【17-31】次の目標は米国を超えること 胡鞍鋼清華大学教授記者会見
2017年11月10日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)
習近平政権のブレーンといわれる胡鞍鋼清華大学教授が8日、日本記者クラブで記者会見し、「次の目標は米国を超えること」など2期目に入った習政権に不安材料が無いとの見方を示した。
胡鞍鋼清華大学教授(11月8日、日本記者クラブで)
胡氏がまず強調したのは、習総書記を中心とする集団指導体制の確立。2期目の習政権がスタートした10月25日の第19期中央委員会第1回全体会議(1中全会)で、中 国が新しい時代に入ったことが明白となったとの評価とともに、新しい目標が打ち出されたことを詳しく解説した。特に「人権宣言」の重要性を指摘し、「14億に上る中国人の全ての人権であり、一 部の人に関する人権ではないということで西側諸国の人権宣言を超えるものだ」との見方を示した。新時代の特徴として、習思想を基に、人類がともに発展していく運命共同体を目指す、ことを挙げた。
特に詳しく解説したのは、習政権が打ち出した2段階の目標。これは江沢民、胡錦濤両政権時代に掲げられた「2020年目標」の次に位置するものとなる。第一段階である2035年までに「 基本的社会主義現代化」の基礎を実現し、2050年までに、強く、豊かで美しい「社会主義現代化強国」となる、としている。
具体的には、2035年までに世界に占める経済、研究開発費の規模をそれぞれ約30%、約25%に高めるほか、平均寿命を79.5歳に引き上げ、二酸化炭素排出量を大幅削減し、省エネ・環 境保全産業を新興産業にする、といった目標が掲げられている。こうしたソフトパワーの強化とともに軍事面での現代化も実現し、世界一流の軍隊を持つ、としている。
胡氏は、こうした目標達成について、「ほとんどが前倒しで実現する」との見通しを示した。根拠の一つとして挙げたのは、国民1人当たりの国内総生産(GDP)を2020年に2000年の2倍にするという「 2020年目標」が、3年前倒しで達成された実績。1960年に池田勇人内閣によって国民所得倍増計画が閣議決定され、実行された日本の実績を挙げて、「所得倍増計画に関して日本はわれわれの先生。ただし、日 本は1回限りだったのに対し、われわれは倍増目標を連続して達成しており、先生を超えたと考えている」と、2035年目標の達成にも自信を示した。さらに、「海外から経験を学び、吸収することを続けてきたが、わ れわれなりに消化し、革新しなければ意味が無いと心がけ、実行してきた」と、高度経済成長期、安定成長期の後、長年、経済が低迷状態にある日本にとっては耳の痛い発言も続いた。胡氏の話の締めが「 次の目標は米国を超えること」というさらに積極的な発言だった。
記者との質疑応答でも、習政権の盤石ぶりを強調する発言が続いた。「集団指導制が形骸化しているのではないか」との司会者の質問に対しては、民 主集中性と会議制度という二つの基本システムがあることを理由に、否定した。年に一度開催される全国人民代表大会、毎月開催の中央政治局会議をはじめとする多くの会議があり、実 際に習政権下で具体的な政策が数多く決定されたという実績を挙げ、「習総書記が1人で決めることは許されないシステムになっている」ことを強調した。
さらに米国との関係についての質問に対しても、余裕の答えが目立った。「研究論文の数は世界で米国と中国がツートップになっている。さらに米国の研究者による共同論文の相手は中国の研究者が最も多い。両 国は切っても切れない仲になっている」、「今、米国と中国の間には700の協力文書がある。いずれ800,1,000に増えるだろう」など、米国と中国が衝突する可能性はないとする発言が続いた。
関連サイト:日本記者クラブ「会見リポート」
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/34950/report