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【11-001】日本を追い抜いた中国の科学技術

2011年 1月26日

4 科学技術指標からみた評価

 一般的に、国の科学技術水準を比較する場合、客観的指標として、いわゆる「科学技術指標」を比較する。それぞれの指標が急速に伸びていて、圧倒的な存在をしめしている。近い将来、わが国は勿論のこと、欧米に追いつき、追い抜く勢いである。

(1)研究開発費総額

 OECD購買力平価で換算した研究開発費は、図4-1のとおり、米国、日本に次ぐ。

図4-1

図4-1 主要国等の研究開発費の推移(購買力平価換算)

原典:OECD “Main Science & Technology Indicators 2009/1”
出典:JST研究開発戦略センター科学技術動向報告

 中国は、年平均20%あまり、4年で倍増のスピードで増加させている。2009年は、1530・5億ドルとなり、日本を抜き世界第二位となった。基礎研究費の割合が、欧米20%前後、日本13.8%に比べ、4.7%と極めて少ないのが特徴である。なお、配分は、選択集中して行われており、一流の大学、研究機関では、十分な研究費が確保されているように見える。

(2)研究開発人材

 研究人材なくしては、研究は行われない。中国の研究開発人材は、2000年代から目を見張る急増を続け、2009年に、142.6万人となり、世界第一位の米国と並んだ。

 (図4-2)。ちなみに、2009年の研究開発従事者数は、318・4万人。うち、大学卒業生以上は、155・7万人。女性研究者は、78・9万人(24.8%)。日本は83万人。

図4-2

図4-2 主要国等の研究者数の推移

注: 1.各国とも人文・社会科学が含まれている。ただし韓国の2006年までは人文・社会科学が含まれていない。
2.日本の2001年以前は4月1日現在、2002年以降は3月31日現在。
3. 日本の専従換算値の1995年以前は、OECDによる推定値。
4. ドイツの2007年は自国による推計値。
5.英国は、1983年までは産業(科学者と技術者)及び国立研究機関(学位取得者又はそれ以上)の従業者の計で、大学、民営研究機関は含まれておらず、1999年~2004年はOECDによる推定値。
6. 米国、EUはOECDの推計値。EU-27の2007年は暫定値。
7. 中国は、OECDの研究者の定義に必ずしも対応したものとはなっていない。

原典:日本:(研究者数)総務省統計局「科学技術研究調査報告」
(専従換算値)OECD「Main Science and Technology Indicators Vol 2009/1」
インド: UNESCO Institute for Statistics S&T database
その他の国: OECD「Main Science and Technology Indicators Vol 2009/1」

 なお、2008年、中国の大学院在学者は128万人、日本は26万人。2008年、海外に18万人が留学、主要先進国では、留学生は中国からの学生が圧倒的に多く、米国の研究社会は、勤勉かつ優秀な中国人研究者に支えられているといわれ、日本でも、東大の大学院は、中国人留学生が2010年829名在籍、中国人のほうが日本人より多い研究室があると聞く。長期的には、中国の大学進学率は、急増しているものの23%と先進国の半分以下で、まだまだ増加する。世界の研究社会での中国人の役割は、計り知れないほど重要になってくる。

(3)研究論文

 各国の研究活動の成果を把握するための研究論文数を見ると、中国は、近年急増し、日本を抜いて、米国に次いで世界第二位となった(図4-3)。

 ちなみに、2009年、工学分野の論文を収録する「EI(Engineering Index)」では、中国の論文数は、9.5%増の9.8万本になり、米国を7%上回り、世界第一位となった。

 論文の質を示す被引用トップ10%論文のシェアー、被引用数でも、着々と先進国と同水準に近づきつつある。また、材料、化学、数学等分野によっては、世界水準に入っている。また、中国科学院は、材料、化学で被引用数世界一の機関となっており、他の分野でも好成績を挙げている。生物学、医学などの分野では、先進国との差は、まだ大きい。

図4-3

図4-3 主要国の論文数(分数カウント)及びシェア
(2004-2006年の平均、全分野、分数カウント)

注1:著者の所属機関ごとの分数カウント。

原典:SCOPUS: SCOPUSカスタムデータベースに基づき科学技術政策研究所で集計
出典:科学技術政策研究所 NISTEP REPORT No.118 日本と主要国のインプット・アウトプット比較分析によりJST中国総合研究センター作成。

(4)特許

 特許は、産業の科学技術活動を反映するものであるが。近年、中国の特許出願は急増し、日本、米国に次いでいるが、中国から海外への特許は、微々たる物である(図4-4)。中国の工業製品、ハイテク製品の輸出は、世界最大であるが、特許を必要としない製品なのだろう。なお、中国の通信機器メーカー華為技術は国際特許出願第一位である。

図4-4

図4-4 主要国からの発明特許出願件数の推移(1995~2007年)

注:1)出願数の内訳は、日本からの出願を例に取ると、以下に対応している。「居住国への出願」: 日本に居住する出願人が日本特許庁に直接出願したもの、
「非居住国への直接出願」: 日本に居住する出願人が日本以外(例えば米国特許商標庁)に出願したもの。
2) 各国ともEPOへの出願数を含んでいる。
資料:WIPO,“Statistics on Patents”(Last update: December 16, 2008)

出典:科学技術政策研究所 調査資料-170 科学技術指標

(5)技術貿易額

 2007年技術輸入額は、254.2億ドル、米、日、独で大部分を占める(表4-1)。わが国の技術輸入額60億ドルに比べ極めて多く、かつての日本のように、技術導入に依存した産業構造である。

表4-1 中国技術導入上位国家・地域(2007年)
順位 国・地域 契約数 契約金額
(億ドル)
うち、技術費
(億ドル)
1 アメリカ 1387 68.3 52.3
2 日本 2428 44.4 36.7
3 ドイツ 1178 40.1 16.6
4 韓国 731 19.2 19.1
6 フランス 333 9.4 5.9
7 中国香港 1090 8.9 8.1
  その他 2626 63.9 55.4
  総計 9773 254.2 194.1
原典:中国科技統計年鑑2008
出典:JST研究開発戦略センター「科学技術・イノベーション動向報告 中国・台湾編」2008年度版によりJST中国総合研究センター作成。

(6)工業製品、ハイテク製品の輸出

 ハイテク製品の貿易額は図4-5のとおり。

 中国は、外国資本、技術導入による工業振興が成功し、工業製品、ハイテク製品の輸出の伸びは著しく、世界一となっている。反面、わが国の輸出の伸びは、鈍化し、かって、世界一であった地位は、中国に取って代わられている。この原因はわが国企業が中国に立地を促進したこともあるが、同様の事情を抱える米国、ドイツ等わが国以外の先進国は、中国の伸長にも関わらず輸出を伸ばしている。航空宇宙、医薬品、医用・精密・光学機器等超ハイテク産業に弱いわが国の産業の競争力に懸念を抱く。

図4-5

図4-5 主要国におけるハイテクノロジー産業貿易額の推移(1996-2006年)

原典:OECD,“STAN BILATERAL TRADE DATABASE(EDITION 2008)”
出典:科学技術政策研究所 調査資料 -170 科学技術指標



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