【13-14】双方とも原点に立ち戻れ 中国中日関係史学会副会長が提言
2013年 9月19日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)
日中両国の日中関係専門家による国際シンポジウムが9月14日都内で開かれ、基調講演した王泰平・中国中日関係史学会副会長が尖閣諸島問題で日中関係がさらに悪化するのを防ぐため、原 点に立ち戻って双方とも受け入れられる解決案を導き出す必要を訴えた。
「現下の難局を乗り越えて~日中が信頼関係を取り戻すには~」と題するこのシンポジウムは、日本日中関係学会が主催、中国中日関係学会が共催して開かれた。王氏は中国人9人から成る訪日団の団長で、中 日韓経済発展協会会長、中日友好21世紀委員会副秘書長も務める。氏はまず2020年に東京開催が決まったオリンピックが、日本と世界をつなぐ絆を太くすることを期待すると述べた上で、7 年後の日中関係については「改善」、「現状のまま」、「さらに悪化」という3様の可能性がある、と語った。
尖閣諸島については「島の問題」という表現を用い、「もし日本が人を常駐させる、あるいは建築物を設置するといった行動に出た場合、必ずそれに対する中国政府の動きが生まれる」と注意を喚起した。武 力衝突にまで発展する可能性にも触れ、心配する理由として「日本政府による島の国有化から1年を経ても日中両国政府の態度が変わらず、手詰まり状態が改善されていない」現実を挙げた。
領有権に関しては、主権に関わる敏感な問題で、解決がきわめて難しい。それ故、1972年の国交正常化、78年の平和友好条約締結の際、日中両国の指導者たちは両国の平和友好という大局に鑑み、領 有権問題を棚上げする道を選んだ…というのが、王氏の主張。「棚上げ」合意があったとする根拠として氏は、倪志敏・龍谷大学民際学研究センター研究員の論文を引用した。
日中首脳の発言や日本国内の国会答弁、新聞報道などから「1970年代に日中首脳が『棚上げ』という共通認識を持っていた」「考え方の違いがあることを双方が認識していた」「 かつて石油共同開発の提案が日本側からあった」という3つの事実が倪研究員の論文から明らかだ、としている。
王氏は、「日中双方が原点に立ち戻り、考えに相違があることを認め、対話によって双方共に受け入れられる解決案を導き出すべきだ」と提案し、さらに「 領有権問題は日中関係の全てではないが、一 つのネックになっている。関係改善を図るためには避けて通れない。訪日団員は皆、日中関係を研究している学者、専門家ばかり。中国が何を考えているか、ぜ ひ理解してほしい」と日本人参加者に呼びかけた。
王氏はまた、日本の書店に中国脅威論を強調する本が並んでいる光景に触れ、正確に中国を位置づけることを日本に求めた。GDP(国内総生産)で日本を追い抜いたものの、世界の大国、強 国の2位は依然として日本。経済のグローバル化が進んでいる今日、GDPだけで判断するのは科学的思考とは言えず、しかもGDPの国内・海外比率など総合的に見ても日本はまだ中国を上回っている。1 人当たりのGDPとなると全く比較できない…など、中国を敵対視せず、仲間と見るよう促した。
「習近平氏が打ち出した『二つの夢』実現のためにも、中国はさまざまな国内問題の解決を迫られている。夢を実現するには長期的、平和的な取り組みが必要だ」として、日 本との関係を重視していることも強調している。中国と日本との関係を「運命共同体」、「鳥の巣と卵の関係と同じ。巣が壊れたら卵も壊れてしまう」と表現した。
さらに「島についての争いで誰が勝者になるのか。中国でも日本でもない。勝者は米国だ」とも語り、政治、経済共に冷え切っている日中関係の現状に深い憂慮を示した。
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