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【11-001】日本を追い抜いた中国の科学技術

2011年 1月26日

2 中国のイノベーションを実現したハイテクパーク政策

 中国が急速に抜本的な革新、発展を遂げたのは、世界に類のない多様なサイエンスパーク・ハイテクパーク(以下「ハイテクパーク」という。)政策の成功にあると確信している。

 1978年改革開放が決定され、深セン、珠海、アモイが経済特区となったのを皮切りに、さらに、対外開放都市、開放地帯が指定され、優遇措置がとられ、多くの産業振興、科学技術振興政策が策定され、中国全土が産業化、工業化していった。中国政府は、次のステップとして、産業のハイテク化を求めて、新たに、1988年、「タイマツ計画」を策定公布する。「タイマツ計画」は、国務院が認可し、科学技術部が実施するハイテクパークの実行計画である。科学技術部に、タイマツハイテク産業開発センターという大きな行政組織があり、ハイテクパークの企画、実行、管理が行われている。

(1)ハイテクパークの種類

 ハイテクパークは、12種類あり、総合的かつ巨大なものから、特定目的のもの、比較的小規模なものもあり、大きなハイテクパークの一部になっている特定目的のパークもあり、多様である。所管する機関も多く、また、あたえられている優遇措置、行政措置もパークの種類により、多様である。

(2)国家ハイテクパーク産業開発区

 最も基盤的かつ総合的なパークは、タイマツ計画により進められている「国家ハイテクパーク産業開発区」で、全国に54箇所建設されている。名高い「北京中関村サイエンスパーク」は、1988年指定され、総面積232平方キロ、入居企業数1.7万社、総生産高43兆2000億円(2009年)、過去10年間毎年25%の伸び。マイクロソフト、IBM,AMD、モトローラはじめ世界ランキング上位500社の大部分が所在。中国コンピューター関連生産高の3分の一がここで生産され、中国のシリコンバレーと呼ばれている。北京大学、精華大学始め80大学。科学院、工程院等200以上の研究所。アジア最大の国家図書館、特許庁が存在。国家標準、国際標準にも注力。中国のハイテク化の牽引車となっている。

(3)国家バイオ産業基地

 「上海国家バイオ産業基地」は、全国22箇所に存在する「国家バイオ産業基地」の一つである。張江サイエンスパーク(新薬開発、共同研究)を核心基地とし、徐会地区(薬物臨床試験等)、青浦工業パーク(薬物製剤、天然薬物)、南海地区(バイオ医学工程)等々からなる。上海は中国バイオ産業の最重要地域である。国際的に最先端になることを目指している。446社が入居。生産高1兆4000億円、7年連続17%の伸び。GE等欧米企業の研究開発センターが入居中。

(4)情報通信国際イノベーションパーク

 「済南情報通信国際イノベーションパーク」は、科学技術部、情報産業部、及び商務部、山東省政府共同の「国家イノベーションパーク」(大規模パーク。全国3所在)2007年スタート。建築総面積61・5平方キロ。研究、産業、教育サービスに分かれる。世界レベルのソフトウエアー、集積回路、ネット通信、デジタル化装備、情報サービスの5産業群を建設。「国家情報通信技術研究院」総工費570億円で建設。科学技術部は「国家集積回路設計済南産業化基地」を建設。情報産業ハイテク化の最先端基地を目指す。2020年生産目標21兆5760億円。

(5)ハイテクパーク全体

 10種類のうち3種類のパークの具体例の概要を紹介させていただいた。中国全土に所在する10種類のハイテクパーク総数は、595である。全体の統計はないので、収集できた範囲での情報をもとに別表を作成した(表2-1)。

 中関村を例とする全国54箇所の「国家ハイテク産業開発区」の総計は、総面積28億8000万平方メートル、入居企業内外のハイテク企業48472社、従業員数650.2万人、総生産高197兆5000億円(2007年)。年間30%の成長。域内住民の平均所得は年1万ドル(国民平均の約6倍)

 全国、10種類、595のハイテクパークの総計は、凄まじい数字になると思われる。

 ハイテクパーク政策は、このように、中国の産業のハイテク化、経済発展を牽引してきた。

 今後は、さらにきめ細かく、ハイテク化のための分野別最先端産業の牽引、ハイテク化に必要な大学、研究機関の発展、知財、国際化などのハイテク化を目指し、ハイテクパーク政策は、多様化し、大きくなり、関係機関が多くなり、それぞれの政策の重畳効果を得て、益々発展していくと思われる。

 なお、サイエンスパーク・ハイテクパーク政策は、中国は、アメリカのシリコンバレーを始め、世界中から十分に学び実行に移している。この政策は、科学技術の振興、産業のハイテク化のために極めて有効な施策とされ、欧米各国、韓国、台湾、シンガポール等が熱心である。

 わが国は、つくば学園都市があるが、縦割りの各省の研究機関と大学が同じ地域にあるだけで、有機的な政策がとられておらず、似て非なるものであり、皆無といってよい。

表2-1

表2-1 中国のサイエンスパーク・ハイテクパークの基本データ

出典:「中国におけるサイエンスパーク・ハイテクパークの現状と動向」(中国総合研究センター、2009年),「中国ハイテク産業発展年鑑2008」を基に作成。



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