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【09-007】世界一流大学~中国人の世紀の夢~

2009年6月19日

2. 「211プロジェクト」、「985プロジェクト」および世界一流大学の整備

 1983年5月15日、全国高等教育業務会議が武漢で開かれた。会議において、南京大学浙江大学天津大学と大連工学院の4校の名誉校(院)長である匡亜明、劉丹、李曙森、屈伯川のベテラン教育家4名が連名で中央に対し、『50校前後の高等教育機関を国家重要建設プロジェクトに含むための提案』を提出し、全国700余校の高等教育機関の中から基礎がしっかりしていて、実力が高く、教育と科学研究水準の高い50校を選び、「高等教育構築の戦略的重点として国家重点建設プロジェクトに含め、集中的に投資」して重点的に整備を行うことを提案した。その名称は「重要中の重要」プロジェクトとした。同『提案』は鄧小平の重点大学を「教育の中心であり、科学研究の中心でもある」とした考え方に完全に適合し、鄧小平ら中央指導者と国務院の関係部門の大きな支持を得た。鄧小平の配慮の下、匡亜明らの提案は中央指導者の支持を得、その実施を開始した。1985年5月、元国家計画委員会が正式に通達し、北京大学清華大学復旦大学西安交通大学および上海交通大学の5校が国家「第7次5ヵ年計画」の重点建設プロジェクトに加えられた。通常経費のほか、中科院、農牧漁業部および衛生部が管轄する中国科技大学、北京農業大学および中国医科大学の3校もそれぞれ異なる金額で国家重点投資を獲得した。1990年、「重点大学の強化に努力」および「重点学科の国際先進水準到達の努力」という構想が、中国高等教育の発展戦略として政府業務報告に書き込まれ、『国民経済・社会発展10年計画および第8次5ヵ年計画綱要』が策定された。その年、国家計画委員会は「第8次5ヵ年計画」期間に北京大学清華大学等5校の重点的整備を引き続き支援するほか、中国人民大学北京師範大学南京大学浙江大学南開大学天津大学の6校を国家重点建設プロジェクトに加えた。これにより、「第8次5ヵ年計画」期間に国家「重要中の重要」建設プロジェクトに含まれる大学は合計11校となった。[*6]

 21世紀を間もなく迎える時期に、グローバル化と知識経済の波は中国を経済と科学技術を基礎とした総合国力競争の新時代に向かわせた。総合国力の競争は高等教育の戦略的成長を強く要求し、中華民族の復興という切迫した課題実現も中国の高等教育全般の水準の向上を必要とし、世界一流大学の構築は中国の高等教育の成長、総合国力の向上、および経済社会の調和的発展に対して極めて重要な現実的意義を与えることになった。こうした情勢の下、世界一流大学を目標とする重点大学の整備目標が次第に水面に浮かび上がった。1991年7月27日、国家教委は国務院に対して『重点大学および重点学科の重点的整備に関する報告』を提出した。同報告では国家教委が重点大学と重点学科を設置するプロジェクトを提案し、そのプロジェクトの略称は「211」計画としている。1991年12月31日、十分な協議を経て、国家教委、国家計委および財政部が共同で、李鉄映、鄒家華、王丙乾に『重点大学および国家重点学科の整備実施プランに関する報告』を提出した。報告では、2委1部が検討した結果、「国が国家経済、社会発展に適する『重点大学および重点学科整備プロジェクト』を設けることについて全員一致で同意した」と示した。1992年12月、国家教委は『普通高等教育の改革加速および積極的発展に関する意見』を策定し、「高等教育の発展では必ず質の向上を重視しなければならない。条件を備えた省、自治区、直轄市は国務院の関係部門とともに1、2校の地元、産業を代表する先進水準の高等教育機関および重点学科を重点的に構築する。これを基礎として、国家教委は国務院の関係総合部門とともに国家水準を代表する高等教育機関および学科を計画的に選び、国務院が承認済みの「211プロジェクト」に含め、期間を分けて順次実施する」ことを提案している。

(1) 「211プロジェクト」の実施・整備

 1993年2月13日、中共中央と国務院が共同で『中国教育改革と発展に関する綱要』を発布した。同『綱要』では、「世界の新技術革命の挑戦に立ち向かうため、中央と地方等の各分野の力を集中し、100校前後の重点大学および重点学科に関する業務を実施し、21世紀初頭には一群の高等教育機関および学科を有し、教育の質、科学研究および管理において、世界の高水準に達するよう努力しなければならない」と指摘している。『綱要』の精神に基づき、1993年7月、国家教委は『高等教育機関および重点学科の重点的整備に関する若干の意見』を策定し配布した。同『意見』では、「211プロジェクト」を重点建設プロジェクトとして設け、21世紀に向けて100校前後の高等教育機関および重点学科を重点的に整備することを決定している。1994年7月3日、国務院は『〈中国教育改革と発展に関する綱要〉に関する実施意見』を発布し、(1)「211プロジェクトを実施」し、21世紀に向かい、100校前後の高等教育機関および重点学科を、時期を分けて重点的に整備し、2000年までに教育の質、科学研究、管理水準および学校運営効果等を向上させ、教育改革を進展させる。(2)一部の高等教育機関が21世紀初頭に世界一流大学の学術水準に近づくか達するように努力する、と述べている。

1.「211プロジェクト」実施の主要目標

 1995年、国務院の承認を経て、国家計委、国家教委、財政部は共同で、『〈「211プロジェクト」実施全体計画〉に関する通知』(以下、『計画』とする)を発布した。同『計画』は「211プロジェクト」の実施を指揮する文書であり「211プロジェクト」の目標を規定している。これは全般の目標を示すとともに、「211プロジェクト」第1期の目標も示した。それは「21世紀に向かい、一群の高等教育機関および重点学科を重点的に整備する」ことであった。数年を経て、100校前後の重点高等教育機関および重点学科が教育の質、科学研究、管理水準、学校運営効果等を大きく向上させ、高等教育改革、特に管理体制改革では明らかな進展があり、国内において高水準人材の育成、経済建設と社会発展の課題解決のための拠点となった。そのうち一部の重点高等教育機関および一部の重点学科は、世界の同種の教育機関および学科の先進水準に近づくか達しており、大部分の教育機関の運営は明らかに改善し、人材育成、科学研究において大きな成果を獲得し、地域と産業の発展に貢献し、全体として国内の先進水準に達していて、国の発展の中核となり発展のモデルの役割を果たしている。

 「211プロジェクト」第1期実施では順調に成果を獲得した。「211プロジェクト」第1期の経験の総括に基づいて、国家発展・改革委員会および教育部、財政部は2002年9月、『第10次5ヵ年計画期間での「211プロジェクト」実施に関する若干の意見』を共同で通達し、その中で「211プロジェクト」第2期の実施目標を、「211プロジェクト」教育機関の重点的整備を継続し、そのうちの大部分の教育機関において全体の教育、科学研究水準を国内トップクラスに到達させ、国および地方の経済、科学技術、社会の重要課題解決のための拠点にする、とした。

2.「211プロジェクト」実施の主要任務

 1995年、国家計委、国家教委、財政部は共同で『「211プロジェクト」実施全体計画』を発布し、「211プロジェクト」実施の任務を規定した。それらは主に教育機関全般の条件の整備および重点学科の整備、高等教育公共サービス体制の整備である。そのうち、教育機関全般の条件整備はその基礎であり、重点学科の整備はその中核で、教育・科学研究水準の重要な指標となり、教育機関全般の水準向上のための有効な過程となる。また高等教育公共サービス体制の整備では、重点的に整備する教育機関を通じて、資源の共用や、全国へのサービス提供によって、中国の高等教育の基盤構築を全体的に強化し、高等教育機関の教育水準と効果を高める。

 『計画』では「211プロジェクト」第1期実施計画の任務を下記のようにしている。(1)一部の高等教育機関を重点的に整備することにより、教育、科学研究および人材育成の全体水準を世界先進水準に近づくか達するようにし、国際的に高い名声と地位を確立する。(2)中国の社会主義建設と密切に関係し、重点学科が集中し、多くの公共サービス体制整備任務を遂行できる高等教育機関の教育と科学研究のインフラの向上、改善を重視することで、人材育成の質を顕著に高め、一部の重点学科が国際水準に近づくか達するようにするとともに、高等教育機関の中で中核となり、成長モデルの役割を発揮させる。基礎産業、支柱産業と密切に関係する教育機関と重点学科の整備を重点的に支援し、国が早急に必要とする高水準の専門人材と応用技術人材の育成に力を注ぐことで、「211プロジェクト」実施を経済建設の主戦場に向かわせる。(3)経済社会発展、科学技術進歩および国防建設と密切に関係する重点学科を強化し、社会主義市場経済に貢献する関係分野の高水準の人材の能力を引き上げる。(4)高等教育公共サービス体制の基本的枠組み整備を完了し、それには主に中国の教育と科学研究コンピュータ網、高等教育文献保障システム等を整備して、高等教育の持続可能な発展、重点学科の整備のために有効な条件を提供する。『「211プロジェクト」実施全体計画』は国民経済・社会発展中長期計画および第9次5ヵ年計画に組み入れられ、1995年から正式に実施となった。

 「211プロジェクト」は5年の実施を経て、各参加教育機関はいずれも大きな成果を得た。2002年9月、国家発展・改革委員会、教育部および財政部は共同で『「第10次5ヵ年計画」期間における「211プロジェクト」実施強化に関する若干の意見』を通達し、「211プロジェクト」第2期実施における3つの主要任務を示した。

 (1)重点学科整備の強化。重点学科整備には4つの主要措置がある。① 「第10次5ヵ年計画」期間において800前後の「211プロジェクト」重点学科の整備と発展に力を注ぐ。そのうち、「第9次5ヵ年計画」期間に構築済みで、さらに強化が必要な「211プロジェクト」重点学科の整備を引き続き支援するほか、新たな学科を選んで重点的に整備する。 ② 構造調整に力を注ぎ、新興学科と融合学科の発展を支援し、情報、生命、環境保護、新材料、新エネルギー等のハイテク学科、および社会主義市場経済体制構築にとって早急に必要な人文、社会科学の発展に尽力し、その一部の学科が世界先進水準に近づくか達するようにし、中国高等教育の配置と構造を合理的な重点学科体系につくり上げる。 ③ 重点学科の教育と科学研究条件を充実、改善させ、学科の段階的編成を強化し、高水準のイノベーション型人材の育成、高水準の科学研究成果産出の拠点において近代的設備水準を高める。

 (2)高等教育公共サービス体制を整備し、高等教育情報化を加速させる。具体的措置は、① 中国の教育と科学研究コンピュータ網高速地区の主幹網のレベルアッププロジェクトを実施し、「211プロジェクト」教育機関および全国高等教育機関で日々高まっている高速接続の必要性に便利で迅速なルートを提供する。同時に36の主要ノードの接続能力、ネットワーク管理能力、安全防備能力および重点学科公共情報システムのサービス能力を強化し、全国で条件を備えたすべての高等教育機関用の光ファイバーをできるだけその所在都市の主要ノードに直接接続させる。 ② 高等教育文献保障システム第2期プロジェクトを実施し、中国高等教育文献保障システムの各サービス機能を引き続き整備、発展させ、データバンクの構築とサービスの導入を強化し、中国語全文デジタル資源、データバンク、デジタル図書館拠点、オンライン目録センターおよび公共サービスプラットホームを構築し、省レベル文献情報サービスセンターを設立し、全国高等教育機関図書館の自動化とネットワーク化を促進し、高等教育機関図書館の全般の情報化水準をさらに向上させる。また「高等教育機関中国語・英語図書デジタル化国際協力計画」の実施を支援し、高等教育機関の教育・科学研究に力強いデジタル資源サポートを提供し、図書デジタル化資源の共用を推進する 。③ 計器設備と良質資源の共用システムの構築により、高等教育公共サービス体制の運営環境を大幅に改善させる。重点学科の良質な教育、設備、情報等の資源を共用に役立てるため、重点学科構築と計器設備購入を結びつけ、レベル別の計器設備共用ネットワークを立ち上げ、さらに重点学科の情報および環境、優れた教師とカリキュラム等の共用資源システムを構築し、高等教育機関の良質資源共用の仕組みを構築して全国の高等教育機関に波及させ、中国の高等教育水準全般の発展をもたらす情報サービスプラットホームを構築する。

 (3)「211プロジェクト」校の全般的整備。重点学科と公共サービス体制整備の支持をめぐり、「211プロジェクト」校の全面的環境整備を強化し、教育改革を推進、深化させ、教師陣、教育の質、科学的研究、管理レベルと学校運営効果の大幅なレベルアップを図り、全体的な高等教育の発展において「211プロジェクト」校が模範となり更なる役割を発揮すること。

 「211プロジェクト」とは新中国が成立以来、直接的に最大の投資を行ってきた高等教育項目である。この為、国務院は専門に「211プロジェクト」の部門間調整グループを設立し、プロジェクト実施における重大な方針、政策の問題について調整し決定している。「211プロジェクト」第1期の整備は99校の高等教育機関で実施され、主に602の重点学科と2つの全国高等教育公共サービス体制整備の項目を設置した。第1期の実施資金は186.3億元、その内中央政府の特別項目としての出資は27.55億元、部門と地域による出資は103.2億元、学校の自己資金は55.6億元となった。その用途として、重点学科の整備に64.7億元、学校と全国の公共サービ体制整備に36.1億元、インフラ整備に85.5億元が用いられている。「211プロジェクト」第2期の整備は107校の大学で実施され、第2期の実施資金は187.5億元とし、その内、中央政府による出資は60億元、部門と地域間による出資は59.7億元、学校の自己資金は67.8億元となった。その用途として、重点学科整備に97.9億元、公共サービス体制整備に37.1億元、教師陣の整備に22.2億元、インフラ整備等に30.4億元が用いられている。

 「211プロジェクト」実施計画に基づき、「第9次5ヵ年計画」の実施期間には、中国全国にすでに99校の高等教育機関(8校の調整合併後、実質91校)が国家の計委から承認を受けた「211プロジェクト」国家重点項目のリストに加わっている。その内、教育部直属校57校、中央部門直属校11校、省直属校20校、軍事学校3校となっている。「211プロジェクト」第2期実施末期には、新たに13校が追加、2009年2月には5校が追加された。学校の合併により、現在「211プロジェクト」校の総数は以下のリストに示す112校となっている。

表1 「211プロジェクト」校リスト
北京大学 中国人民大学 清華大学 北京交通大学
北京工業大学 北京航空航天大学 北京理工大学 北京科技大学
北京化工大学 北京郵電大学 中国農業大学 北京林業大学
北京中医薬大学 北京師範大学 北京外国語大学 中国伝媒大学
中央財経大学 対外経済貿易大学 北京体育大学 中央音楽学院
中央民族大学 中国政法大学 華北電力大学 南開大学
天津大学 天津医科大学 河北工業大学 太原理工大学
内蒙古大学 遼寧大学 大連理工大学 東北大学
大連海事大学 吉林大学 延辺大学 東北師範大学
哈爾濱工業大学 哈爾濱工程大学 東北農業大学 東北林業大学
復旦大学 同済大学 上海交通大学 華東理工大学
東華大学 華東師範大学 上海外国語大学 上海財経大学
上海大学 第二軍医大学 南京大学 蘇州大学
東南大学 南京航空航天大学 南京理工大学 中国鉱業大学
河海大学 江南大学 南京農業大学 中国薬科大学
南京師範大学 浙江大学 安徽大学 中国科学技術大学
合肥工業大学 厦門大学 福州大学 南昌大学
山東大学 中国海洋大学 中国石油大学 鄭州大学
武漢大学 華中科技大学 中国地質大学 武漢理工大学
華中農業大学 華中師範大学 中南財経政法大学 湖南大学
中南大学 湖南師範大学 国防科技大学 中山大学
暨南大学 華南理工大学 華南師範大学 広西大学
海南大学 四川大学 重慶大学 西南交通大学
電子科技大学 四川農業大学 西南大学 西南財経大学
貴州大学 雲南大学 西藏大学 西北大学
西安交通大学 西北工業大学 西安電子科技大学 長安大学
西北農林科技大学 陜西師範大学 第四軍医大学 蘭州大学
青海大学 寧夏大学 新疆大学 石河子大学
資料出所:教育部サイト:http://www.moe.edu.cn

 「211プロジェクト」の実施以来、十数年を経て、「211プロジェクト」校の人材育成水準は絶えず上昇を続け、学科整備では大きな効果を得、革新能力は高まり、一部の学科では国際的な先進レベルに近づき、大きな影響をもたらす成果を数多く遂げ、中国の高等教育の全体的な実力は著しく強化されている。2008年1月16日、国務院温家宝総理は国務院常務会議を招集し、高等教育「211プロジェクト」実施の進捗状況をヒアリングした。会議では「211プロジェクト」第3期の実施(2007-2011)を行うことが議決され、経験を総括し、目標を明確化し、統一的に計画しながら各方面を考慮し、高水準の大学と重点学科の整備を速め、中国の高等教育の全体的発展を推進していくことが求められた。現在、教育部は「211プロジェクト」実施の成果とその経験を総括して、国家発展改革委員会や財政部と共同で、国務院常務会議で審議され承認を受けた「211プロジェクト」第3期実施の全体案に基づいて、「211プロジェクト」第3期実施方案を検討、作成し、「211プロジェクト」第3期の実施に向けて準備を進めている。

(2) 「985プロジェクト」の内容とその実施・推進

 知識経済が重要視される時代となり、知識、情報、技術などが社会経済の発展に及ぼす影響がますます大きくなっている。ハイレベルな大学は、社会経済の発展を支える動力源またはエンジンとも言うことができる。このような状況下において、共産党や政府は中華民族の偉大なる復興という将来を見据え、世界レベルの一流大学を整備するという政策を打ち出している。1998年5月4日、江沢民氏は北京大学の創立100周年記念において次のように語った。「現代化の実現のため、中国は世界先進レベルの一流大学を持つべきである。一流大学はハイレベルな創造型人材を育成する施設でなければならない。将来を見据え客観的な真理を追究し、人類が直面している諸問題を解決するための科学的根拠を提供すべきである。知識イノベーションや科学技術を実際の生産活動に応用するための重要な推進手段にしなければなければならない。中華民族の優秀な文化が、世界の先進文明と交流するための架け橋となることが期待される」。江氏の意向を反映し教育部は1998年12月24日に『21世紀に向けた教育振興行動計画』を制定した。同『計画』では国家予算の集中的な投入や多角的な刺激政策が実施され、重点学科の整備を最優先し段階的に拡大していく方針である。一部の高等教育機関や既に世界先進レベルに近い条件を備えている学科を中心として計画が進められる。今後10~20年に一部大学や重点学科が世界先進レベルに達することを目指した同計画は「985プロジェクト」と呼ばれている。

1.「985プロジェクト」の推進における基本概念

 1999年1月13日に国務院は教育部の『21世紀に向けた教育振興行動計画』を承認した。「985プロジェクト」第1期における基本概念は以下のとおりである。世界一流大学や国際的に知名度の高いハイレベルな研究型大学を整備することを目標とする。高等教育機関に対する新しい管理制度や運営制度を確立する。今世紀における最初の20年間を重要な戦略的機会と見なし、集中的な資金投入、重要度や特色の明確化、優位性の活用、画期的で持続可能な発展によって中国の特色を生かした一流大学を整備する。

 「985プロジェクト」第1期は顕著な成果を上げている。大学における学科構造や学科設定の調整や改善、優秀な教師陣の結集、ハイレベルな創造型人材の育成クオリティの向上、世界先進レベルに近づくか達する研究成果の取得、高等教育機関の総合力や総合レベルの強化などが進んでいる。中国で世界一流大学を整備する上で、一定の経験を積み確かな基礎が整った。これはまた中国の経済、社会、文化の発展にとって重要な貢献となった。2004年6月2日、教育部と財政部は第1期プロジェクトに基づいて、『985プロジェクトの継続推進に関する意見』を発表した。同『意見』は「985プロジェクト」第2期の基本概念を明らかにしている。教育部・財政部が発布した『985プロジェクトの継続推進に関する意見』に基づいて、「985プロジェクト」第2期(2004-2007)では以下のような目標が定められている。第1期プロジェクトの成果を引き継ぎ、世界一流大学や国際的に知名度の高いハイレベルな研究型大学を整備するための基礎を引き続き強化していく。一部の学科が世界先進レベルに近づくか達するように時間や努力を惜しみなく費やし、世界一流大学を整備する。管理制度や運営制度の革新によって世界一流大学を整備する体制を積極的に模索する。世界トップレベルの学術指導者や学術チームを育成または招聘する。国家革新システムの整備に合わせ、「985プロジェクト」科学技術イノベーションプラットホームや「985プロジェクト」哲学・社会科学イノベーション拠点を重点的に整備する。一部世界トップレベルの学科の形成と整備を促進する。

2.「985プロジェクト」の推進における総合責任

 関係部門や各参加機関による「985プロジェクト」第1期の総括に基づき、教育部と財政部は『「985プロジェクト」の継続推進に関する意見』を発表した。同意見が明らかにした「985プロジェクト」第2期の基本責任は以下のとおりである。

 (1)体制の革新。世界一流大学を整備するという目的に基づき、現行の管理制度や運営制度を見直し、必要な改革を行い、上記目的の実現に適合させるようにする。人事制度改革を加速させ、競争や異動を中心とした人事管理制度、人材評価制度、科学的で理にかなったインセンティブ制度を確立する。優秀な人材を積極登用し、能力を存分に発揮できる環境を構築する。従来の学科構造に基づいた科学研究管理や学科整備モデルを改め、現代科学の発展トレンドに適する創造、交流、開放、共有といった特色を持つ運営制度を確立する。公開、公平、公正の原則に基づく投資収益を中心とした業績評価制度を確立する。

 (2)チームの編成。良好な研究環境やそれに付随する保障制度を提供することによって、国内外から世界先進レベルの学術指導者、優秀な学術要員、大学の上級管理人材を招聘する。潜在能力が高い働き盛りの要員を育成することを重視し、レベルの底上げ、環境改善、集中教育といった多種多様な方法で優秀な若い人材を確保する。博士やポストドクターを駆動力としたイノベーションパワーを形成する。世界一流大学にふさわしい教師陣、管理チーム、技術サポートチームの確立を急ぐ。

 (3)プラットホームの確立。世界最先端の科学技術や国家の近代化に伴う必要性を意識した「985プロジェクト」科学技術イノベーションプラットホームを確立する。学科整備計画の指揮を受ける同プラットホームは、国家の重大基礎研究、戦略的ハイテク研究、重大科学技術計画などに関連している。また国家実験室、国家重点実験室、国家工程研究センター、国家工程技術研究センターといった国家によるイノベーションプラットホームの整備計画と密接に繋がる。プラットホームの確立のためには、学科構造の徹底した調整、学科の発展余地の開拓、学科間交流の促進、情報共有の促進、ハイレベルな学術チームの創設、管理や運営の制度における開放、共有、競争、効率化の実践が必要である。またプラットホームに関する教育や科学研究の環境およびインフラ施設も整備、改善しなければならない。プラットホームの確立によって、高等教育機関の創造性や国民経済に関連した重要な科学技術問題を解決する能力を大幅に向上させる。また国家の重大プロジェクトを進行する能力やハイレベルな国際協力に参加するための競争力が強化される。学科の最適化や交流が促進すれば科学技術に関する重要な成果や世界トップレベルの学科が生み出され、国家革新システムの確立に重要な役割を果たす。国家、地域社会、経済の発展のためには学科の枠組みを越え創造性、交流性、開放性に富んだ「985プロジェクト」哲学・社会科学イノベーション拠点を確立する必要がある。人文・社会科学、自然科学、工程技術などの交流、浸透、融合を促進すれば、新しい学科、研究分野、研究方法を創造できる。グローバル、戦略的、先見的といった要素を備えた重要理論や問題の解決、共産党や政府に対する政策決定相談、社会主義の近代化に関する貢献、社会主義の物質文明や政治文明、精神文明の形成などに寄与する国家レベルの哲学・社会科学センターとなる。

 (4)環境サポート。公的資源および計器や設備の共有プラットホームを早急に整備する必要がある。配置が合理的で、設備の完備した教育・科学研究施設を整備する。教育や科学研究の情報化やデジタル化を促進し、近代的な教育理論や教育技術に基づいた教育・科学研究環境を形成しなければならない。高等教育機関における図書館、データバンク、自動化水準が世界先進レベルに近づくか達するように努力すべきである。また高等教育機関における教育・科学研究インフラ施設を引き続き改善していく必要もある。

 (5)国際的な交流や協力。国際的な学術交流や研究協力に寄与する環境を確立すべきである。世界的に有名な学者の招聘、研究協力、世界一流大学や学術機関との具体性のある提携、ハイレベル人材の共同育成や研究拠点の確立、ハイレベルな国際協力研究プロジェクトの展開、ハイレベルな国際学術会議の開催、外国人留学生の積極的な受け入れ、中国における高等教育機関の国際化の推進などを行う。

 「985プロジェクト」が正式に起動した直後の1999年に北京大学清華大学が最初に指定され、国家から各18億元の投資を受けた。続いて教育部は江蘇省、上海市、陜西省、浙江省、天津市、湖北省、福建省、山東省、湖南省、遼寧省、重慶市、四川省、広東省、北京市、安徽省、黒龍江省といった省・直轄市、国家科学技術委員会、中国科学院などの部門、委員会、科学研究機関と共に復旦大学上海交通大学南京大学浙江大学西安交通大学北京師範大学中国人民大学、中国科技大学、哈爾濱工業大学などを重点建設した。「985プロジェクト」第1期指定大学は合わせて34校だった。大学名は以下のとおりである。清華大学北京大学、中国科技大学、南京大学復旦大学上海交通大学西安交通大学浙江大学、哈爾濱工業大学、南開大学天津大学東南大学華中科技大学武漢大学厦門大学山東大学湖南大学中国海洋大学中南大学吉林大学北京理工大学大連理工大学北京航空航天大学重慶大学電子科技大学四川大学華南理工大学中山大学蘭州大学、東北大学、西北工業大学同済大学北京師範大学中国人民大学

 「985プロジェクト」第2期では5つの高等教育機関が追加指定された。大学名は以下のとおりである。中国農業大学、国防科技大学、中央民族大学西北農林科技大学華東師範大学。2006年までに「985プロジェクト」第1期と第2期の指定大学は合わせて39校となった。「985プロジェクト」指定の重点大学の地域分布(2006年)は以下に示すリストのとおりである。

表2 「985プロジェクト」指定大学リスト
省・市 学校 比率
北京 北京大学清華大学中国人民大学北京師範大学北京理工大学中国農業大学中央民族大学北京航空航天大学 8 20%
上海 復旦大学同済大学上海交通大学 華東師範大学 4 10%
陜西 西安交通大学西北工業大学西北農林科技大学 3 7%
湖南 中南大学湖南大学、国防科技大学 3 7%
湖北 武漢大学華中科技大学 2 5%
四川 電子科技大学四川大学 2 5%
江蘇 南京大学東南大学 2 5%
遼寧 東北大学、大連理工大学 2 5%
山東 山東大学中国海洋大学 2 5%
天津 天津大学南開大学 2 5%
広東 華南理工大学中山大学 2 5%
安徽 中国科技大学 1 3%
浙江 浙江大学 1 3%
黒龍江 哈爾濱工業大学 1 3%
重慶 重慶大学 1 3%
甘肃 蘭州大学 1 3%
福建 厦門大学 1 3%
吉林 吉林大学 1 3%
資料出所:教育部ホームページによるデータをまとめたものである。

  • [*1]羅雲:『中国重点大学と学科の整備』、中国社会科学出版社2005版、第72ページ。

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