考になれば幸いです。
「外商投資法」の公布により、合弁企業は今後、合弁契約や定款を修正する必要が生じてきます。また、これに伴う中国側合弁側との交渉も避けられないと予想します。

中華人民共和国外商投資法

2019年3月15日公布
2020年1月1日施行

第一章 総則
第二章 投資促進
第三章 投資保護
第四章 投資管理
第五章 法的責任
第六章 附則

第一章 総則

第1条
対外開放の更なる拡大、外商投資の積極的促進、外商投資の合法的権益の保護、外商投資管理の規範化、全面的開放の新たな枠組作りの推進、及び社会主義市場経済の健全な発展を促進するため、憲法に基づき、本法を制定する。
第2条
中華人民共和国国内(以下「中国国内」という)における外商投資は、本法を適用する。
2. 本法にいう「外商投資」とは、外国の自然人、企業又はその他の組織(以下「外国投資者」という)が直接又は間接に中国国内において行う投資活動を指し、次の各号に掲げるものを含む。
(一) 外国投資者が単独又は他の投資者と共同で中国国内に外商投資企業を設立すること。
(二) 外国投資者が中国国内企業の株式、出資持分、財産持分又はこれらに類似する権益を取得すること。
(三) 外国投資者が単独又は他の投資者と共同で中国国内において新規プロジェクトに投資すること。
(四) 法律、行政法規又は国務院が規定するその他の方法による投資。
3. 本法にいう「外商投資企業」とは、投資の全部又は一部を外国投資者が行い、中国法により中国国内において登記を経て設立された企業を指す。
第3条
国は、対外開放という基本政策を堅持し、外国投資者による法の下の中国国内における投資を奨励する。
2. 国は、ハイレベルの投資の自由化・利便性政策を実行し、外商投資の促進メカニズムを確立・整備し、安定的かつ透明で予測可能な公平競争の市場環境を作り上げる。
第4条
国は、外国投資者に対して参入前国民待遇とネガティブリスト管理制度を実行する。
2. 前項にいう参入前国民待遇とは、投資参入の段階において、外国投資者及びその投資に、自国の投資者及びその投資を下回らない待遇を与えることを指す。所謂ネガティブリストとは、国が規定する特定分野において、外国投資者に対して実施する参入特別管理措置を指す。国は、ネガティブリストに規定のない外商投資に対して国民待遇を与える。
3. ネガティブリストは、国務院が公布又は交付の認可をする。
4. 中華人民共和国が締結又は加盟した国際条約又は協定において、外国投資者の参入について優遇規定がある場合には、関連規定に従い執行することができる。
第5条
国は、法により外国投資者の中国国内における投資、収益及びその他の合法的権益を保護する。
第6条
中国国内において投資活動を行う外国投資者及び外商投資企業は、中国の法令を遵守しなければならず、中国の国家安全に危害をもたらし、社会公共利益に損害をもたらしてはならない。
第7条
国務院商務主管部門及び投資主管部門は、その職責の分担に従い、外商投資の促進、保護及び管理業務を行う。国務院のその他の関係部門は、各自の職責の範囲内で、外商投資の促進、保護及び管理の関連業務を担当する。
2. 県以上の地方人民政府関係部門は、法令及びその人民政府が確定した職責の分担に従い、外商投資の促進、保護及び管理業務を行う。
第8条
外商投資企業の従業員は、法により労働組合を設立し、労働組合活動を行い、従業員の合法的権益を保護する。外商投資企業は、自社企業の労働組合の活動に必要な条件を提供しなければならない。

第二章 投資促進

第9条
外商投資企業に対し、法による国の企業発展支援に関する各種政策を平等に適用する。
第10条
外商投資に関する法律、法規及び規則を制定する際、適切な方法を用いて外商投資企業から意見及び助言を聴取しなければならない。
2. 外商投資に関する規範性文書及び裁判文書等は、法により遅滞なく公布しなければならない。
第11条
国は、健全な外商投資のサービスシステムを構築し、外商投資者及び外商投資企業に対して、法令、政策措置及び投資プロジェクト情報等に関する問い合わせ及びサービスを提供する。
第12条
国は、他の国及び地区、国際組織と多者間又は両者間の投資促進協力メカニズムを構築し、投資分野における国際交流と協力を強化する。
第13条
国は、必要に応じて特殊経済区域を設立、又は一部の地域で外商投資に関する試験的政策措置を実行して、外商投資を促進し、対外開放を拡大する。
第14条
国は、国民経済及び社会発展の必要に応じて特定業種、分野、地区における外国投資者の投資を奨励し、誘致する。外国投資者及び外商投資企業は、法律、行政法規又は国務院の規定により、優遇を受けることができる。
第15条
国は、外商投資企業が法により標準制定作業に平等に参加することを保障し、標準制定の情報公開及び社会による監督を強化する。
2. 国が制定した強制的標準は、外商投資企業に平等に適用される。
第16条
国は、外商投資企業が法により公平な競争を通じて政府の調達活動に参加することを保障する。政府調達においては、法により外商投資企業が中国国内で生産する製品、提供するサービスを平等に取り扱う。
第17条
外商投資企業は法により、株券、社債等の証券の公開発行及びその他の方法により資金を調達することができる。
第18条
県以上の地方人民政府は、法律、行政法規、地方性法規の規定に基づき、法定の権限内で外商投資の促進及び利便化の政策措置を採ることができる。
第19条
各レベルの人民政府及びその関連部門は、利便性、高効率、透明性の原則に基づいて、事務手続を簡素化し、事務効率を向上させ、行政事務サービスの最適化を通じて外商投資に対するサービスレベルをより一層向上させなければならない。
2. 関係主管部門は、外商投資のガイドラインを作成・公布し、外国投資者及び外商投資企業にサービス及び便宜を提供しなければならない。

第三章 投資保護

第20条 国は、外国投資者による投資に対して、徴収を行わない。
2. 特殊な状況において、国はその公共利益のために、法律の規定に基づき、外国投資者による投資に対して、徴収又は徴用を行うことができる。徴収、徴用は、法定の手続に基づいて行われなければならず、かつ遅滞なく、公平かつ合理的な補償を与えなければならない。
第21条
外国投資者の中国国内における出資、利益、資本収益、資産処分所得、知的財産権の使用許諾料、法により取得した補償又は賠償及び清算所得等は、法により人民元又は外貨で自由に送金し、又は送金を受けることができる。
第22条
国は、外国投資者及び外商投資企業の知的財産権を保護し、知的財産権の権利者及び関係権利者の合法的権益を保護する。知的財産権の侵害行為に対しては、法により厳重に法的責任を追及する。
2. 国は、外商投資の過程における意思自治原則及び商業規則に基づく技術協力を奨励する。技術協力の条件は、各投資者が公平の原則に則り平等に協議して確定する。行政機関及びその職員は、行政手段を用いて技術移転を強要してはならない。
第23条
行政機関及びその職員は、職責を履行する過程において知り得た外国投資者、外商投資企業の営業秘密を法により保持しなければならず、漏洩し、又は不法に他者に提供してはならない。
第24条
各レベルの人民政府及びその関係部門が制定する外商投資関連の規範性文書は、法令の規定に合致しなければならず、法律、行政法規の根拠をなくして、外商投資企業の合法的権益を減損し、又はその義務を加重し、市場参入及び撤退に条件を設け、外商投資企業の正常な生産経営活動に干渉してはならない。
第25条
地方各レベルの人民政府及びその関係部門は、外国投資者及び外商投資企業に対して、法に基づいて行った政策的承諾及び締結した各種契約を履行しなければならない。
2. 国の利益及び社会公共利益の必要により政策的承諾、契約の約定を変更する場合、法定の権限及び手続に基づいて行い、かつ法により外国投資者及び外商投資企業がこれにより受けた損失を補償しなければならない。
第26条
国は、外商投資企業クレーム処理メカニズムを構築し、外商投資企業又はその投資者から提起された問題を遅滞なく処理し、関連する政策措置を協調して改善する。
2. 外商投資企業又はその投資者は、行政機関及びその職員の行政行為が自身の合法的権益を侵害したと認める場合、外商投資企業クレーム処理メカニズムを通じて協調による解決を申し立てることができる。
3. 外商投資企業又はその投資者は、行政機関及びその職員の行政行為が自身の合法的権益を侵害したと認める場合、前項の規定に従い外商投資企業クレーム処理メカニズムを通じて協調による解決を申し立てることができるほか、法による行政不服申立、行政訴訟の提起ができる。
第27条
外商投資企業は、法により商会、協会を設立し、又はこれらに自由意思により参加することができる。商会、協会は、法令及び定款の規定に従って関連する活動をし、会員の合法的権益を保護する。

第四章 投資管理

第28条
外国投資者は、外商投資参入ネガティブリストに規定する投資禁止分野に投資を行ってはならない。
2. 外国投資者は、外商投資参入ネガティブリストに規定する投資制限分野に投資する場合、ネガティブリストに規定する条件に合致しなければならない。
3. 外商投資参入ネガティブリスト以外の分野については、内資外資一致の原則に則って管理する。
第29条
外商投資プロジェクトが審査、届出を必要とするものである場合は、国の関連規定に従って執り行う。
第30条
外国投資者は、法に定める許可の取得を必要とする業種及び分野に投資する場合、法に従って関連の許可手続を行わなければならない。
2. 関係主管部門は、内資と同一の条件及び手続に従って外国投資者の許可申請を審査しなければならない。法律、行政法規に別段の規定がある場合には、この限りではない。
第31条
外国投資企業の組織形態、機関構成及びその活動規則には、「中華人民共和会社法」及び「中華人民共和国パートナーシップ企業法」等の法律の規定を適用する。
第32条
外国投資企業は、生産経営活動を行う際、法律、行政法規の労働保護、社会保険に関する規定を遵守しなければならず、関連法律、行政法規及び国の関連規定に基づき、税務、会計、外貨等を処理し、かつ関係主管部門の法に基づく監督検査を受ける。
第33条
外国投資者は、中国国内企業を合併・買収し、又はその他の方法により事業者結合に参加する場合、「中華人民共和国独占禁止法」の規定に基づいて事業者結合審査を受けなければならない。
第34条
国は、外商投資情報報告制度を構築する。外国投資者又は外商投資企業は、企業登記システム及び企業信用情報公示システムにて、商務主管部門へ投資情報を報告しなければならない。
2. 外商投資情報報告の内容及び範囲は、必須原則に従って決定する。部門間の情報共有にて取得できる投資情報については、情報の再提出を要求してはならない。
第35条
国は、外商投資安全審査制度を構築し、国家安全に影響をもたらし、又は影響をもたらし得る外商投資に対して安全審査を行う。
2. 法の下で下した安全審査決定は、最終決定とする。

第五章 法的責任

第36条
外国投資者が外国投資参入ネガティブリストに規定する投資禁止分野に投資した場合、関係主管部門がその投資活動を差し止め、期限を定めて株式、資産を処分し、又はその他必要な措置を講じて投資前の状態に回復するよう命ずる。違法所得がある場合、違法所得を没収する。
2. 外国投資者の投資活動が外国投資参入ネガティブリストに規定する投資制限のある参入特別管理措置に違反した場合、関係主管部門が期限を定めて是正し、必要な措置を講じ、参入特別管理措置の要求を満たすよう命ずる。期限内に是正がなされない場合、前項の規定に従い処理する。
3. 外国投資者の投資活動が外商投資参入ネガティブリストの規定に違反した場合、前2項の規定に従い処理するほか、法に定める相応の法的責任を負わなければならない。
第37条
外国投資者、外商投資企業が本法の規定に違反して外商投資情報報告制度の要求する投資情報を報告しなかった場合、商務主管部門が期限内に是正を行うよう命ずる。期限内に是正されない場合、10万人民元以上50万人民元以下の過料に処する。
第38条
外国投資者、外商投資企業による法律、法規の違反行為に対しては、関係部門が法に従って取り締まり、かつ国の関連規定に従って信用情報システムに記録する。
第39条
行政機関の職員が外商投資の促進、保護及び管理業務において職権濫用、職務怠慢、私利私欲による不正を行い、又は職責を履行する過程において知り得た営業秘密を漏洩し、不正に他者に提供した場合、法に基づいて処分する。犯罪を構成する場合、法に基づいて刑事責任を追及する。

第六章 附則

第40条
いずれかの国又は地域が、投資に関し中華人民共和国に対して差別的な禁止、制限又はその他これらに類似する措置を講じた場合、中華人民共和国は、実状に応じて当該国又は当該地域に対して相応の措置を講ずることができる。
第41条
外国投資者による中国国内の銀行業、証券業、保険業等の金融業への投資、又は証券市場、外貨市場等の金融市場への投資に対する管理については、国に別段の規定がある場合、その規定に従う。
第42条
本法は、2020年1月1日より施行する。「中華人民共和国中外合弁経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」及び「中華人民共和国中外合作経営企業法」は、同時に廃止する。
2. 本法施行前に「中華人民共和国中外合弁経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」及び「中華人民共和国中外合作経営企業法」に基づき設立された外商投資企業は、本法施行後5年間は従来の企業組織形態等のまま継続することができる。具体的な実施規則は、国務院が規定する。

中倫律師事務所 東京オフィス

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パートナー弁護士:孫彦  E-mail:mslee
中国弁護士:李敬花 E-mail:lijin

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※本稿は、中倫律師事務所発行の「速報/中国『外商投資法』(和訳)」を中倫律師事務所の許諾を得て転載したものである。