【17-24】日韓が上位占めるも数では中国 イノベーション評価アジア大学ランキング
2017年 8月24日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)
発明に関わる特許に論文がどのように活用されているかを分析することでイノベーションへの貢献度を評価した世界大学・研究機関ランキングを、英科学誌「ネイチャー」が公表した。2 00位内に入ったアジアの大学・研究機関を見ると、100位内は31位の大阪大学をはじめ7大学・研究機関の日本と、23位の漢陽大学以下4大学の韓国の2カ国以外の国・地域はない。しかし、2 00位内に広げると中国が13大学・研究機関(香港の2大学を含む)と最も多く、日本は10大学・研究機関、韓国は8大学にとどまる。
漢陽大学、大阪大学に続く世界順位100位内に入ったアジアの大学は、理化学研究所(世界39位)、浦項工科大学(同46位)、京都大学(同53位)、九州大学(同63位)、東京工業大学(同76位)、K AIST(韓国科学技術院:同82位)、慶應義塾大学(85位)、光州科学技術院(同87位)、東京大学(同95位)となっている。香港の2大学を除く中国の大学は世界180位の復旦大学が最上位。以 下198位までに入った13大学のうちの11大学を中国の大学が占めた。
世界順位 | 大学名 | 国・地域 |
23 | 漢陽大學 | 韓国 |
31 | 大阪大学 | 日本 |
39 | 理化学研究所 | 日本 |
46 | 浦項工科大学 | 韓国 |
53 | 京都大学 | 日本 |
63 | 九州大学 | 日本 |
76 | 東京工業大学 | 日本 |
82 | KAIST(韓国科学技術院) | 韓国 |
85 | 慶應義塾大学 | 日本 |
87 | 光州科学技術院 | 韓国 |
95 | 東京大学 | 日本 |
104 | 延世大学 | 韓国 |
116 | 北海道大学 | 日本 |
118 | 香港科技大学 | 香港 |
122 | 名古屋大学 | 日本 |
139 | 東北大学 | 日本 |
141 | ソウル大学 | 韓国 |
146 | シンガポール国立大学 | シンガポール |
162 | 科学工業研究委員会(CSIR) | インド |
168 | 香港大学 | 香港 |
169 | 成均館大学 | 韓国 |
171 | 高麗大学 | 韓国 |
173 | 東呉大学 | 台湾 |
180 | 復旦大学 | 中国 |
181 | 南洋理工大学 | シンガポール |
182 | 北京大学 | 中国 |
183 | 清華大学 | 中国 |
185 | インド工科大学 | インド |
187 | 南開大学 | 中国 |
189 | 浙江大学 | 中国 |
190 | 中国科学院 | 中国 |
191 | 中山大学 | 中国 |
194 | 上海交通大学 | 中国 |
195 | 厦門大学 | 中国 |
196 | 中国科学技術大学 | 中国 |
198 | 南京大学 | 中国 |
大学ランキングでは、英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が、毎年発表しているランキングが日本でもよく知られている。3月に公表された「アジア大学ランキング2017」では、1 位のシンガポール国立大学以下、2位北京大学、3位清華大学、4位南洋理工大学(シンガポール)、5位香港大学、6位香港科技大学と、6位までをシンガポール、中国、香港が占めた。日本は7位に東京大学、韓 国は8位にKAIST(韓国科学技術院)がようやく顔を出す。年々、評価を上げている中国の大学に対し、日本の大学の大半が昨年より順位を落としているのが目を引いた。
このランキングは、論文が他の論文にどれだけ引用されているかなど研究と教育の質に重きを置いて評価しているのが特徴だ。「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は、別 の評価手法による大学ランキングも公表している。世界の一流高等教育機関の研究者に、教育と研究能力が高いと認める大学はどこかを聞いたデータを基にした「世界大学評判ランキング」だ。今 年6月に発表されたこのランキングでは、東京大学が11位とアジアで最も高い評価を得ていた。ただし、こちらも同誌が今年の特徴として挙げたように「中国の躍進」が目立つ。
世界100位内に入った数で見ると、中国は9大学(香港の3大学を含む)と最も多い。日本は6大学、韓国は3大学だ。順位も清華大学が世界14位、北京大学が17位とアジアの2、3位に浮上し、1 位の東京大学(同11位)に迫っている。
一方、国際通信社ロイターは、昨年8月、アジアで最もイノベーティブな大学として上位75大学のランキングを発表している。国際情報サービス企業「トムソン・ロイター」のIP & Science 事業(現クラリベイト・アナリティクス社)の学術文献引用データベースや特許引用データベースなどを基に、科学の進歩、新技術の発明、グローバル経済の推進に貢献した度合いを分析し、順位付けしたものだ。今回、公 表された英科学誌「ネイチャー」のランキングと評価の考え方に似たところがある。クラリベイト・アナリティクス社が保有するデータは、「ネイチャー」のランキング作成にも活用された。
こちらでアジア1位の評価を得たのは、KAIST(韓国科学技術院)。続いて東京大学、ソウル大学、大阪大学、浦項工科大学以下10位までを日韓両国がそれぞれ5大学と分け合った。ただし、7 5位までに入った大学の総数で見ると中国が22大学(香港の3大学を含む)で、日韓両国(それぞれ20大学)を上回る。
研究力ではすでに日韓両国のトップレベル大学に追いつき、追い抜くまでに躍進している中国の大学は、イノベーションへの貢献という面ではまだ発展途上。ただし、すぐ背後に迫っている...。こうした現状が、今 回、公表された「ネイチャー」のランキングでも裏付けられたといえそうだ。
クラリベイト・アナリティクス社主催のパネルディスカッションで発言する魏江教授(中央)
中国の現状は、トムソン・ロイターIP & Science 事業部(現クラリベイト・アナリティクス社)が昨年9月に主催した記者会見・パ ネルディスカッションに参加した浙江大学科学技術教育政策研究所長の魏江教授の発言からもうかがわれる。魏所長は、「中国の大学が上位75大学の30%を占めている」と、アジア・イ ノベーティブ大学ランキングの結果に満足の意を表した。同時に、上位20位内に中国の大学が少ない理由として、「大学から企業への技術移転の仕組みがまだまだ不十分」であることも認めている。
資金の豊富な中国企業がイノベーション創出に本気で取り組むようになれば、大学の果たす役割、貢献度もさらに高まる、ということのようだ。
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