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【15-16】日中の産学官連携めぐり熱心に意見交換‐パネルディスカッション

2015年 8月27日 中国総合研究交流センター編集部

 「日中大学フェア&フォーラム2015」(主催・科学技術振興機構中国総合研究交流センター)のパネルディスカッションが26日午後、東京渋谷区の国連大学ウ・タント国際会議場で開催された。

 このパネルディスカッションには日本側から角南篤・政策研究大学院大学教授がモデレーター、小原満穂・科学技術振興機構(JST)理事がコメンテーター、古川勇二・職業能力開発総合大学校学長と鈴木廣志・昭和電工プロジェクトマネジャーの2人がパネリストとして参加。中国側からは曹兆敏・上海交通大学国家科技園董事長、李光明・同済大学科学技術研究院副院長の2人がパネストとして登壇し、「日中の産学官連携の現状と展望」をテーマに熱心に意見交換した。

 冒頭、角南教授が「世界が大変革の時代に入り、科学技術分野で第4次産業革命に向けて、各国が科学技術イノベーションを成長の原動力として重視する政策を打ち出している」と述べ、大学・研究機関に産業界や社会への貢献が求められていると指摘。中国での産学官協力の現状や日中連携のあるべき姿などについて意見を求めた。

 曹董事長はこれに対し、①中国の大学の科学研究費は2009年から5年間で年平均15%ずつ増えた②中国の科学論文の発表数は既に世界第2位になった‐ことなどを報告。国家の方針として、大学に対して産業界や社会への貢献が強く求められていると語ったものの、「(産業界や社会への貢献は)重要であるが遅れている」ことを率直に認めた。

 また、李副院長は大学からの技術移転問題に触れ、このためのプラットフォームづくりの必要性を指摘し、産学官の連携が「点と点」から「点と面」、さらには「面と面」へと進んでいるとし、同済大学には既に大学のイノベーションを生かした企業が30社あると報告した。李副院長はその上で、「大学の研究開発も市場の需要に合わせ、市場で通用するものをやっていくことが必要だ」と語った。

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 一方、古川学長はこれまでの日中間の大学間交流の経験をもとに、「信頼を得てやっていく」ことの大切さを指摘。日中間の産学官連携についても「台湾や香港を通してやっていくことがいい」との考えを表明した。

 さらに、鈴木氏は昭和電工の駐在員として上海に滞在し、中国の大学との委託研究開発を進めたことなどを紹介すると共に、同社が独自に開発したLEDを使った野菜などの生産工場の例を挙げながら、日中間の技術協力の可能性の大きさを強調した。

 最後に、角南教授がパネリストに対し、「日中連携の将来と課題」について意見を求めると、曹董事長が流暢な日本語で「(日中の産学官連携には)なによりも人間関係が大事だ」「中国と日本の政府、JST、企業が組んでいくと成功率は高くなる」などと指摘。全員が日中連携の大切さを改めて確認し、2時間にわたったパネルディスカッションが終了した。

 なお、その後、JST中国総合研究交流センターの有馬朗人センター長がこの日のフォーラムの閉会式の挨拶に立ち、「(日中の産学官連携は)アジアのイノベーションにとって最も大きな課題である」と述べ、「日中が手を結んでいくことが大事だ」と強調して大きな拍手を浴びた。会場には約300人の聴衆が集まり、パネルディスカッション終了後、国連大学レセプションホールで「日中交流会」が行われた。(文・写真 CRCC編集部)