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【18-22】ヒガシシナアジサシ宮古島で確認 中国の小島に生息の近絶滅種

2018年10月26日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 中国東部沿岸の小島でしか繁殖が確認されず絶滅寸前とみなされているヒガシシナアジサシが、沖縄県宮古島で確認された。沖縄科学技術大学院大学の動物学者、ヴラジミル・ディネッツ博士が10月20日、宮 古島の伊良部大橋を自動車で走行中に海上を飛ぶ姿を見つけて撮影、写真を送付した山階鳥類研究所の尾崎清明副所長によってヒガシシナアジサシと確認された。日本への飛来が確認されたのは初めてという。

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宮古島近くの海上を飛ぶヒガシシナアジサシ(2018年10月20日ヴラジミル・ディネッツ博士撮影、山階鳥類研究所提供)

 ヒガシシナアジサシは、体長38~43センチメートルのカモメ科の海鳥で、国際環境NGOのバードライフ・インターナショナルによると、生息数は100羽に満たないと推定されている。国 際自然保護連合(IUCN)の「絶滅の恐れのある野生生物のリスト」(レッドリスト)では、野生種の中で最も絶滅の恐れが高いランクとされる「近絶滅種(CR:Critically Endangered)」に 入れられている。

 山階鳥類研究所とバードライフ・インターナショナルによると、ヒガシシナアジサシは1937年に山東省沿岸の島嶼(しょ)で合計21羽が採集された後、長い間、観察されることがなかった。2 000年に福建省沿岸の馬祖(マズ)列島で繁殖しているのが確認され、さらに2004年に浙江省沿岸の韮山(ジョウシャン)列島でも繁殖地が見つかった。現在、浙江省沿岸の五峙山(ウーシィシャン)列 島と韮山列島に合わせて約50羽、福建省沿岸の馬祖列島に5~10羽が繁殖期に生息しているのが分かっている。朝鮮半島南西沖のチルサンドでも繁殖期に少数が観察されている。台 湾海峡の澎湖列島も繁殖地として知られているが現状は不明。繁殖期以外の生息状況は不明だが、東南アジアで越冬することが知られている。

 生息数減少を招いた大きな原因と考えられるのは、繁殖地で食用のために人間が卵をとってしまうため。韮山列島の鉄墩(ティエドゥン)島の繁殖地で、デ コイ(実物大の模型)と音声によってヒガシシナアジサイを引き寄せる保全活動が2013年から行われている。保全活動はバードライフ・インターナショナルと地元浙江省の象山海洋漁業局、自然博物館、さ らに香港観鳥会、米国オレゴン州立大学の共同事業として進められている。

 バードライフ・インターナショナル東京「2017年度年次報告書」によると、中国韮山列島の繁殖コロニー復元は成功したとされている。さらにバードライフ・イ ンターナショナルは2016年度からインドネシアのパートナー団体 Burung Indonesia と協力し、越冬地や渡りの中継地での保護を促進するための越冬状況調査、2017年からは、ナショナル・ジ オグラフィック協会の支援により、越冬地調査と人工衛星発信機を利用した追跡プロジェクトを始めたことを紹介している。

参考サイト:

山階鳥類研究所プレスリリース
「世界的な絶滅危惧種の日本への飛来を初確認 宮古島にヒガシシナアジサシ」
http://www.yamashina.or.jp/hp/p_release/images/20181025_prelease.pdf

バードライフ・インターナショナル東京「2017年度年次報告書」
https://tokyo.birdlife.org/sites/wp-content/themes/birdlife/pdf/partnership/ar2017.pdf?1809

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