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【17-25】中国の躍進続く 英教育誌の世界大学ランキング

2017年 9月11日  小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 英国の教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は5日、「世界の大学ランキング2018」を発表した。シンガポール国立大学が、昨年から順位を2位上げて22位に浮上したほか、北京大学が29位から27位、清華大学が35位から30位と、アジアの上位3大学がいずれも昨年より順位を上げた。このランキングを初めて公表した2010-2011以来、上位30位内にアジアの大学が3大学入ったのは初めて、とタイムズ・ハイヤー・エデュケーションはアジア勢の躍進を称えている。

 とりわけ目立つのは中国で、上位200位内に入った中国本土の大学は7大学。これは世界で6番目に多い。昨年は北京大学清華大学復旦大学中国科学技術大学の4大学だったのが、今年は昨年201~250位にランクされていた南京大学浙江大学上海交通大学の3大学が新たに200位内に浮上した。さらに香港からも40位の香港大学をはじめ5大学が200位内に入っている。昨年の76位から58位に大きく順位を上げた香港中文大学が目を引く。

 一方、中国以外の国は、対照的に影が薄い。韓国は昨年同様、74位のソウル大学をはじめ4大学が200位内に入ったものの、137位から111位になった成均館大学を除く3大学はいずれも順位を落とした。201~1,000位内に入った他の大学も昨年より順位を上げたのはたった1大学のみだった。台湾も唯一200位内に入った国立台湾大学が195位から198位に低下したほか、400位内に入っているもう一つの国立清華大学も251~300位から301~350位に順位を下げている。

 日本は、最上位の東京大学が昨年の39位から46位に低下した。京都大学か91位から74位に、大阪大学が251~300位から201~250位にそれぞれ順位を上げたものの、東北大学は201~250位、東京工業大学は251~300位、名古屋大学は301~350位、九州大学は351~400位と、いずれも昨年と同じ順位のままだった。

世界大学ランキング上位400位内アジア大学
(The Times Higher Education World University Rankings 2018から作成)
アジア順位 世界順位(前年順位) 大学 国・地域
1 22(24) シンガポール国立大学 シンガポール
2 27(29) 北京大学 中国
3 30(35) 清華大学 中国
4 40(43) 香港大学 香港
5 44(49) 香港科技大学 香港
6 46(39) 東京大学 日本
7 52(54) 南洋理工大学 シンガポール
8 58(76) 香港中文大学 香港
9 74(91) 京都大学 日本
9 74(72) ソウル大学 韓国
11 95(89) KAIST(韓国科学技術院) 韓国
12 111(137) 成均館大学 韓国
13 116(155) 復旦大学 中国
14 119(119) 香港城市大学 香港
15 132(153) 中国科学技術大学 中国
16 137(104) 浦項工科大学 韓国
17 169(201~250) 南京大学 中国
18 177(201~250) 浙江大学 中国
19 182(192) 香港理工大学 香港
20 188(201~250) 上海交通大学 中国
21 198(195) 国立台湾大学 台湾
22 201~250(201~250) 高麗大学 韓国
22 201~250(251~300) 大阪大学 日本
22 201~250(201~250) 東北大学 日本
22 201~250 蔚山科学技術大学 韓国
22 201~250(251~300) 延世大学 韓国
27 251~300(201~250) インド理科大学院 インド
27 251~300(251~300) 東京工業大学 日本
29 301~350(301~350) 名古屋大学 日本
30 301~350(251~300) 国立清華大学 台湾
31 351~400(301~350) 光州科学技術院 韓国
31 351~400(351~400) 漢陽大学 韓国
31 351~400(351~400) インド工科大学ボンベイ校 インド
31 351~400(351~400) 九州大学 日本
31 351~400(351~400) マカオ大学 マカオ
31 351~400 マレーシア大学 マレーシア
31 351~400(401~500) 中山大学 中国

 「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」誌の世界大学ランキングは、指導・学習環境、研究の質・量、論文被引用数、資金獲得能力、外国人職員・学生数などを総合的に評価して、大学をランク付けしている。一方、同誌は、世界の一流高等教育機関の研究者から、それぞれの専門分野で教育と研究能力のレベルが最も高いと評価する大学を最大15まで挙げてもらうという手法で評価する「世界の大学評判ランキング」も別途、毎年公表している。こちらでもアジア勢の評価はすでに高い。今年6月に公表された「世界の大学評判ランキング2017」では、東京大学が世界の11位と、清華大学(14位)、北京大学(17位)、京都大学(25位)、シンガポール国立大学(27位)などを抑えて、アジアで最上位の順位を得ている。

  国際通信社「ロイター」が昨年8月に公表した「アジアで最もイノベーティブな大学ランキング」では、KAIST(韓国科学技術院)が1位、東京大学が2位で、日韓両国の大学が上位を独占し、中国の大学の評価は日韓両国ほどではない。こちらは学術文献引用データベースや特許引用データベースなどを基に、科学の進歩、新技術の発明、グローバル経済の推進に貢献した度合いを分析し、順位付けしている。

 また、今年8月には英科学誌「ネイチャー」が、発明に関わる特許に論文がどのように活用されているかを分析することでイノベーションへの貢献度を評価した世界大学・研究機関ランキングを公表している。アジア勢では韓国の漢陽大学が23位と最上位で、2位は31位の大阪大学だった。上位11位まで日韓両国の大学・研究機関が占め、トップグループの比較では中国、香港の大学の評価はまだ日韓両国に及ばないという結果になっている。