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【13-000】組織化された国際研究喫緊の課題―日本の中国研究

2013年 4月 8日

報告「日本の中国研究について-米国の中国研究を参考に-」

 日本における中国研究の拠点の一つ愛知大学国際中国学研究センターの高橋五郎所長ら中国研究者と中国総合研究センターの沖村憲樹・上席フェローが、2013年2月に意見を交換する機会があった。沖 村上席フェローが、現代中国に関する日本の研究の現状や国際的な評価などについてさまざまな質問や疑問を投げかけたのに対し、高橋所長らも率直な説明、見解で応え、充実した話し合いは長時間続いた。

 後日、高橋所長からあらためて新たな提言なども盛り込んだ長文の報告書「日本の中国研究について-米国の中国研究を参考に-」が届いた。

 「欧米諸国において、20~30年前までは、日本経由の中国研究、あるいは香港経由の中国研究がむしろ一般的であった」など、戦前から戦後にかけて、日本の中国研究の水準が非常に高かったことが、紹 介されている。一方、第2次世界大戦後、ハーバード大学を拠点にしたフェアバンク教授らによる米国における中国研究や発展途上国研究の水準が飛躍的に引き上げられた事実も、詳しく明らかにされている。

 報告によると、日本の中国研究はなお「国際的に高いレベルにある」。厚い研究蓄積、中国人大学教員、中国人留学生の数の多さといった優れた面があるからだ。しかし、「 研究自体の長期的展望を確立しようという意志が希薄になっている」「中国研究関係の学会の会員は国内居住者が大半を占め、学会の年次大会報告者も一般に国際性が乏しい」と いう内向き傾向が目立つ問題点も率直に示されている。

 米国との対比で日本の課題が浮き彫りにされているのも、興味深い。米国の中国研究は「歴史学・政治学偏重の研究から人文科学・社会科学両方を重視するようになり、複数の学問領域をまたぐ学際的な研究、古 代から近代、現代をカバーし、さらに研究テーマが細分化し現代中国社会のほぼすべての分野に及ぶようになった」。この結果、研究の成果が社会に及ぼす影響について大きな差がついてしまっている、と いう指摘が分かりやすい。

 米国では「政府、シンクタンク、大学の間は役割分担が比較的明確で、研究成果をシェアリングし、人材を共有できるインターアクティブな関係にある」。研究機関は「政権交代と外交政策・外 交戦略を支える重要なシンクタンクと人材バンクの機能を併せ持っている」。

 これに対し、日本は「基礎研究を担う大学と応用研究を担うシンクタンク、開発研究を担う民間企業といった明確な研究開発戦略ははっきり見えてこない」。結果として「 米国に比べて外交政策や対外経済政策の形成過程において専門家集団と政府間の連携がまだ弱い。それはひるがえって日本という国の情報発信力や外交戦略の『機能不全』、さ らには日本の国際交渉力とソフトパワーの低下につながっていく恐れがある。研究体制と研究内容の両面において組織化された国際研究、中国研究の推進が今後の日本の喫緊の課題である」ということだ。

 以下に興味深い報告書の全文を掲載する。