【16-30】 アジア諸国・地域引き続き上位に OECD国際学習到達度調査
2016年12月 7日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)
世界の15歳を対象とした経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で、アジア諸国・地域が引き続き、世界の他の国・地域より優れた成績を修めた。シンガポールが、科学リテラシー、数 学、読解力全てでトップを占めたほか、科学リテラシーでは日本(2位)、台湾(4位)、マカオ(6位)、ベトナム(8位)、香港(9位)、北京・上海・江蘇省・広東省(10位)、また数学では香港(2位)、マ カオ(3位)、台湾(4位)、日本(5位)、北京・上海・江蘇省・広東省(6位)、韓国(7位)と上位のほとんどをアジア勢が占めた。
さらに、読解力でも香港(2位)、韓国(7位)、日本(8位)、マカオ((10位)と、上位にアジア勢が並ぶ。
PISAは、3年に1度実施されている。今回は、2015年に世界72カ国・地域の生徒約54万人を対象に実施された。今回は、特に科学リテラシーに焦点を当てている。ア ジア勢以外で上位10位内に入った国は、エストニア(3位)、フィンランド(5位)、カナダ(7位)となっている。
説明:国・地域別科学リテラシーの学習到達度(濃い緑ほど成績がよい)=OECDプレスリリースから=
前回、2012年に実施された調査でも、アジア勢は好成績を収めている。上海とシンガポールが、数学の成績でトップとなった。香港、台湾、韓国、マカオ、日本も上海、シンガポールに次ぐ上位成績国・地 域として名を連ねている。科学リテラシーも、成績が最もよかった上位5カ国・地域に、上海、香港、シンガポール、日本が並び、アジア以外では唯一、フィンランドが入っただけだった。
科学リテラシーで、最高レベルの点数をとった生徒の割合はOECD加盟国平均で8.4%。これに対し、上海27.2%、シンガポール22.7%、日本18.2%、香港16.7%と こちらもアジア勢が上位をほとんど独占し、ほかに最高レベルの点数をとった生徒の割合が15%を超える国は、フィンランド(17.1%)だけという結果となっていた。
PISAは、成績を6段階で評価し、レベル2に到達できなかった生徒を「低成績」としている。具体的には、例えばゲージを見てタンクにどれだけのガソリンが残っているかを導き出すのに苦労したりするなど、情 報を使ったり理由付けをするような問題に回答できないようなレベル、とされている。今回の調査では、OECD加盟国の生徒5人に1人以上が、こうした基本的能力を身につけていない実態が明らかになった。一方、香 港、日本、マカオ、シンガポール、ベトナムの生徒は、10人中少なくとも9人が学校を修了するまでに知っているべき基礎を身につけている、という結果となった。こ れらアジア勢以外で同じレベルを達成している他の国はカナダ、エストニア、フィンランドのみとなっている。
また、北京・上海・江蘇省・広東省、香港、シンガポール、台湾は、4人の1人以上が、数学で成績上位者に入る成績を修めた(今回、上海は単独の調査対象とはならず、上海だけの結果は示されていない)。シ ンガポールは、科学リテラシーでも4人に1人以上が、トップレベルの成績を修めている。
OECDによると、初等、中等教育における生徒1人当たりの支出は、2006年以来OECD加盟国では20%増加した。しかし、今回の調査対象となった72カ国・地 域のうちこの期間に科学の成績が改善したのは、シンガポール、マカオなどわずか12カ国・地域のみ。アンヘル・グリアOECD事務総長は、ロンドンで開かれた記者会見で、「 過去10年に科学は大きな進歩を遂げたが、それは学校での科学の成績には反映されなかった。あらゆる子供が可能な限り最良の教育を受けられるようにするために、さらなる取り組みが必要である」と語った。
関連リンク
- OECD2013年12月3日プレスリリース「OECDのPISA2012調査で、アジア諸国が上位を占める」
https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/oecdpisa2012.htm - OECD調査国別分析「中国」
http://www.oecd.org/pisa/PISA-2015-china.pdf
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