【12-001】レーザー設備の一流企業に―華工科技産業股フン有限公司の馬新強董事長を取材
科学技術日報 2012年 1月12日
2007年、華工科技産業股フン有限公司(以下「華工科技」)は国家科技支援計画プロジェクト「工業レーザー加工機およびそれに伴う設備のキーテクノロジーの研究とモデル」を請け負った。華工科技はハイパワーのレーザー加工機の部品等、基盤技術の研究に取り組み、全光ファイバーレーザー加工機、レーザー太陽エネルギーシリコンチップ製造システム等、今後の応用が期待されるレーザー設備を自主開発した。約4年間の取り組みを経て、同社は画期的な進展を実現し、大規模生産により海外企業による技術独占の局面を打破した。
本紙はこのほど華工科技の馬新強董事長を訪ね、同プロジェクトの実施が中国レーザーハイテク製造にもたらす変化、また同社の将来的な同市場における計画について取材した。
科技日報:国家支援計画プロジェクトの実施は、中国レーザーハイテク製造業の推進に対して、どのような意義がありますか。
馬新強:当社は中国が解決すべき2つの技術のボトルネックを解決した。1つ目は、中国のレーザー加工設備生産企業が必要としている、応用面の幅広い先進的工業レーザー加工機の製造に関するコア技術で、画期的なブレークスルーを実現した。ハイパワーの全光ファイバーレーザー加工機やCO2レーザー加工機の製品を開発し、中国のハイパワーデジタル制御レーザー加工設備に活力を注ぎ込んだ。2つ目は、国民経済の支柱産業において重大な影響力を持つレーザー加工設備の統合生産システムのコア技術面で、画期的なブレークスルーを実現した。技術力、経済的付加価値を持ち、業界の発展に重大な影響力を持つレーザー加工設備を開発し、実用化を実現した。
デジタル制御レーザーカッティングシステムは三峡ダムの設備製造に応用され、水車発電機の精密カッティングという難題を解決した。冷間圧延帯鋼レーザー突き合わせ溶接設備は、武漢鋼鉄の冷間圧延帯鋼製造技術を改善し、その生産効率を高めると共に、薄板生産ラインの建設コストを大幅削減した。レーザー精密ミクロ加工設備は、中国宇宙産業の重要部品の加工に採用されている。
同プロジェクトは重要な基盤技術の画期的な進展を実現し、今後15年間の国民経済の支柱産業の持続可能な発展を支える、新型・ハイパワーのレーザー加工機とそれに伴う設備を自主開発し、中国の製造技術水準を高めた。中国レーザー産業の工程化技術水準、イノベーション能力、国際競争力が1ランク上昇した。
同プロジェクトの成功により、中国レーザー技術の海外との差が縮まり、設備の輸入依存、コア技術と知的財産権を海外に掌握されるという局面を打破し、競争が熾烈な世界市場において発言権と価格決定権を持てるようになった。また先進的レーザー製造設備は、中国の設備製造業の製造レベルの向上、産業のアップグレードに一役買った。
企業の総合的競争力を全面的に向上
科技日報:同プロジェクトの実施により、華工科技はどのような商機を手にしましたか?
馬新強:同プロジェクトを受注できたことは、国家および地方政府の当社に対する信頼の証である。ゆえに当社は「自主イノベーション、飛躍を重視、発展を支持、未来をリード」という方針に従い、当社が強みを持つ資源を集め、同プロジェクトの順調な実施を保証した。同プロジェクトの実施により、当社は3つの面から長期的な進歩を実現する。1つ目は人材で、技術イノベーションには人材が必要となる。当社は国内外からレーザー技術のハイレベルな人材を招聘した。同プロジェクトの実施により多くの重要な基盤技術の難題を解決したのみならず、300人以上の専門チームを育成することができた。この専門チームは、当社の将来的な発展において力を発揮するだろう。2つ目はノウハウだ。当社は国家特許64件を出願し、うち発明特許は35件に達した。同時に国家・業界基準の作成を進めている。当社は現在、技術の特許化、特許の基準化という戦略目標を一部達成している。これらは当社の競争力を支える基礎となるだろう。3つ目は産業チェーンだ。同プロジェクトの成果、科学研究の成果は、武漢鋼鉄、武船重工、神龍汽車、三江航天、富士康、武漢日新科技公司等、国内の大型鉄鋼・船舶・軍需・自動車・建設機械・精密電子機器・新エネルギーの生産企業において実用化を実現している。これにより当社の受注量が増え、取引先も外国からの調達コストを削減することができた。
中国国内の需要を満たすため、当社は鋭科公司や科威晶公司などの工業レーザー加工機生産拠点を設立し、華工激光、武漢法利莱などをレーザー加工設備の生産拠点とし、レーザー加工機から高級レーザー設備に至るまでの完全な産業ラインを形成した。これにより毎年、各種レーザー加工機と設備を3000台以上生産することができ、売上高20億元(約240億円)を実現できる。完全な産業チェーンの形成により、製品のコストを効果的に削減し、海外の技術制限や価格独占から脱却し、当社の総合的な競争力を高め、国民経済の発展に対して安価で質の高いレーザー設備を提供した。
科技日報: 華工科技は人材の招聘と戦略の再編を通じ、自主イノベーションを実現し、中国のレーザー設備製造業の中心企業となりました。この発展の背後にあった重大決定、重要な時期について教えて下さい。
馬新強: 90年代より、知識経済の出現、国家の「科教興国」戦略の指導を受け、多くの科技企業が誕生した。863プロジェクトや炬火計画(トーチ・プロジェクト)の全面実施と、国による一連の優遇政策発表に伴い、企業は「ハイテクの発展、産業化の実現」に対して一定の認識を持ったが、戦略および全体的な生存環境に対する検討が不足していた。これらを背景にして誕生した当社は、旧華中理工大学の科技成果を転化するという重要な職責を担い、将来性のあるプロジェクトであれば全力でその産業化に努めた。2002年、投資したプロジェクトはレーザー、電子部品、ソフト、バイオ医薬、次世代インターネット技術、ナノ材料等の多くの分野に渡った。
このような機会によって形成された産業拡大方針は、当社の上場時の目標から大きく外れており、その弊害が露見するようになった。投資の分散化、各業務が必要とする支援の不足、各業務間の協力不足が見られ、全体的なまとまりがなく、管理が困難になり、投資による欠損が業績の足を引きずった。これらの情勢下、当社は「我々は何をするべきか」、つまりピーター・ドラッカーが言った「我が社は何をするべきか」を真剣に考えざるを得なくなった。これはかつての「我々に何ができるか」からの方向転換だ。
2003年、「主業の明確化、経営業績の向上」を中心とする産業の構造調整が開始された。漢網公司、華工安鼎、華工生化、ナノ薬業等の主業とは関わりのない業務を、株式譲渡により分離していった。この調整を経て、優勢を持つ資源の統合を実現し、「光電子、光情報」を中核とする中心業務の思考回路が確立された。経営状況に対する敏感な反応により行われた同産業調整は、厳格に言えば徹底的なものではなかったが、主業の形成に対して歴史的な意義を持つ。当社はその時より安定成長期に入ったが、産業統合の模索の道を依然として歩み続けている。
中国資本市場の成熟に伴い、上場企業は資本市場の企業に対する評価を重視するようになった。当社は業務内容が多岐に渡り主業が不明瞭であったことから、資本市場から高い評価を得ていなかった。ゆえに当社の良好な発展を推進することができなかった。また第一次産業構造調整の後、当社の主業は依然として不明瞭であった。一部の業務は数年間の経営を経ても理想的な発展スピード、市場シェア、業界における地位を確保できず、かえって資源を浪費し、管理の分散化を招いた。この2つの原因から、当社は2007年より第二次産業構造調整に着手し、主業と関連性のない同済現代、開目軟件の株式を手放した。
主業の明確化を実現すると、当社はまたもや一つの問題に直面した。歴史的な原因により、当社の株主企業は20数社にのぼり、株式保有の構造も複雑であった。当社は「主業の明確化、革新産業の発展」という戦略調整に基づき、内部・外部から株式構造の調整を開始した。内部では同類製品の産業を統合し、市場資源と管理資源の集約化を行った。外部では当社の対外投資を整理し、資産流動性の劣る、投資収益率の低い対外投資を削減した。これにより当社の資本運営の基礎固めを行い、資本の収益源を拡大し、主業の強化に引き続き取り組んだ。
統合終了後、当社はレーザー技術とその応用を主軸とする4つの成長戦略を打ち立てた。華工激光を投資主体・運営実体とするレーザー製造設備産業、新高理電子を投資主体・運営実体とする電子部品産業、正源光子を投資主体・運営実体とする光通信および受動光学部品産業、華工図像を投資対象・運営プラットフォームとする情報偽造防止産業の発展である。
これらの調整を経て、管理の簡潔化を行い、産業構造が合理化に向かい、主業・主体が明確になった。当社の今後10〜数10年間の発展方向が定まり、基礎を固めた。
「中共中央の国民経済と社会の発展に関する第12次5カ年計画の制定についての建議」が採択された。同建議は、経済発展モデル転換の加速を主軸とする。これを受けて当社も国の産業発展政策を見据え、自社経営の需要と結びつけ、2つの転換(製造のハイレベル化、製造+サービス)を提案した。
第12次5カ年計画最終年までに100億元(約1200億円)規模の売上高を達成するという当社の計画を達成するためには、発展の速度と品質の向上が必須だ。当社の利益獲得方式は変化の激しい国内外の経済環境に応じて調整する必要があり、▽投資の増加から生産率の向上に転換し、▽低中級の製造をハイレベルの製造に転換し、▽既存の産業チェーンと製品製造の優勢により、製品の製造を中核とする「製造+サービス」へと転換し、サービス収入の売上全体に占める比率を高めなければならない――。まず「製造のサービス化」だが、これは「製品の提供」から「製品への依存」、つまり製品寿命全体をカバーするサービスの実行だ。将来的には現在の産業から、技術の研究開発・工業設計・アフターサービス・情報コンサルティング等、生産と関連するサービス業を剥離し、その産業化を促進することも考え得る。次に「サービス型」の製造だが、これは例えば当社が現在取り組んでいる「モノのインターネット」に関連する、RFID・センサー技術・IT貿易とサービスのことである。
企業の発展ペースとその品質を向上させるためには、企業の統合力を高める必要がある。グローバル経済一体化は、企業の専業化発展を促す。企業が将来的に競争力をそなえる大規模経営を実現できるか、これはその専業化レベルの如何のみならず、産業チェーンの資源の統合に対する取り組みにもかかっている。個別の企業間の競争であれば、その競争における優勢とは、企業の技術・業務資源・政府との広報活動能力であるが、現在の競争は産業チェーン間の競争となっている。産業チェーンの各企業は、相乗効果の促進により、個別の企業を大きく上回る優勢を形成する。産業チェーンの実力の強化、また相互協力により、個別の企業は向上と発展を続けるマタイ効果を得ることができる。
近年、当社は産業チェーンの資源の統合について有益な試みを行っている。例えば企業の情報化建設にCRMシステムを取り入れ、川下企業と共同で産業イノベーション連盟を構築し、顧客と共同で新製品を開発している。これだけでは不十分で、優秀な企業であれば川上から川下に到るまでの真の共存共栄を実現しなければならない。開放的・基準化された業務のプラットフォームを形成し、その過程において業界基準の制定に参加し、技術力と信頼性の向上に努め、ブランド影響力の強化を行う。これにより自社の産業チェーンにおける発言権を強化し、生産能力の拡大や市場での販売に向けて基礎を築く。
人材採用について、当社は近年より人材グループ構築に対する投資を拡大している。海外のハイレベル人材、特に先進的固体レーザー加工機分野の人材の獲得に乗り出している。当社は資金を惜しまず、エン大鴻博士(エン=もんがまえに三)、徐進林博士、肖黎明博士、王佐博士、周志強博士といった、世界一流の人材(国家千人計画、東湖開発区3551人材計画にリスト入り)を招聘した。これらの人材は、当社の同分野のコア技術の画期的な進展に対して重要な役割を担い、先進的固体レーザー加工機の自社製造を実現し、海外企業による独占という局面を打破した。当社はレーザー産業の規模と技術力を強化し、産業の川上・川下の整備に向けて堅固な基礎を築いた。
科技日報: 華工科技、馬董事長にとって、レーザー設備製造の理想とは何ですか?その理想に向け、これまでどのような取り組みをしてきましたか?
馬新強: 当社は設立当初より「レーザー技術とその応用分野において国家の競争力を代表し、国際的競争力を備える」ことを目標としてきた。11年間の経営を経て、これらの目標はほぼ実現された。今後は開放化が進むグローバル経済において、いかにしてレーザー産業のトップ企業となるか、検討する必要がある。
レーザー産業のトップ企業となるには、以下の3つの点に取り組まなければならない。
1つ目は、完備化された技術イノベーション体制により、自社のコア技術を利用し国際的競争力を備える製品を開発し続けることだ。市場を牽引力、技術の研究開発を推進力とする、二者結合の技術イノベーション体勢の構築を加速化する。研究開発に対する投資を拡大し、エネルギー光電子分野を巡り、共通性のあるコア技術と中核設備を研究開発し、自主イノベーション能力の全面向上を実現し、競争力をつけることで当社の持続的な高度発展を支える。
2つ目は人材の招聘と育成、人材グループの構築の加速化だ。当社は現在、レーザー技術分野におけるトップクラスの人材が不足しており、自主イノベーション能力の強化を制限している。当社は今後、人材の招聘を推進し、欧米等の技術先進国からハイレベル人材を招聘し、高度発展の需要を満たす。当社は同時に「青田育成計画」を積極展開し、多層化・多様化された育成法を採用する。当社の国家クラスの技術センターを利用し、優秀な技術研究開発人材を育成し、人材の蓄えを確保する。
3つ目は国際化戦略の展開、国際競争への参加だ。効率向上とコスト削減を目標とし、オーストラリア海外拠点に設立した華工科技国際業務プラットフォームにより、傘下の各海外顧客資源を統合し、海外営業所を合理的に設立する。またオーストラリアに設立した法利莱公司に、国際市場マーケティングセンターを設立する。技術面については、製品をより広大な国際市場に進出させ、国際的な視野を持ち、世界の技術の最先端に立たねばならない。世界大手企業の技術と製品を見据え、それに匹敵する製品と技術を同時に発表し、製品ラインナップのグレードアップを実現する。国際的な提携の面については、世界一流企業の市場・技術面の優勢を、当社の製造・人材資本の優勢と結びつけ、相互発展を図る。当社は現在、世界トップクラスのレーザー技術を有する科学研究院と技術協力と交流を行っており、当社のレーザー技術分野におけるレベルと実力の向上に努めている。