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【17-29】植物-微生物共生機能テーマに日中共同研究スタート

2017年10月20日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 科学技術振興機構(JST)と中国国家自然科学基金委員会(NSFC)は10月13日、植物と微生物が共生して有用物質をつくり出す機能に着目した三つの共同研究を始める、と発表した。

 この日中共同研究は、文部科学省所管の国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム:SICORP)の下で進められる。今年度の新課題として、「 薬用植物共生微生物の休眠遺伝子を活用した新たな物質生産手法の開発」、「リンが欠乏した土壌で栽培した植物根に生息する有用菌を同定してアブラナ科植物の効率的リン酸利用技術を開発」、「 イネの根から分泌される脱窒抑制物質の産生制御や根圏土壌微生物叢制御機構を解明し、過剰窒素肥料抑制水田農業への貢献」をそれぞれ目的とする共同研究が採択された。

 最初の課題の日本側研究者は、阿部郁朗東京大学大学院薬学系研究科教授で、中国側は高昊(Gao Hao)暨南大学薬学院中薬・天然薬物化学研究所教授。2番目は、西 條雄介奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科准教授と周倹民(Zhou Jian-Min)中国科学院遺伝・発育生物学研究所教授が、3 番目は藤原徹東京大学大学院農学生命科学研究科教授と施衛明(Shi Weiming)中国科学院南京土壌研究所教授がそれぞれ担当する。各 チームに間接経費を含め3年間に最大1,800万円の研究費が支給される。

 SICORPは、日本が特に重要と考える協力対象国・分野について、相手国の研究支援機関と共同で研究提案を公募・採択した国際共同研究を支援するプログラム。諸 外国との連携による相乗効果で日本の科学技術の向上と相互の発展を目指すことを目標に、2009年度から始まった。分野の融合や新しい発想による研究のブレークスルーが期待されている。

 中国との間では、中国科学技術部と「エネルギー利用の効率化」、「都市における環境・エネルギー分野」を対象とする共同研究プロジェクトが実施済みないし進行中だ。

 今回、新たな研究課題を共同で選定した中国国家自然科学基金とは「生物遺伝資源」を対象とする共同研究プロジェクトが2015年からスタートしている。こちらは、東京大学と中国科学院昆明動物学研究所、京 都大学と浙江大学とのチームによる二つの共同研究からなる。

関連サイト
中国国家自然科学基金委員会(NSFC)プレスリリース
http://www.nsfc.gov.cn/publish/portal0/tab442/info71437.htm
JSTプレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/info/info1287/index.html#YOUGO2