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【18-06】野生生物の違法取引撲滅で連合体結成 中国や米国の電子商取引企業など

2018年3月9日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 野生生物と野生生物由来の製品の違法な取引を協力して撲滅することを目指し、アリババ(阿里巴巴)、バイドゥ(百度)、フェイスブック、グーグルなど世界の有力電子商取引企業、ソ ーシャルメディア企業を含む21社が、国際連合体を3月7日立ち上げた。インターネットを介した野生生物や野生生物製品の不正取引を2020年までに80%削減する目標を掲げている。

 「野生生物の不正なオンライン取引終了に向けた国際的な連合体(Global Coalition to End Wildlife Trafficking Online)」は、国 際自然保護団体の世界自然保護基金(WWF)と、WWFの野生生物取引監視機関「TRAFFIC」、野生生物、家畜、ペットの福祉・保護活動を進める国際動物福祉基金(IFAW)の 呼びかけに21社が賛同して発足した。WWF、TRAFFIC、IFAWは、野生生物の違法取引防止のためのノウハウや機器類などを21企業に提供するなどの支援を行う。企 業同士も情報や技術を共有して活動を促進することが期待されている。

 連合体には、中国と米国の企業を中心に欧州、アジア、アフリカの企業が名を連ねている。特に中国の企業が、アリババ、バイドゥ、テンセント(騰訊)、Zhuanzhuan(転転)な ど12社を占めているのが目を引く。インターネットを介して野生生物や野生生物製品を違法に取引する「野生生物サイバー犯罪」は、国際的な問題となっている。WWFジャパンは昨年12月、象 牙の日本国内の市場が中国への組織的密輸ルートの温床となっており、外国人による海外への違法持ち出しも横行しているとの調査結果を公表した。

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象牙の違法取引が後を絶たないアフリカゾウ (C)Brent Stirton / Getty Images

 WWFジャパンは、2013年のある2週間だけで、欧州9カ国のインターネットオークションにかけられた象牙の取引総額が、違法取引を含め145万ユーロ(約2億円)に上った、という国際刑事警察機構( INTERPOL)の調査結果も紹介している。世界全体では、違法な野生生物・野生生物製品取引の規模は年間2兆円といわれている。

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カメルーン政府に押収された象牙 (C)WWF / Mike Goldwater

 WWFジャパンによると、中国ではすでに2012年にアリババ、テンセント、タオバオ(淘宝網)など電子商取引企業15社が、「違法な野生生物取引に自社のサービスが利用されることに対して、い かなる違反も許さない方針を掲げる」とする宣言に署名している。さらに2014年にも アリババ、テンセントなど9社があらためて野生生物の違法取引撲滅を誓うなど取り組みが進む。

 WWFは、今回の取り組みによって、犯罪者に対する抑止力の強化に加え、一般の利用者の問題意識を高め犯罪の抑止につながる効果を期待している。

 「野生生物の不正なオンライン取引終了に向けた国際的な連合体」に名を連ねた企業は以下の通り(アルファベット順)。

Alibaba(阿里巴巴)、Baidu(百度)、Baixing(百姓)、eBay、Etsy、Facebook、Google、Huaxia Collection(華夏収蔵)、Instagram、K uaishou(快手)、Mall for Africa、Microsoft、Pinterest、Qyer(窮游)、Ruby Lane、Shengshi Collection(盛世収蔵)、T encent(騰訊)、Wen Wan Tian Xia(文玩天下)、Zhongyikupai(中芸庫拍)、Zhuanzhuan(転転)、58 Group(58集団)。