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【18-05】博士課程終え日本に残る外国人半数 科学技術・学術政策研究所の調査で判明

2018年3月5日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 日本で博士課程を修了した外国人の半数が日本に留まる一方、海外に活動の場を移す日本人は5%程度という実態が、文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査で明らかになった。

 2月28日に公表された「『博士人材追跡調査』第2次報告書」は、2012年度の博士課程修了者を対象にした追跡調査に加え、2015年度の博士課程修了者の半年後の状況についても調べている。2015年度の修了者のうち、外国人は21.7%を占め、国・地域別で見ると最も多いのは中国で44.1%。次いで韓国7.7%、台湾3.2%となっている。その他のアジア諸国が29.0%、欧米(中南米を含む)が9.8%、その他が6.2%だ。

 一方、2012年度の調査では、外国人学生の国・地域別比率は、中国49.5%、韓国9.7%、台湾5.4%。これら国・地域の学生比率がやや減少し、その分、その他のアジア諸国、欧米(中南米を含む)、その他の国・地域が増えている。つまり、近年は、東アジアの近隣諸国だけでなく、さまざまな国・地域からの学生が日本の博士課程で学ぶようになっている現状がうかがえる。

博士課程修了外国人の国籍・地域

図1

(科学技術・学術政策研究所「『博士人材追跡調査』第2次報告書」から)

 では、博士課程を修了した後の外国人学生の所在地はどうか。2015年度の修了者の50.3%が半年後も日本に居住していることが分かった。2012年度修了者に対する1年半後の居住地調査では46.4%で、今回の調査で明らかになった3年半後では46.6%となっており、約半数が博士課程修了後も日本に留まる状況はほとんど変化が見られない。

 これに対し、日本人博士課程修了者の状況はだいぶ異なる。2015年度修了者のうち半年後、海外に在住しているのは、4.4%。2012年度修了者の1年半後、3年半後の海外在住者はいずれも5.3%だったから、どの調査においても博士課程を修了した日本人の海外在住者比率は 5.0%程度と少ないことが分かる。

2015年度博士課程修了者の現在の所在

図2

(科学技術・学術政策研究所「『博士人材追跡調査』第2次報告書」から)

 文部科学省は、世界に通用する学位プログラムを構築・展開することを目的とした事業「博士課程教育リーディングプログラム」を2011年度から実施している。優秀な学生を、俯瞰力と独創力を備えてグローバルに活躍するリーダーへと導くことが狙いだ。国内33大学で62のプログラムが動いている。海外の学生も対象にしているため、プログラムの支援を受けた博士課程修了者に占める外国人留学生の比率は34.1%と、プログラムの支援がない博士課程修了者に比べ、約2倍多い。

 2015年度博士課程修了者に対し、博士課程で経験した教育・研究指導について満足度を聞いた結果では、「とても良い」あるいは「まあ良い」と答えた外国人学生は83.6%に上った。課程学生の67.1%、社会人学生の73.1%のいずれも上回る。外国人学生の場合は、学費の全額免除の比率が高く、学位取得率も高いことが科学技術・学術政策研究所の別の調査で知られていることから、これらの影響によるとみられる。

 調査は、2015年度博士課程修了者が返済義務のある奨学金や借入金をどれくらい抱えているかについても調べている。修士課程、学部時の借入金を含め、課程学生の場合、42.0%が300万円以上の借入金があることが分かった。これに対し、外国人学生で300万円の借入金があるのは4.9%に留まり、86.3%が借入金はないと答えている。社会人学生は300万円以上の借入金があるのは9.0%で、84.2%が借入金はないという結果だった。

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