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【13-26】労働教養制度廃止 一人っ子政策も見直し 3中全会決定全文公表

2013年11月19日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

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 中国共産党は11月15日、第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で採択された「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」全文を公表した。改革・開放政策をさらに推進するため、金融自由化などの経済対策だけなく、行政機能の簡素化と権限移譲、一人っ子政策の見直し、定年年齢の引き上げ、労働教養制度の廃止、農村から小型都市への移住制限の全面緩和など政治・社会制度の改革も含む、幅広い分野にわたる対策が盛り込まれている。

 金融関係では、金融市場体系をより完全なものとするため、民間資本が中小型銀行などの金融機構を設立することを許可し、株式発行登録制改革や債券市場の発展と規範化を進め、巨大災害保険制度を構築するなどが打ち出された。

 水、石油、天然ガス、電力、交通、電信などの価格改革を進め、政府による不当な干渉を排して、競争による価格形成を伸ばしていくことや、自由貿易区の拡大などが盛り込まれた。自由貿易区としては今年9月29日に上海自由貿易試験区が正式に始動しているが、これを土台に、条件の整った地方で、自由貿易園(港)区を発展させていく方針が示されている。

 市場メカニズムによる有効な調整が可能な経済活動に対しては、審査・認可を一律で取り消し、残される行政審査・認可事項は規範的に管理し、効率を高める。地方による管理がより便利で有効な経済社会事項については、地方と基層へと管理権限を一律で移譲する...など行政機能の簡素化と権限移譲の方針も明記された。

 中国の少子高齢化は一人っ子政策の影響もあって、日本を初め東アジアのどの国よりも速く進んだ。2010年には早くも、生産年齢人口(15~64歳)が支えられる人口(14歳以下、65歳以上)を下回る「人口オーナス」と呼ばれる人口構造に転じている。決定では、一方が一人っ子である夫婦は2人目の子どもを出産することができる政策を始動させる、とした。

 さらに、すでに顕在化している労働力不足の対策として、定年年齢を徐々に引き上げる政策を検討していくことが打ち出された。

 厳しい戸籍制度のために「農民工」と呼ばれる農村からの都市への移住者が劣悪な生活を強いられていることが大きな社会問題になっている。決定は、条件が合う農業移転人口を徐々に都市部住民としていく方針を示し、戸籍制度改革を促進し、建制鎮(小型都市よりも人口は少ないが農業以外の職業に従事して人が多く住む人口集中区域)と小型都市の移住制限を全面的に緩和することも盛り込んだ。中型都市の移住制限の緩和、大型都市の移住条件の合理的な確定と、特大型都市の人口規模を厳しくコントロールする必要も示している。

 内外から批判を浴びている人権司法保障制度については、労働を通じた再教育の名の下に地方政府が裁判も経ずに好ましくないとみなした人間を勾留する労働教養制度を廃止、違法犯罪行為に対する処罰と矯正の法律を改善し、地域社会における矯正制度を整備する、としている。

 一般国民からの不満が高い政府幹部の勤務、生活態度についても、住居と事務所の複数占有、基準を超えた配備、規定に反する公用車、秘書の配備、規格を超えた護衛、基準を超えた公務接待をいずれも禁止し、規定や基準に反した待遇享受などを厳しく取り締まることが打ち出された。日本の官舎に相当する「官邸制」を検討することも盛り込まれている。