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【11-001】日本を追い抜いた中国の科学技術

2011年 1月26日

6 中国の科学技術行政体制

 膨大な科学技術政策を実行する中国の科学技術行政体制は、以下の図のとおりである。

図6-1

図6-1 中国の科学技術関連組織・体制

出典:JST中国総合研究センター「平成21年版中国の科学技術の現状と動向」により作成。

(1)膨大な行政組織であるが、特徴は、次のとおり。

1)党と行政組織は、緊密な連携の下に行政を行っている。

 中国共産党の最高機関である中央政治局常務委員会の基本方針のもとに国務院の行政が行われている。国務院総理温家宝、副総理李克強は、党中央政治局常務委員でもある。

 国務院以下各部(日本の省)は、緊密な連携の下、一丸となって行政を行うシステムになっている。国務院は、総理、副総理4人、国務委員5人、各部長(日本の大臣)等から構成されており、主要政策は、国務院で集団討議され、決定されるので、国として一致団結した政策が策定され、実行に移される。

2)科学技術部は、広範な科学技術政策を策定実行しうる巨大かつ強力な実行官庁。

  • 科学技術活動を総合部門。政策立案、推進、科学技術各計画の立案制定、イノベーションシステムの確立、重要プロジェクトの企画推進、人材、交流、普及、科学技術サービス
  • 科学技術情報研究所、科学技術発展戦略研究院など、14の内部機関、17の直轄。事業部門を有する

3)国務院本部に直結した科学技術関係機構

4)各部の充実した科学技術関係機構

  • 中国農業科学院、中国医学科学院、中国環境科学院、中国気象科学院等々

5)シンクタンク機能

  • 中国社会科学院、国務院発展研究中心、中国科学技術発展戦略研究所等々

6)地方自治体は、巨大な行政主体であるが、中央政府と密接な連携のもと科学技術行政を実施しており、それぞれ、科学技術行政機構、研究所等を有している。

(2)公的研究機関全体について(2008年))

  • 総研究機関数 3727 (うち中央678 地方3049)民間研究機関を含めると4・5万機関
  • 従業員総数 61.5万人(うち中央40.2万人 地方21.3万人)うち研究者等48.8万人(うち中央32.4万人 地方16.4万人)
  • 総予算 4.3兆円(うち中央3.4兆円、地方0.9兆円)

 以下の機関について、特に紹介したい。 

1)中国科学院

  • 国家にニーズと最先端科学に対応し、イノベーションを強化し、世界最高峰に達することにより、中国国家に貢献
  • 全国に分院12、研究機関92、中国科学技術大学中国科学院大学、会社23を有する。
  • 正規職員5万人(うち研究者等3.8万人)、大学院生4.3万人、ポストドクター2000人
  • 予算規模(2008年)5424億円(購買力平価換算)
  • 科学院の研究所群は、材料化学、化学の分野で、論文被引用数において世界トップになるなど極めてレベルが高く、中国科学技術の牽引車となっている。
  • 科学院にはかって150の研究所があったが、改革を重ね、一旦70位まで減らし、今後の中国に必要な戦略的分野について25の研究所を新設、ダイナミックに新分野の研究を進めている。

2)中国科学技術協会

  • 科学技術者の民間組織。自然科学、技術科学、工学技術または関連分野の167の全国的な学会を設けるほか、科学技術の発展と普及の促進を目的とする32の省クラスの科学技術協会と多くの地方、下部組織、そして430万あまりの会員を擁する。
  • 2008年の科学技術普及経費786億円(うち、青少年科学技術活動費64億円、科学館建設費等172億円(購買力平価換算))
  • 日本で行われていない学会のサポート、科学館への政策的サポート、青少年普及活動が、豊富な予算で活発に行われている。
  • 余談。3年前、日本科学未来館で、北京大学名誉教授李先生が、中国の科学館政策について講演。先生によると、国務院、科学技術部が、青少年の科学教育の場として、全国主要都市に、都市に応じてメガ科学館、大科学館を展開する政策とのこと。現在、上海、広東、北京に建設済み、近く深センに建設予定。広東科学館は、敷地43万㎡、建設面積15万㎡(日本科学未来館の5倍)。科学館の分野に、明確な思想の元に、計画が策定されていることに驚く。この政策は、科学技術協会が実施している。

3)国家自然科学基金委員会

  • 国務院直轄、唯一のファンディングエージェンシー(研究資金配分機関)である。米国NSFの中国版として、1986年2月に設立されたが、年平均25%の予算増(図6-2)を示し、2008年1641億円(購買力平価換算)、世界有数の巨大ファンディングエージェンシーに成長した。
  • なお、中国では、各部から行政目的に応じた研究費が出されているが、国家自然科学基金は、最も権威が高く、資金量も多い。
図6-2

図6-2 NSFCに対する中央政府からの予算配分額推移(1986-2008年)

出典:JST研究開発戦略センター科学技術・イノベーション動向報告

(3)所感

  • あまりにも巨大な組織に驚く。科学技術は第一の生産力とする姿勢が行政組織に現れている。
  • 党、国務院、行政各部が一体となって、政策立案し、実行する体制が出来上がっている。
  • 国務院直属のトップダウンで横断的政策を実行する組織、シンクタンクが充実している。
  • 科学技術行政の中核、科学技術部が、強大な組織と権限を有し、中国の科学技術行政を牽引している。
  • 国務院、各部の研究所群が充実、国の戦略的研究開発をトップダウンで実行しうる体制となっている。
  • 科学技術情報、図書館等の科学技術インフラ関係組織が充実している。
  • 地方組織が膨大であり、地方も含めて国を挙げて、イノベーション、科学技術振興に取り組む組織体制となっている。

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