【15-13】青少年交流の大切さ浮き彫りに
2015年 3月30日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)
北京と上海を舞台に3月21-24日開かれた「日中大学フェア&フォーラム in CHINA 2015」で、若者それも高校生というより若い世代から国際交流を促す重要性が浮き彫りになった。
日本の大学紹介を熱心に聴く蘇州外国語学校生徒たち
「日中大学フェア」は、今回もまた中国教育部留学服務中心主催の中国国際教育巡回展とともに開催された。入場者のほとんどは海外留学を希望する大学生、高校生とその親たちで、大学、大学院だけでなく高校留学に対する関心も高いことが伺えた。実際に、米国や英国など多数のブースを構える欧米諸国には高校生の留学生を狙った展示区画も設けられている。
24日上海の東亜展覧館で開かれた中国国際教育巡回展・日中大学フェアの日本・大学展区受け付けを訪れた女子大生がいる。安徽省の省都、合肥から高速鉄道で約3時間かけてやってきたという夏珂さん(安徽大学2年生)だ。小学生のころよく読んだ漫画で日本に興味を持ち、独学で日本語の勉強を始めたという。大学に入った当初は留学する気はなかったが、2年生になり「視野を広げないといけない。こんなに好きな日本になぜ留学しないのか」と思うようになった。しかし、情報が少ない。たまたま新華網で日中大学フェアの開催を知り、よい機会だと思ってやってきた、とのこと。
夏珂さん
「これほど多くの大学がブースを出しているのを見て、自分がいかに勉強不足か分かり、日本に留学したいという気持ちが一層、強くなった。東京大学を目指したい」。夏さんは、明るい表情で手の届くところにある夢を語っていた。
上海でのフェア会場で、ひときわ目立つ高校生の集団がいた。蘇州からバスでやってきた蘇州外国語学校の生徒たち57人だ。蘇州外国語学校は、日本に留学経験のある教師たちが中学からみっちり日本語を教える中高一貫校として知られる。21大学のブースが並んだ日本・大学展区内には、6つの大学が順に大学の魅力をアピールする説明会場も設けられた。狭い部屋ではあったが、熱心に聞き入る同校生たちで、毎回、満員の状態だった。
「日中大学フェア&フォーラム in CHINA 2015」を主催した科学技術振興機構は、今年度から、日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)をスタートさせた。アジアの青少年たちに日本の最先端の科学技術への関心を高めてもらい、アジアと日本の科学技術の発展に貢献することを目的としている。初年度は公募計画コース、高校生特別コース合わせて約2,900人が訪日している。長期間続けることで日本とアジア諸国の友好関係は確実に深まると期待される事業だが、今回の「日中大学フェア&フォーラム in CHINA 2015」で早くもその効果とも思われる光景が見られた。3月21日に北京で行われた日中大学フェアの日本・大学展区受け付けに、昨年10月さくらサイエンスプランで日本に来たばかりの中国人女子大生が訪ねてきてくれたのだ。北京大学口腔医学院生の鄒薇さんで、鄒さんは東北大学大学院歯学研究科の招きにより昨年10月22~29日に来日、災害歯科医療学に関する災害歯科医療学の講義を受講したほか、歯学研究科・外来の見学、さらには南三陸町での被災地見学などの研修を受けた。
鄒薇さん
同時に招聘されたのは、鄒さんのほか9人で、北京大学のほか四川大学華西口腔医学院、天津医科大学口腔医学院および福建医科大学口腔医学院の院生たちが含まれている。鄒さんが日本に到着初日から驚いたことは、日本人がとても礼儀正しいこと。さらに歓迎パーティーでのパフォーマンスに感じた気遣いの大きさ、という。「北京大学では細胞培養をする際、常に汚染を心配しなければならないのに、日本では全く心配する必要がないことが衝撃的だった」と、研究環境の違いも印象深かったことの一つに挙げていた。
日本訪問は、「3人の招聘枠があるので応募してみないか」と北京大学の担当者から声を掛けられたのがきっかけ。それまでは留学するなら米国と考えていた。しかし、今回の日本訪問で考えは一変する。「友人に応募を勧めたいので、さくらサイエンスプランの連絡係や広報係を買って出てもよい」と笑顔で話していた。
「個人同士、組織同士が知り合い、参加者たちに世界一流の研究者になってほしい、というのが、さくらサイエンスプランのコンセプト。北京、上海とも今回のフェア会場では欧米より日本の大学ブースの方が訪れる人は多いように感じた」。上海での大学フェア終了後に開いた交流会であいさつした科学技術振興機構の沖村憲樹特別顧問は、日中の青少年交流がさらに活発になることに大きな期待を示していた。
関連サイト:日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)ホームページ
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