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【17-17】社会発展と若者の未来のために協力を 万鋼中国科学部長ら日中シンポで呼びかけ

2017年 7月 5日  小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 「日中科学技術の協力の新たな途を拓く」をテーマに日中両国の科学技術・学術政策を主導する要人が意見を交わすシンポジウムが3日、科学技術振興機構で開かれた。来 賓としてあいさつした松野博一文部科学相は、環境、エネルギーなど具体的分野を挙げて科学技術協力を深化させることの重要性を強調するとともに、若 者の交流を通じた人材育成面での協力を強化する強い意欲を表明した。中国側からは万鋼科学技術部長が、「科学技術分野の交流と協力が両国の戦略的互恵関係を深化させる大きな力になる」という明快な言葉とともに、松 野文部科学相同様、若者の未来のためにも科学技術協力を推進することが重要との強い意思が示された。

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写真1 松野文科相、万科技部長および登壇者らによる記念撮影

 万科学技術部長のあいさつの中で注目されたのは、今後発展するための理念という面で中国と日本は似ているところがある、という指摘。2016年度から5年間の科学技術政策の基本指針を示した「 第5期科学技術基本計画」の中で日本が唱える「ソサエティー5.0」に触れ、中国も2016年に発表した「国家イノベーション駆動発展戦略要綱」や2016年を初年度とする「第十三次五カ年計画」で、日 本と同様の重点政策を進めようとしていることを紹介した。

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写真2 万科技部長

 力を入れている分野として万科学技術部長が挙げたのは、人工知能(AI)、情報、先進的製造技術、クリーンエネルギー、水素利用自動車、環境、海洋、宇宙など。加えて、繰り返し強調したのが、若 者の力を活用することの重要性だった。中国では、毎年、750~800万人の若者が大学を卒業する。加えて約400万人もの高等職業学校の卒業生もいる。こうした若者にやりがいのある仕事を確保し、イ ノベーション創出の原動力にしていくことが中国にとって大きな課題になっていることを、万科学技術部長は力説した。

 若者の育成という面で、万科学技術部長が高く評価したのは、4年前に科学技術振興機構がスタートさせた「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」(さくらサイエンスプラン)。優 秀なアジア地域の青少年たちを招き、短期間、日本の科学技術に触れてもらうこの事業については、松野文部科学相もあいさつの中で重要性を強調した。万科学技術部長は、中国政府が昨年この事業に呼応して「 日本行政官および大学関係者の招へいプログラム」を立ち上げ、日本から若手の科学技術関係者78人を招いたことを紹介した。

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写真3 松野文科相

 万科学技術部長は、「若い人たちにチャンスを与え、より利便性が高く、幸福感にあふれる社会をつくるという夢を実現する手伝いをしたい」と自国の若者への期待を語るとともに、「 日本行政官および大学関係者の招へいプログラム」についても、「ぜひ早い時期に招へい者の人数を数倍に増やしたい」と強い意欲を示した。

 シンポジウムには、岸輝雄外務大臣科学技術顧問、安西祐一郎日本学術振興会理事長、里見進東北大学総長、藤嶋昭東京理科大学学長、松本洋一郎理化学研究所理事、岩 本愛吉日本医療研究開発機構科学技術顧問ら、日本科学技術・学術政策を主導する研究者たちが基調講演者やパネリストとして登壇、それぞれ日中科学技術協力の重要性を語った。

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写真4 岸外務大臣科学技術顧問

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写真5 安西日本学術振興会理事長

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写真6 里見東北大学総長

 中国からは万科学技術部長のほか、許倞科学技術部イノベーション局長と続超前科学技術部ハイテク局副局長が参加、それぞれ基調講演をした後、パネルディスカッションにも再登壇した。許 イノベーション局長が強調したことの一つは、協力の機会を広げるより開かれた計画を中国が持つこと。日本との研究協力で双方に大きな成果が期待できる分野として、量子通信、量子コンピューターを挙げた。続 ハイテク局副局長が強調したのは、かつて日本に留学した中国の著名な研究者が政府の要職に就いているなど、若者の交流が果たした役割。さらに日本の省エネ技術、気候変動に関する研究などに加え、日 本の科学技術政策についても中国が学ぶべきところが大きい、と期待を示した。

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写真7 許イノベーション局長

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写真8 続科技部ハイテク局副局長

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写真9 パネルディスカッションの様子。
左より続副局長、許局長、岩本科学技術顧問、松本理事、藤嶋学長、モデレータの角南篤政策研究大学院大学副学長。