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【16-31】中国急上昇、日本は低落 科学研究力比較調査で判明

2016年12月16日  小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

 論文引用数の多さなどから比較した科学研究力で中国の急上昇が顕著な一方、日本の停滞ぶりが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査報告書であらためて浮き彫りになった。

 科学技術・学術政策研究所が11月29日に公表した「日本の科学研究力の現状と課題」改訂版は、この10年間で日本の科学研究力がどのように変化したかを、主要国との比較も併せて、明らかにしている。2 001-03年の3年間と2011-13年の3年間のそれぞれ平均値で示した国ごとの論文数を比較して、もっとも目を引く変化は、中国の躍進だ。論文の総数で世界6位だったのが、2位に浮上しただけではない。他 の論文に引用された数がトップ10%に入る高被引用論文数でも8位から2位に、さらにより価値の高い被引用数がトップ1%の高被引用論文数でも10位から2位に急浮上している。引 き続きいずれの順位でも頂点に立つのは米国だが、中国はいまや米国に次ぐ科学力保持国としての地位を確保しているといえる。

 他方、日本の科学力の低下は、中国と対照的。同じ10年間の変化を見ると、論文総数は2位から5位に、トップ10%の高被引用数論文は4位から8位に、トップ1%の 高被引用数論文に至っては5位から12位に大きく順位を落とした。トップ1%論文生産数では、今や英国、フランス、ドイツ、カナダ、イタリアといったランキング上位の常連国ばかりか、オーストラリア、オランダ、ス ペイン、スイスの後塵を拝する国になってしまっている。

国・地域別論文数、注目度の高い論文数(top10%、Top1%):上位10カ国・地域
各国の大学や研究機関から産出されている論文数やシェア

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被引用数(ある論文が他の論文から引用された回数のこと)が多い論文の数やシェア

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出典:科学研究のベンチマーキング2015, 科学技術・学術政策研究所, 調査資料-239, 2015年公表

 この傾向は、この10年間における論文数の伸びからも、裏付けられる。同じように2001-03年の年平均値と2011-13年の年平均値を比べると、全論文数でわずか3%しか増えていない。米国、ド イツ、英国、フランスがいずれも30%台の伸びを示し、中国に至っては365%という驚異的な増加を示している。主要国の中で日本は、論文総数が伸び悩む唯一の国となっている。

 被引用率が高い論文数でも、現状は似たようなものだ。トップ1%の高被引用論文数では、米国と同じ41%の増加となっているが、中国648%、ドイツ116%、英国101%、フランス117%な ど主要国と比べると明らかに見劣りする。トップ10%に入る高被引用論文数では、伸びは16%にとどまる。米国37%、中国543%、ドイツ78%、英国70%、フランス70%と、こ ちらでも大きな差をつけられている。

 日本の研究力の停滞は、別の数字からも見て取れる。2011-13年に米国で発表された論文の共著者に名を連ねる国・地域がどのような分布になっているかを示す表だ。1位の中国は、論文総数で17.3%を 占める。日本は、英国13.3%、ドイツ12.4%、カナダ11.0%、フランス8.2%、イタリア7.1%の次、7位にようやく顔を出す。比率は6.3%と中国の約3分の1にとどまる。

米国における主要な国際共著相手国・地域上位10(2011-2013年)

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出典:科学研究のベンチマーキング2015, 科学技術・学術政策研究所, 調査資料-239, 2015年公表

 研究分野別でも、中国の存在感に比べ、日本の地位低下は明らか。中国は8分野中6分野で、米国との共著相手国のトップの地位を占めている。日本は、材料科学分野での5位が最高。計算機科学・数学では、2 001-03年の8位から13位へと大きく順位を落とした。中国はこの分野でも1位だ。

 近年、情報通信分野で世界の流れに大きく立ち遅れていることが、日本の科学技術関係者の共通認識になっている。これは計算機科学・数学分野で、トップ1%の 高被引用論文数が2001-03年の8位から2011-13年の20位に急落していることからも裏付けられている。

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