【17-008】ビッグデータ時代に偽物の商品をつかまされる確率は?
2017年10月20日
楊保志(風生水起);広東省科技庁科技交流合作処副調研員
河南省潢川県出身。入学試験に合格し軍事学校に入学。26年間、軍務に就き大江南北を転戦し、その足跡は祖国の大好河山に広くおよび、新彊、甘粛、広東、広西、海南などの地域で銃を操作し弾を投擲した。メ ディア、組織、宣伝、人事などに関する業務に長年従事し、2013年末、広東省の業務に転じた。発表した作品は『人民日報』『光明日報』『中国青年報』『検査日報』『紀検監察報』『法制日報』『解放軍報』『 中国民航報』などの中央メディアの文芸・学術欄に、また各地方紙、各軍関連紙軍兵種報紙にも掲載され、『新華文摘』『西部文学』『朔方』などの雑誌や、ラジオ、文学雑誌にも採用され、“中国新聞賞”文芸・学 術欄銀賞、銅賞をそれぞれ受賞し、作品数は500篇に迫る。かつては発表を目的に筆を執っていたが、現在は純粋に「自分の楽しみ」のためとしている。
ネット通販プラットフォームが普及する以前、特に、改革開放(1978年)が実施されて間もないころ、中国では偽物があふれかえっていた。
時期的に見ると、重要な祝祭日の前後は偽物が増えるものの、人々はそのことに甘んじるしかなかった。祝祭日となると、必要な道具が多く、本物か偽物かにかかわらず、「ないよりあるほうがいい」と、取りあえず買っておこうと考えていたものだ。特に、中国人は祝祭日に贈り物のやりとりをすることが多く、月餅や花などの特定の商品の需要が高まるため、質の悪いものでその需要を満たそうとする動きが高まる。祝祭日になると、生活必需品の需要も普段に比べると高まり、大量に物を買うと、いろんな物が混じり、偽物に当たる確率も高くなってしまう。
商品別に見ると、発売したばかりの新商品は、偽物が多く、泣き寝入りするしかなかった。発売されたばかりの物のことはあまりよく分かっておらず、社会でもまた理性的な評価が行われていないため、流行を追いかけている人にとってこれは頭の痛い問題だ。新商品をどうしても欲しいというなら、実験台になるしかないのだ。特に、新商品の発売は参考にできるものがなく、その良し悪しは使ってみなければ分からない。そして、偽物を買わされたことが分かった時には、返品をすることができなかったり、店やメーカーともう連絡が付かないということさえある。
地域別に見ると、農村、中小都市などの地域のほうが偽物を買わされ、煮え湯を飲まされてしまうことが多かった。農村、中小都市は違法業者が暗躍している場所で、そのような業者は、農民は学歴も低く、世間知らずで、弱者であると見下し、わざとそのような人をターゲットにする。近年、粗悪な肥料や穀物の種、タバコ、お酒などが、貧しい地域で出回り、それが原因で病気になったり、死者が出るケースさえあった。お金のためなら、人の命も顧みず、手段を問わず何でもするという有様だ。
(筆者撮影:生産メーカー、生産工場の住所、生産・衛生許可証の3つがない『三無商品』が街中にあふれている)
商品を供給地別に見ると、特定の地域は偽物率が非常に高く、それをつかまされることが多かった。全体的に見ると、海外から輸入した商品の品質は中国より高いケースが多い。東南アジアの沿海地域から輸入した商品は、偽物が多いものの、そこそこの品質だ。後進地域から入って来た商品は、ほとんどが偽物で、見てすぐにそれが分かるほどだ。商品の価値を見ると、小さな商品、安い商品ほど偽物率が高くなる。近年、中国大陸部の一部の省は、偽物を製造し販売していることで有名で、話題にはなるものの、失笑を買うような、頭の痛い問題にもなっている。そのような地域は付加価値の高いコピー品を作ることはしない。例えば、広東省などはそのようなチャンスがすぐになくなってしまった。
このように、20世紀は偽物があふれかえっていた。偽物は特定の個人をターゲットにして作られるわけではないものの、違法業者は特定のグループをターゲットに、特定の時期に、特定の地域で偽物やコピー商品を売っていた。管理・監督のメカニズムがまだ整備されず、罰せられることもあまりなく、偽物を撲滅しよういう雰囲気もなく、消費の高度化も進んでいない時代は、偽物をつかまされる確率が非常に高かった。
では21世紀、特にビッグデータ時代に入った今、どんな状況下で偽物をつかまされることが多いのだろう?ネット上では、以下の5つの条件を満たしているとそうなりやすいという結論が出ている。
1.購買能力によって偽物をつかまされやすいかが决まる。ネット上で商品を買う時、注文が終わると、システムが自動で買い手のそのプラットフォーム上での購買データを分析する。もし、同類の商品を買う時、いつも低価格ブランドの商品ばかりを買っていると、システムは、その顧客は高価格の高級ブランドの本物の商品は買わないと判断し、バックグランドで「低リスクの顧客」に振り分けられ、コピー商品が送られてくる確率が高くなる。
2.決済の仕方によって偽物をつかまされやすいかが决まる。決済してから品物が送られてくるパターンの人の問題ある商品をつかまされる確率は、品物を受け取ってから決済するパターンの人より明らかに高い。後者の場合、品質の問題が1—2日で処理してもらえるのに対して、前者の場合、5—6日かかる。ネット通販業者は消費者の「面倒くさい」という心理を巧みにつき、問題のある商品を前者に送り、返品か交換かと、処理する時間をのばし、カスタマーサービスの女性に優しい言葉でいろいろ言われているうちに、客はもうどうでもいいという気分になってくる。
3.クレームが多いか少ないかでも偽物をつかまされやすいかが决まる。うち、返品が少ない人は偽物をつかまされやすい。消費記録や購入記録、客単価記録などは、商品を送る時の参考データとしてシステムが識別する。買った商品にちょっと問題があるけど、使えるし、返品するのは面倒くさいからと、そのままにしておいたことがあるという人は多いのではないのだろうか?本当に返品するとなると、ネット通販業者は「発送する前にちゃんとチェックしていなかった」と説明してくることが多い。しかし、業者は全ての商品をチェックして記録しているため、それは全くの嘘だ。問題がある商品が送られてきたのは、返品率が全体的に低いからだ。システムはその人を「クレームが少ない」、「我慢してもらえる」と判断し、問題のある商品があると、真っ先にその人に発送する。もし、その商品を受け取ってから、問題のあるなしさえチェックしないなら、その人は問題のある商品の「お得意様」となってしまう。
4.購買情報が流出すると偽物をつかまされやすくなる。ある人が何かを買ったのをきっかけに、あやしい電話がよくかかってくるようになったということはないだろうか。それは、購入に関する詳しい情報がだだもれになっているからだ。その原因は何なのだろう?問題はビッグデータにある。注文が成立すると、その客の個人データがすぐに自動でシステムに盛り込まれ、ネット通販団体のプラットフォームで共有されるため、全てのネット通販業者がそれを見ることができる。その過程で、開発会社やデータ管理スタッフなどもそれを見ることができ、客のデータを売ったり、悪用したりする可能性が、それらすべての人にある。
5.受取人の住所によっても偽物をつかまされやすくなることがある。二線都市、三線都市、四線都市には必ず偽物が送られてくるというわけではない。新しいネット通販システムは、受取人の電話番号や住所から、その都市に、その商品の専門店があるかどうかを識別することができる。もし専門店がなく、その客に同類の商品を買った記録もなければ、システムは「安心して」コピー商品を発送するよう手配する。一方、専門店がある場合、システムはその客が同じブランドの商品を買ったことがあるかを調べる。業界内部の関係者によると、この方法でコピー商品を売ると、返品率が5%以下だという。
以上の5つの条件のうち、もし1つでも満たしているなら、偽物をつかまされる確率が20%あることになる。もし、5つの条件全てを満たしているなら、偽物をつかまされる確率が非常に高くなってしまう。しかし、この5つの条件を満たしてしまうのは実際にはとても簡単ではないだろうか。特に、あまりニュースを見ることもなく、とにかく安いものが好きという人は、簡単に偽物をつかまされてしまうだろう。
(筆者撮影:手作りのものや小さな工場で作られたものは、質を保証するのが難しい)
偽物が作られ市場に出回る問題を解決するには―
まず、業界に良心が必要だ。偽物を作り、それを売ることが「自分の仕事」と考えたり、誰かをだましてそれを自慢したりすることがあっては決してならない。正当なことをし、正しい道を歩み、能力や技術を活用してお金を稼ぐことこそが王道であるはずだ。
次に、ネット通販プラットフォームにも正しい自覚が必要だ。客の個人情報保護を重視し、それを慎重に、権限に基づいて共有しなければならない。特に、違法業者が悪用する可能性があるため、顧客の消費習慣を定性分析することがあってはならない。もし、両者がグルになって悪事を働くなら、どちらも処罰しなければならない。
そして、相応の制度・対策を講じなければならない。予防と問題修正を継続しなければならない。予防の分野では、プラットフォームの物理的システムを整備し、自動ブロック機能を搭載して、違法業者が入り込むことがないようにしなければならない。問題修正という分野では、問題があった場合、すぐにそれを処理し、決して後回しにしてはいけない。
最後に、監督・管理、罰則は効果的なものでなければならない。政府当局は法律に基づいて定期的に監督・管理を実施し、ネット通販プラットフォームも規律に基づいて内部の監督・管理を強化しなければならない。また、社会も勇気を持って監督・管理に参加し、特に、時宜相応の世論の監督をしなければならない。そして、多方面からの管理をしっかりと行い、さまざまな対策を実行して、違法業者にとって偽物の商品を作ることが割に合わないことにし、破産に追い込んだり、実刑にするなど、効果ある罰を科さなければ、偽物根絶の有効策とは言えない。