第53号:動物科学
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大豆イソフラボンの生体における代謝とその抗がん及び神経調節機能

2011年 2月 7日

劉燕強

劉燕強(Liu Yanqiang):
南開大学生命科学学院 教授、動物生物学実験室 主任

1964年3月生まれ。1996年、南京農業大学農業部動物生理生化学開放実験室にて博士号取得。1996年~1998年、軍事医学科学院にてポスドク研究に従事、2003年、2006年の二度にわたり、イタリア・ピサ大学に訪問、共同研究に従事。「Eur J Neurosci 」、「Neurosci Res」、「N-S Arch Pharmacol」、「Phytother Res」、「栄養学報」、「中国応用生理学」等雑誌に論文80篇余りを発表。責任編集及び編集参加した教材、専門著書6冊。現在、中国生理学会比較生理学専業委員会委員、多くの雑誌編集委員や原稿審査員。主な研究方向は栄養による神経機能調節。

 大豆イソフラボンは大豆の成長の中で形成される一つの二次代謝産物で、含有量は大豆の約0.25%である。主に、遊離型のゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインと結合型のゲニスチン、ダイジン、グリシチンを含んでいる。大豆イソフラボンはエストロゲン様の性質をもっているため、長きにわたり、大豆中に存在する抗栄養因子とされてきた。だが、その後の研究により、抗がん、骨粗しょう症予防、心血管疾患予防、女性の更年期障害改善、腎機能改善、免疫力向上、体重増量等の幅広い機能を具えていることが発見され、「大豆の奇跡」とまで言われたため、大豆イソフラボンの研究と応用は世界各国の生物医学界から注目されている。

1. 大豆イソフラボンの分類、構造、性質

 大豆イソフラボンは3-ベンゾピロンを母核とする化合物である。大豆中に存在する大豆イソフラボンは、遊離型のアグリコンと結合型のグルコシドの2種類に分かれる。アグリコンは総量の約2~3%を占め、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインからなる。グルコシドは総量の約97~98%を占め、主にアグリコン結合糖部位によって構成されているが、3種類の異なる糖、すなわちグルコシド、アセチルグルコシド、マロニルグルコシドがあり、3種類の異なるアグリコンがそれぞれ3種類の糖と結合すると9種類の異なるグルコシドを作ることができるため、合計12種類の構造の異なる大豆イソフラボンがある。そのうち、大豆においては主にマロニルゲニスチン、マロニルダイジン、ゲニスチン、ダイジンの形で存在している。相対的に言えば、大豆中のグリシテインの含有量はごくわずかであるため、大豆イソフラボンにおいて生物学的効果を果たすのは、ゲニステインとダイゼイン及びその配糖体である。通常、UVスペクトル、MS、NMR分析を用いて、これらの成分の構造を決定することができる。図1は表1を用いて、大豆イソフラボンの12種類の構造式をすべて表すことができ、また、大豆イソフラボンにおける3つの重要なグルコシドとアグリコンの構造及びその間の転化は図2の通りである。

図1

図1 大豆イソフラボンのアグリコン(A)とグルコシド(B)の一般構造式

表1 大豆イソフラボン化合物の構造式
形式 イソフラボン類 R1 R2 R3
遊離型 ダイゼイン H H -
ゲニステイン OH H -
グリシテイン H OCH3 -
グルコシド型 ダイジン H H H
ゲニスチン OH H OH
グリシチン H OCH3 H
アセチルグルコシド型 6"-O-アセチルダイジン H H COCH3
6"-O-アセチルゲニスチン OH H COCH3
6"-O-アセチルグリシチン H OCH3 COCH3
マロニルグルコシド型 6"-O-マロニルダイジン H H COCH2COOH
6"-O-マロニルゲニスチン OH H COCH2COOH
6"-O-マロニルグリシチン H OCH3 COCH2COOH
図2

図2 大豆イソフラボンの主なグルコシドとアグリコンの形式

 大豆イソフラボンと哺乳動物のエストロゲンの化学構造には、驚くほど似通ったところがある。図3は17-β-エストラジオールとゲニステイン、ダイゼインの構造比較を示しており、構造中のフェノール環はエストロゲン受容体との結合の鍵となる構造部位である。大豆イソフラボンの代謝産物エクオールとエストロゲンのある種の単体の構造は一つに重なり、末端のヒドロキシル基はほとんど重ね合わさる。

図3

図3 ゲニステイン、ダイゼインと17-β-エストラジオールの構造比較

 純大豆イソフラボンは無色の、苦い渋みのある結晶体状物質である。アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチルなど、極性溶媒に容易に溶ける。その水溶性は大豆イソフラボンの構造と関係があり、遊離形式の大豆イソフラボンは水溶性が最も劣り、基本的に水に溶けない。結合型大豆イソフラボンは一般に水に溶けやすいが、ゲニスチンは水に溶けにくく、水中での溶解度は4~50℃では明らかな変化がなく、70~90℃の時、その溶解度は温度の上昇にともなって著しく高まる。したがって、水溶液を用いて大豆イソフラボンを抽出する場合、温度は70℃を超えていなければならない。大豆イソフラボンにおいては非配糖体、すなわち遊離型アグリコンの生物活性だけがもっとも高く、大豆イソフラボン中の複合グルコシドは加熱及びアルカリ性の条件下で加水分解され、マロニル基とアセチル基が取れて、単純なグルコシドに転化する。アルカリ性加水分解条件のpH値は8~13で、加水分解の程度はpH値及び温度の上昇とともに大きくなる。大豆イソフラボンは強酸・高温、または酵素の存在する条件下で、加水分解してグルコースが取れ、アグリコンの形に変化する。酵素分解法に用いられる酵素はβ-グルコシダーゼであり、加水分解の最適条件は酵素の活性が最高となることを基準とする。また、大豆イソフラボンは一種のポリフェノール化合物であり、その構造にはフェノール性水酸基が存在し、容易に酸化されるため、抗酸化作用がある。

2. 大豆イソフラボンの体内における代謝

 動物やヒトが豆製品を摂取すると、そのイソフラボン中のアグリコン成分は小腸から直接吸収することができる。大部分がグルコシドの形で存在するイソフラボンは、結腸において細菌等微生物のβ-ラクタマーゼによって、生物活性を持ったアグリコンに変化し、さらに分解代謝してエクオール、O-DMA、p-エチルフェノールに変化し、これらの代謝産物は肝臓・腸の循環吸収によって血液に入り、大部分は腎臓を経て排泄される。このほか、大豆イソフラボンは乳汁を通じても排出され、ある研究報告によれば、母乳を分泌している成人女性の乳汁には200nmol・L-1の大豆イソフラボンが含まれている。大豆イソフラボンに対する腸管の吸収は投与量依存性を示し、しかも腸管微生物の分解能力とも関係がある。アグリコン及びその代謝産物の微粒は大部分が脂溶性で、その他の脂溶性の栄養物質分子の吸収経路と同じく、まず腸上皮でchylomicronの形成に関与し、リンパに入ってから血液に入り、各組織へと分布する。動物やヒトの血液、尿中から検出できるイソフラボンは、主にゲニステイン、ダイゼイン、エクオール、O-DMAであり、その血液及び尿中の濃度は、それぞれの地域における人群の摂取した前駆体化合物の含有量の違いによって比較的大きな差があり、さらに腎機能とも関係があって、腎不全患者は、尿中イソフラボンの排泄量も減少している。一般的な飲食状況の下では、成人の血漿ゲニステインとダイゼインの濃度は<40n mol・L-1である。しかし、アジアの日本とヨーロッパのフィンランドの男性の比較から、日本男性の血漿イソフラボンの含有量はフィンランド男性より明らかに高く、フィンランド男性の7~110倍に達し、一部の人々は2.4μmol・L-1にも達していることがわかった。これはアジア人とヨーロッパ人の食物構造の違いを反映しており、植物性食品、とりわけ豆製品の摂取量が高いアジア人は比較的高い大豆イソフラボンの血液含有量を示している。ある学者がラットを利用して、ゲニステインの体内における分布の薬物代謝動態学について分析を行ったところ、結果は雌性・雄性動物のゲニステイン排出の半減期には明らかな差があり、雌性動物の半減期は雄性動物より長いことを示していた。一方、内分泌反応組織である脳、肝臓、乳腺、卵巣、前立腺、睾丸、甲状腺、子宮のゲニステイン濃度は、明らかな投与量依存性を示していた。大豆イソフラボンの代謝プロセスにおいて、肝臓はきわめて重要な作用を果たしている。動物実験が示しているように、肝臓において、フラボノイド類化合物の-OH基はグルクロン酸、硫酸と結合することができ、また脱メチル化等の反応が発生する可能性もある。一般的に言って、大豆イソフラボンアグリコンを摂取後5~6時間で、血液中の濃度はピークに達し、血液中における半減期は6~8時間である。大豆イソフラボンの様々なタイプの薬物動態代謝学には明らかな差があり、等モルのゲニステインとダイゼインを摂取した場合、血液中のゲニステインが維持する濃度はダイゼインよりも高くなる。動物実験において、ゲニステインを投与すると2時間後に血中濃度はピークに達し、一方、ゲニステイン‐グルコシドを投与すると、血中ゲニステイン濃度は8時間でピークに達する。人体実験によれば、毎日45gの大豆食品を食べると、血中ゲニステイン濃度は120~148ng・ml-1に、ダイゼイン濃度は64~75 ng・ml-1にも達するが、一方、対照グループはそれぞれわずか13.3~38.4 ng・ml-1、1.4~5.6 ng・ml-1にすぎず、当該投与量の下での尿中イソフラボン類物質が26μmol・L-1であるのに対し、対照グループはわずか0.75μmol・L-1で、その差は約35倍であった。毎日の摂取量が0~20gのとき、ヒト尿中のイソフラボン類産物の排泄は投与量反応関係を示し、しかもカバー範囲が比較的広く、一つの良好な生物監測指標となっている。大豆食品消費人群の細胞中のイソフラボン有効濃度または作用レベルは、必ず考慮すべき一つの重要な要素である。ある研究報告では、大豆成分の食事を摂っている者の血漿中のゲニステイン濃度は約1~5μmol・L-1であった。ある推計によると、毎日35gの大豆またはその製品を食べると、約50μgのゲニステインを吸収し、体液バランス濃度は3.3μmol・L-1である。完全に吸収された場合、最大血漿濃度は23μmol・L-1にも達する。その有効作用濃度の20%として計算すると、ゲニステインのID50は13.2μmol・L-1を上回るとみられる。実験から、大豆イソフラボンは内因性エストロゲン受容体と結合すること、主にエストロゲン受容体のβ-亜型と結合することが明らかであるが、これは生物学的意義の生み出される基盤である可能性がある。

3. 大豆イソフラボンの抗がん及び神経調節機能

 多くの実験から明らかなように、大豆イソフラボンはヒト生体及び動物生体に対し広い生理学・薬理学的作用を有している。ヒトに対する生理学・薬理学的作用について言えば、図4に示すようなターゲット器官を通じて、抗腫瘍、心血管防護、骨粗鬆予防、神経保護及び神経退行性疾患予防作用、腎臓保護、女性の更年期障害予防、抗菌消炎などの方面で広い生物医学的作用を発揮する。紙幅に限りがあるため、ここでは大豆イソフラボンの抗腫瘍及び神経保護、神経退行性疾患予防の二つの方面の研究についてのみ紹介を行う。

図4

図4 大豆イソフラボンの人体内における可能なターゲットの概略図

3.1 抗腫瘍作用

3.1.1 疫学調査

 東洋・西洋諸国の腫瘍発病率には明らかな差があり、例えば、アメリカ人の乳がん及び前立腺がんの発病率は東南アジア人の4~10倍に達し、特にアジア移民第一世代では依然として低い発病率が保たれているのに対し、移民第二世代における発病率は著しく高くなっている。これらは長きにわたり、多くの研究者の関心を集めてきた。これまでずっと、アジアの人々の飲食の特徴は、総脂肪及び飽和脂肪の含有量が低めで、食事の繊維含有量が高めであることだとされてきた。近年のいくつかの研究からわかったのは、アジア諸国の人々の大豆製品の一人当たり消費量は西側先進諸国の20~50倍に上り、西洋の伝統的飲食には一般に大豆製品が含まれておらず、大豆イソフラボンがほぼ完全に欠けているということであった。この現象は、人々の生活習慣と食物要因が腫瘍の発生に対し重要な影響を与えていることを示している。研究者はこの疾患発生率の差について病因学調査を行ったが、その結果は驚くべきもので、乳がん、前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、肺がん等を含む各種がんの発生率は、すべて大豆の摂取と負の相関を示していた。乳がん患者501名と対照個体594名について調査した学者は、青年期と成人後に大量の大豆食品を摂取した人群は、乳がんの発病率がその他の人群よりずっと低いということを発見した。一方、ハワイに暮らす6860名の女性について食事と乳がんの病例研究を行った結果では、豆腐の摂取量と乳がんの発病は負の相関を示していた。シンガポールで暮らす中国人女性の食事と乳がんに関する別の学者の病例研究の結果は、大豆が乳がんの発生に対し著しい予防作用を有していることを明らかに示していた。また、ハワイで暮らす7999名の日系男性について18~21年間にわたる調査研究を行ったところ、豆腐の摂取レベルと前立腺がん発病率の低下は投与量依存関係を示していることがわかった。直腸がん患者65例に対する病例研究からは、豆製品を毎週1~2回摂取している人群は、飲食中に豆類食品が含まれていない人群と比べて、直腸がんの発病率が著しく低下していることが発見された。豆製品の抗腫瘍作用は一般に、そこに含まれる低メチオニン、高フィチン酸、サポニン、ステロール、イソフラボンによるもので、なかでも大豆イソフラボンの抗がん効果が主要なものであると考えられている。上海で、ある学者が60名の乳腺患者と対照個体の尿液中のイソフラボン含有量を測定したところ、大豆イソフラボンの高摂取と乳がんの低発生率には関係があることを示していた。

3.1.2 動物実験

 大豆イソフラボンの抗がんに関する動物実験の比較的早期の報告は1980年になされており、ある学者が動物実験において大豆製品を加えたところ、X線の誘発するラット乳がんの発病率を下げることができたとしている。近年は、大豆イソフラボンの抗がん作用に関する動物実験研究がすでに大量に報告されているが、それらの結果は、大豆を含有する飼料で動物を飼育すると腫瘍の発生率が下げられることを示している。ある研究は、N-メチルニトロソウレア及び7,12-ジメチルベンズアントラセンを用いて乳がんモデルSDラットを作り上げ、そのうえで分離大豆タンパク質を含んだ飼料と大豆を含んでいない飼料でそれぞれ飼育したが、結果は、飼育していたSPIグループのラットは乳がんのエストロゲン受容体の数が明らかに減少し、潜伏期間が延びたことを示していた。その後の実験の中で、大豆イソフラボンを取り除いた豆製品は乳がんの発生数に対し影響がないことがさらに実証されたが、これは乳がんに対する大豆たんぱく質の抑制作用がホルモンに媒介されている可能性があり、中でも大豆イソフラボンがその抗がんの主要成分であるということを示している。直接大豆イソフラボンによって行った実験がさらに実証しているように、さまざまな濃度の大豆イソフラボンを含む食物でラットを飼育すると、ゲニステインとダイゼインは乳がん細胞の潜伏期間を著しく延ばし、腫瘍の発生率を下げ、腫瘍の発生数を減らすことがわかった。報告によれば、1,2-ジメチルヒドラジンを利用して確立したWistarラットの結腸癌モデルの研究から、大豆イソフラボンは大腸がんの前がん病変の進行を明らかに抑制し、すなわち大腸の異常な細胞集団の発生数を減少させることがわかった。別の研究は、大豆を豊富に含む食品はジエチルスチルベストロールの誘発する幼ラット前立腺の発育異常を抑制し、前立腺自発性腫瘍の潜伏期間を明らかに延長し、さらに前立腺がんの発生率を減らすことを明らかにした。さらなる研究では、大豆イソフラボンを取り除いた豆製品にはこれらの作用がないことが実証された。現有の動物実験資料は、肝がん、皮膚がん、胃がん等といったその他のがんについても研究を行っており、大部分の資料は大豆イソフラボンが比較的優れた抗がん作用を具えていることを示し、特にゲニステインは人々の関心を集めている。ゲニステイン純品で行った発がん動物モデルの研究が明らかにしたところによれば、ゲニステインは大豆中の有効な制がん成分の一つであり、例えば、発がん物質の誘発する前がん病変の生物学的指標である異常な直腸の嚢胞形成を抑制し、DMBA-TPAの誘発する皮膚がんの発病率、腫瘍の数と腫瘍の大きさを抑え、DMBAの誘発する乳がんの発病率、数、大きさを減らし、潜伏期間を延長する。

3.1.3 in vitro 実験

 大豆イソフラボンは乳がん、胃がん、肝がん、白血病及びその他のいくつかのがん細胞系の成長、増殖に対し、いずれも抑制作用を有している。ある実験が示しているように、大豆イソフラボンはヒト胃がん細胞HGC-27の増殖を抑え、細胞をG2/M期に停止させる。別の研究によれば、大豆イソフラボンはヒト骨髄性白血病細胞K562の成長を抑制するだけでなく、K562の赤血球系への分化を誘導する。さらに、大豆イソフラボンは、マウス白血病ウィルス及び組換えのSV40レトロウィルスがコ・トランスフェクトしたマウス巨核芽細胞の成長増殖を抑制するだけでなく、その分化を誘導することが発見された。ある学者は比較を通じて、トリヒドロキシイソフラボンによる白血病細胞の成長抑制は、固形腫瘍細胞系からの抑制より有効であることを発見した。このほかさらに、大豆イソフラボンはヒトリンパ性白血病細胞MOLT-4、神経芽細胞、横紋筋肉腫細胞、ユーイング肉腫細胞など、腫瘍細胞の成長を抑制し、マウス乳房腫瘍の形成を抑制し、ヒト食道がんのヌードマウス移植腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する。同時に、ゲニステインはH460肺小細胞がんの増殖を抑え、また投与量依存関係を示すということがわかった。ヒト前立腺がん細胞PC3及びLNCaPについての研究から、ゲニステインは細胞をG2/M期に停止させ、またp21WAF1遺伝子をアップレギュレートし、cyclinBをダウンレギュレートすることにより、前立腺がん細胞のアポトーシス発生を誘導することが発見された。一方、MTT法、コロニー形成試験、透過型電子顕微鏡、フローサイトメトリーといった方法を利用し、in vitro培養を行ったヒト胃がんSGC-7901細胞に対するゲニステインの抑制及び細胞アポトーシスの発生誘導作用について観察したところ、その結果も、ゲニステインはヒト胃がん細胞のin vitro増殖に対して抑制作用を有し、しかも投与量の増加にしたがって、抑制作用が強まることを示していた。つまり、in vitro細胞系及び転化細胞培養についての研究は、大豆イソフラボンが抗がん作用を具えていることをさらに示したのである。

3.1.4 抗がん作用のメカニズム研究

 大豆イソフラボンの抗がん作用のメカニズムは以下の要因、すなわち、性ホルモン作用調節、チロシンプロテインキナーゼ活性の抑制、トポイソメラーゼ活性の抑制、抗酸化作用、がん細胞アポトーシスの誘発、薬効増加などと関わっている可能性がある。

①エストロゲンと抗エストロゲン様作用:

 大豆イソフラボンはエストロゲン類ステロールと密接な関係のある一組のフラボノイド類物質で、今日、この種の似通った構造は、イソフラボン類化合物の弱エストロゲン活性という生物学的効果を説明し得るものと考えられている。多くの報告が実証しているように、大豆イソフラボンはエストロゲン受容体と結合し、またエストロゲン様活性を呈する。研究が深まるにつれ、遺伝子レベルからわかったことは、ゲニステインとダイゼインはともにヒトエストロゲン受容体遺伝子の転写活性を刺激するとともに、エストロゲン受容体上のエストラジオール結合部位と競争的に結合し、細胞中のエストロンの17-β-エストラジオールへの転化を増やすことができるということである。in vitro研究において、ゲニステインとダイゼインはともにがん細胞の増殖を著しく抑制し、性ホルモン結合グロブリンの合成を促進する。性ホルモンとグロブリンの結合は血漿ホルモンの生物学的作用を調節することができ、その結合量の増加は性ホルモンの相対濃度を低下させるため、エストロゲンの細胞増殖促進活性を弱めることができ、それにより性ホルモンに関連のあるがんの発病リスクを減少させる。現在のいくつかの実験資料はこの見解を支持している。ある報告によれば、ホルモン関連のがんのリスクが比較的低い菜食主義者においては、血漿ホルモン結合グロブリンが比較的高い。また、ゲニステインは前立腺がん細胞中のウリジン2リン酸グルクロン酸トランスフェラーゼの活性を高め、テストステロン等のステロイドホルモンを極性をもつ誘導体に転化させ、その不活化と組織排除を増やし、テストステロン含有量を低下させることにより、前立腺がんの増殖を抑制することができる。

②抗酸化酵素活性の増加:

 活性酸素の産生、特に免疫細胞の活性化による活性酸素は、がんの発生過程において作用を果たすと一貫して考えられてきた。特に発がん促進段階では、発がんプロモーターの働きにより、細胞に大量の活性酸素フリーラジカルが発生するため、細胞DNA、RNA、タンパク質など生体高分子の酸化的ストレス損傷が引き起こされ、細胞の突然変異とがん化の発生を招くことになる。ゲニステインには5,7,4の三つのフェノール水酸基、ダイゼインには7,4の二つのフェノール水酸基が含まれており、フェノール水酸基は酸素供給体としてフリーラジカルと反応し、これを相応のイオンまたは分子にし、フリーラジカルを消去し、フリーラジカルの連鎖反応を終わらせることができる。そのため、大豆イソフラボンは腫瘍細胞と免疫系細胞の活性酸素の含有量を減らすことができる。ある資料は、大豆イソフラボンはROSの産生に対して直接的抑制作用を有するだけでなく、高レベルROS要因の産生の誘導を抑えることによって、間接的抑制作用を発揮することを明らかにしている。また、ある研究では、大豆イソフラボンは発がんプロモーター12-0-テトラデカノイルホルボール13-アセタートの誘導する中性多形核白血球及びHL-60細胞のH2O2の生成を著しく抑制するとともに、HL-60細胞中のスーパーオキシドアニオンラジカルの産生を中程度抑制するということがわかった。一方、アドリアマイシンを投与したマウス過酸化モデルに対する大豆イソフラボン内服の実験によれば、大豆イソフラボンを内服すると、赤血球、肝細胞、心筋のスーパーオキサイド ディスムターゼの活性が著しく高まり、過酸化脂質のレベルが著しく低下し、心筋のグルタチオンペルオキシダーゼと肝臓の還元型グルタチオンが増加することが明らかであった。別の研究からは、ゲニステインとダイゼインはいずれも、紫外線の引き起こす8-OHdG-DNA分子の酸化ストレス損傷のマーカー分子の形成を取り除き、紫外線のもたらす子牛胸腺DNAの損傷を抑制することが明らかになり、大豆イソフラボンがDNAを保護し酸化攻撃を防ぐ作用を持っていることがわかった。発がんプロモーターの誘発プロセスにおける活性酸素の付随的産生からすると、大豆イソフラボン自身の抗酸化特性及びそれが誘導する生体の抗酸化酵素の活性上昇の作用は、その重要な抗がんメカニズムの一つではないかと考えられる。

③チロシンプロテインキナーゼ(PTK)の活性抑制:

 PTKは成長因子の受容体の一つであり、細胞の有糸分裂促進シグナルの伝達過程において重要な役割を果たす。ひとたびこの受容体の活性が抑制されると、有糸分裂促進シグナルの伝達に影響を与え、それによって細胞の成長増殖を抑制する。1987年にAkiyamaが、ゲニステインが一つの専一かつ強力なPTK活性抑制剤であることを報告して以来、この分野の研究報告が激増し、ゲニステインはin vitroでさまざまなRTKの活性を抑制でき、例えば、c-src、v-abl及び表皮成長因子受容体PTKは、その半数の有効濃度値がそれぞれ7.4、22.2、2.6μmol・L-1であることが実証された。この抑制過程はATPとの競争的抑制及びタンパク質基板と非競争性を呈する抑制という二つの方面に表れている。興味深いのは、ゲニステインはすべてのPTKの活性を同等に抑制するわけではなく、P94、PTKなどは全く抑制を受けないことであり、これはゲニステインもPTKの種類に対しては選択性を有していることを示している。PTKの活性と表皮成長因子、インシュリン、インシュリン様成長因子-I、血小板由来成長因子、単球マクロファージ成長因子の細胞受容体は互いに関連している。成長因子とその細胞膜受容体の結合は、細胞の成長と分化にとり必須のものである。ひとたび結合が発生すると、これらの受容体は一連の複雑な細胞質と細胞核の事象、例えば、タンパク質リン酸化、酵素活性化、二次メッセンジャー産生、核内早期遺伝転写などを発動させる。非腫瘍細胞において、PTKカスケードは強い制御を受けているが、しかし、細胞が損なわれるとPTKの活性の高まりを引き起こし、さらに正常な細胞を制御不能な腫瘍細胞に転化させる可能性がある。ゲニステインはin vitroでのPTK活性の一つの専一的抑制剤であることから、ゲニステインが成長因子受容体PTKの活性を抑制することを通じて抗がん作用を発揮している可能性があることは想像にかたくない。ある実験によれば、ゲニステインは肝細胞成長因子と上皮細胞因子受容体のいずれに対しても作用のあることが明らかだが、上皮細胞成長因子受容体はチロシンキナーゼ活性を具えた一種の膜貫通型糖タンパク質であり、多くの腫瘍の表面にECFRの高発現が認められる。ゲニステインはECFRの引き起こす受容体のリン酸化とがん細胞の増殖を阻止し、それによりそのがん細胞の成長を抑制する。肝細胞成長因子は拡散性因子とも呼ばれるが、これはチロシンキナーゼ細胞表面受容体の配位子であり、がん原遺伝子METを通じて発現し、ゲニステインはHCFの誘導する粘着作用を遮り、投与量依存性を示す。別の研究によれば、大豆イソフラボンは乳がん細胞TGFβ、TGFβ2及びその受容体の発現を促進することができる。ゲニステインの成長抑制という性質は、細胞内のいくつかの重要なPTKの活性化抑制を引き起こす可能性がある。だが、実験によってこの仮説を検証してみると、ゲニステインは決してDU-145前立腺がん細胞表皮成長因子受容体の自動リン酸化及びそのあとの活性化を阻止できるわけではないということがわかった。ゲニステインの濃度がすでにEGFの刺激するがん細胞の成長を著しく抑えている時も、依然としてEGF-Rチロシンのリン酸化プロセスを抑えることはできない。ゲニステインのEGFR活性に対する作用とその抗がん作用の間に現れる偏差は、それが決して腫瘍細胞成長因子受容体の活性化を抑えているのではなく、シグナル伝達カスケードの下流のあるターゲット部位を抑えているのかもしれないということを示している。したがって、ゲニステインの細胞PTKに対する作用は実際のところ非常に複雑で、シグナル伝達経路におけるその作用メカニズムを解明する必要があり、今後の研究の中で、ゲニステイン及び他のイソフラボン成分のあらゆる濃度範囲時における酵素活性に対する作用、特に、生体ターゲット器官由来の正常な、非転化細胞系に対するゲニステインの作用を明らかにすることが必要である。

④トポイソメラーゼⅡの活性抑制:

 トポイソメラーゼⅡはDNAの複製、転写、細胞有糸分裂のプロセスに関与しており、この酵素が抑制を受けると、細胞の分裂増殖に影響を与える可能性がある。ある実証報告によれば、ゲニステインはin vitroでトポイソメラーゼの活性を抑制し、そのIC50値は111μmol・mL-1前後である。ゲニステインには11.1μmol・mL-1まで低くなった濃度においてもこの酵素に対し微弱な抑制が認められるが、酵素に対し完全な抑制を行うには、ゲニステイン濃度を>185μmol・mL-1にする必要がある。in vitroでの研究から、ゲニステインはDNA二重鎖挿入剤ではなく、それは安定したDNA-トポイソメラーゼⅡ複合体を通じて酵素活性を抑制し、それによりDNA単鎖または二重鎖の断裂をもたらして、二度と連結できなくし、さらには細胞の成長抑制や死を引き起こすことがわかった。だが、別の報告によれば、大豆イソフラボンが腫瘍細胞の増殖を抑制するIC50値である時に、ほとんどDNAの損傷が観察されないことは、その抑制とトポイソメラーゼⅡの活性に関わりがないことを示しており、この現象は大豆イソフラボンの抑制するトポイソメラーゼⅡが誘発するDNA損傷の程度が軽すぎて、検出できないせいである可能性もあるが、しかしこのようなDNAの軽微な損傷は細胞の成長増殖にとり、かえって非常に重要なものであり、ゲニステインはpBR322プラスミドDNA中において特徴的切断モデルを引き起こし、しかもその他のトポイソメラーゼ抑制剤とは異なっているのである。報告によれば、ヒトJurkat及マウスP388白血病細胞において、ゲニステインが媒介する細胞毒性とG2期停止の作用ターゲットはトポイソメラーゼⅡであって、チロシンキナーゼではない。これからわかるように、ゲニステインはトポイソメラーゼⅡの活性を抑制することにより、いくつかのタイプのがん細胞の成長を抑制するのである。

⑤がん細胞アポトーシスの誘導:

 大豆イソフラボンはin vitro培養細胞の細胞周期に対し干渉作用を有している。イソフラボン濃度の高さによって細胞に対する作用は異なり、低投与量は細胞周期をG2/M期に停止させ、一方、高投与量の時はS期の進行を妨げるとともに、プログラム細胞死を誘発する。胃がん細胞系の研究においても、ゲニステインは低めの濃度の時に細胞の成長抑制作用を呈し、高めの濃度の時には細胞毒性作用を示し、かつ細胞アポトーシスの発生が観察できることが実証された。一方、大豆イソフラボンがヒト食道がんのヌードマウス移植腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することに関する研究によれば、大豆イソフラボンは主に腫瘍細胞bcl-2の発現をダウンレギュレートさせ、同時にbaxの発現をアップレギュレートさせる。別の実験は、大豆イソフラボンはin vitroで培養したヒト胃がん細胞株SGC-7901の成長を抑制し、細胞をアポトーシスさせ、その抑制作用はそれが細胞周期の進展を阻止することと関係があり、しかもこの作用を発揮する単体は主にゲニステインであることを明らかにした。別の実験によれば、ゲニステインはヒト乳がん細胞MCF-7の増殖に対する影響には二相効果があり、低投与量はMCF-7細胞に対し成長促進作用があるのに対し、高投与量はその増殖を抑え、また投与量依存関係を示すということ明らかである。また、ゲニステインはH460肺小細胞がんの増殖を抑制できるとともに、投与量依存関係を示し、細胞をG2/M期に停止させるということがわかり、同時に、ゲニステインは細胞p21WAF1遺伝子のアップレギュレートにより、DNAの典型的アポトーシス勾配の形成をもたらすことがわかった。ヒト前立腺がん細胞PC3及びLNCaPについての研究によれば、ゲニステインは細胞をG2/M期に停止させるとともに、p21WAF1遺伝子をアップレギュレートし、cyclinBをダウンレギュレートすることにより、前立腺がん細胞のアポトーシス発生を誘導することが明らかである。ある学者は比較を行うことによって、ゲニステインによる白血病細胞の成長抑制は、固形腫瘍の細胞系からの抑制よりも有効であることを発見した。これは、大豆イソフラボンによる細胞アポトーシス・シグナル伝達経路の活性化が、抗がんの一つのメカニズムであるかもしれないことを示している。大豆イソフラボンの細胞毒性は通常の抗がん剤よりずっと低いが、抗がん剤と併用した場合、両者は相乗効果を生み、腫瘍細胞内の薬物濃度を上げ、薬物の抗がん作用を高める。薬剤耐性がん細胞系を用いた研究から、ゲニステインは細胞内のATP濃度を下げることによって、腫瘍細胞の薬物輸送活性を著しく抑制し、腫瘍細胞内の薬物濃度を上げ、薬物の治療効果を高めることがわかった。一方、リン酸化糖タンパク質が媒介する別の薬剤耐性K562/TPA細胞系は、その細胞内の薬物濃度が下がるわけではないが、抗がん剤アドリアマイシンの細胞核内への進入を阻み、ゲニステインを用いて処理すると、細胞核内の抗がん薬物濃度を大幅に増やして、DNA鎖の断裂増加を引き起こし、薬効が高まるということがわかった。

⑥血管形成の抑制:

 正常な条件下において、血管形成は一つの厳格な制御と自己限定的なプロセスである。多くの疾患状態の下では血管形成の制御不能がみられ、例えば腫瘍の成長と転移には、血管新生による栄養の提供が必要である。現在、持続的、病理的な血管形成のメカニズムはまだ解明されていないが、病理的な血管形成は血管形成因子と抑制因子のアンバランスの結果である。大豆イソフラボンは血管形成を効果的に抑制し、それは内皮細胞の増殖と血管形成を抑制し、IC50値はそれぞれ5μmol・L-1 と150μmol・L-1である。前で言及したように、大豆イソフラボンはPTK活性を抑制し、そのため表皮成長因子と血小板誘導体成長因子受容体のPTK活性を抑制することを通じて、内皮細胞の成長と新血管の形成を抑制する作用を生み出す。また、トポイソメラーゼⅠ・Ⅱは、転写、複製、連結、染色体の有糸分裂など、さまざまな核内事象に関与していることから、大豆イソフラボンによる内皮細胞増殖及び血管形成の抑制は、そのトポイソメラーゼⅠ・Ⅱの活性抑制と関係があると推測している者もいる。

⑦その他:

 大豆イソフラボンは生体の非特異的免疫及び特異的免疫の機能を高める。大投与量のダイゼインはマウスの免疫機能―胸腺重量の増加、単核細胞の活性増強、脾臓IgMの仲介する抗ヒツジ血液細胞反応の増強、Tリンパ球比率の増加、T細胞及びNK細胞の活性向上などを含む―を強める。in vitroで培養した脾臓リンパ球の試験において、大豆イソフラボンはコンカナバリンAまたはリポ多糖の誘導する脾臓リンパ球の増殖反応を著しく高めることがわかり、酵素結合免疫測定から、大豆イソフラボンはさらにコンカナバリンAを促して、Tリンパ球によるインターロイキン-2とインターロイキン-3の産生を誘導させることを発見した。インターロイキン-2はリンパ球の増殖過程において中心的役割を果たし、リンパ球の成長を刺激・擁護し、最終的にリンパ球の分化と増殖をもたらして、免疫自体の安定を守り、インターロイキン-3は各種血液細胞の増殖を刺激する。

 近年、有糸分裂シグナルの細胞膜成長因子受容体から細胞核への伝達については、すでに一定の理解がなされている。成長因子と細胞膜表面の受容体との結合は細胞の成長と分化にとって必須であり、細胞質と細胞核の一連の事象、例えば、タンパク質リン酸化、一部酵素の活性化、第二メッセンジャーの産生、核早中期遺伝子の転写などを引き起こす。細胞分裂には成長因子受容体から始まる何本かの分岐シグナル伝達経路の協同作用が必要であり、したがって、これらの信号伝達経路内に存在するどのタンパク質も、ゲニステインの作用のターゲット部位となる可能性がある。例えば、Grb2-mSos複合体は成長因子受容体のリン酸化したチロシン尾部と結合すると、GTPをGDPに転化してRasタンパク質を活性化し、しかる後にRafタンパク質を活性化し、Rafキナーゼは最終的にマイトジェン活性化プロテインキナーゼを活性化し、有糸分裂因子をリン酸化させ、あるいはチロシン及びトレオニン残基の上でマイトジェン活性化プロテインキナーゼを活性化し、それによって転写因子、p90RSK及びホスホリパーゼA等の活性化をもたらす。さらに例えば、ホスホリパーゼは、ホスファチジルイノシトール2リン酸を3ホスファチジルイノシトールとジアシルグリセロールに加水分解するが、これは細胞間のCa2+を増やすとともに、PKCを活性化することになり、Ca2+の増加は多くの依存酵素の活性化をもたらす。だが、ゲニステインの上記のGrb2-mSos、Ras、Raf、MAPK、PLCγといったタンパク質に対する抑制には、いずれも比較的高い濃度が必要であり、生理学的投与量をはるかに超えている。これは培養した腫瘍細胞中の大多数の鋭敏なゲニステイン作用部位が、特異な生化学物質によって覆われ、そのためにIC50値が高くなっていることを物語っている。

3.2 神経保護及び神経退行性疾患予防作用

 中年の人々の豆腐摂取量と脳老化、知力損傷の関係を調査したある研究によれば、豆腐の長期にわたる摂取は老人の知力を保護し、脳の萎縮を軽減する独立した要因であることが明らかである。アルツハイマー病は今日最もよく見られる一種の認知症であり、閉経後の女性がハイリスク人群である。医学的研究は、コリン作動神経のヒトの認知及び記憶プロセスにおける作用は非常に重要であり、この疾患とコリンアセチルトランスファーゼの活性及びコリン作動神経の減少は密接に関わっていることを明らかに示している。ある研究資料によれば、老人性認知症または関連の認知症にかかっている45歳以上の閉経期の女性に、毎日50~150mgの大豆イソフラボンを投与したところ、病状の進行を抑えたり症状を取り除いたりすることができたという。別の学者は学生ボランティアへのテストによって、大豆イソフラボンの服用が短期的・長期的記憶能力を著しく改善することを発見した。別の実験ではランダム化二重盲験法を採用して、51~65歳のホルモン代替療法を受けたことのない33名の閉経女性に対し、大豆添加剤カプセルまたはプラシーボを毎日2回使用し、投薬開始前と12週間投薬後にそれぞれ記憶テストを行ったところ、大豆添加剤を服用した女性は記憶能力と大脳前頭葉の機能が明らかに向上していた。最近の研究資料は、大豆イソフラボンは高原移住人群の視聴覚認知機能に対し明らかな改善作用があることを示している。動物実験によれば、大豆イソフラボンは内因性エストロゲンの不足している中年雌マウスの前頭葉皮質内において、アゴニストとしてChATmRNAを効果的にアップレギュレートする。大脳内には2種類のエストロゲン受容体亜型、すなわちERaとERβが存在しており、ERβは大脳内に分布している主要な亜型である。ゲニステインはERβに対する親和力が比較的大きいことから、大豆イソフラボンの女性若年性認知症予防作用のために分子基盤を提供している。ある者は大豆イソフラボンの脳保健作用について3年間にわたる動物実験を行ったが、その結果、ヒトと非常に近い霊長類動物のアカゲザルに長期間大豆を摂食させたところ、アルツハイマー病がほとんど発生しなかった。別の実験によれば、ラットに高植物エストロゲン食物と低植物エストロゲン食物をそれぞれ与えたところ、高植物エストロゲングループの雌ラットは水迷路試験においてすばやくプラットフォームを見つけ、低植物エストロゲングループと著しい差があったが、これは植物エストロゲンがラットの空間記憶能力を改善することを示している。別の研究資料によれば、大豆イソフラボンはラットの卵巣摘出により低下した空間記憶能力を逆転させた。当研究室の最近の研究ではさらに、大豆イソフラボンは高血脂及びアルミニウム曝露によるマウスの空間記憶能力の低下を逆転させられるということがわかった。別の研究はまた、ダイジンとアグリコンはスコポラミン及びD-ガラクトースによって損傷した記憶能力を部分的に逆転させることを示している。その作用メカニズムについて、ある研究は、大豆イソフラボンの雌ラット前脳皮質及び海馬領域のアセチルコリントランスフェラーゼ及び神経成長因子mRNAに対する作用を明らかにした。一方、高血脂及びアルミニウム曝露マウスについての我々の研究によれば、大豆イソフラボンはその抗酸化能力を高め、同時に脳組織のアセチルコリン代謝とアミノ酸類神経伝達物質を調節することにより、血脂及びアルミニウム曝露による記憶能力の低下を逆転させる。別の実験は、食物中の植物エストロゲンのラット大脳に対する作用について研究を行い、与える飼料を植物エストロゲン高含有量と低含有量の2種類に分け、実験でラット血漿中の総イソフラボン濃度を測定したところ、高含有量グループのラットのイソフラボン濃度は低含有量グループより著しく高く、それぞれアジア人と西洋人群の血漿イソフラボン濃度とほぼ同じであった。同時に、さらに脳内イソフラボンレベルを測定して、大豆イソフラボン分子が血液脳関門を通じて大脳に入るかどうかを確認したところ、高含有量グループ・ラットの視床下部内側基底核及び小脳部位の大豆イソフラボンレベルは低含有量グループの8~9倍に上り、前頭葉皮質領域では50倍にも達していた。小脳及び前頭葉皮質領域はERβを豊富に含み、また大豆イソフラボンはERβに対しより高い親和力を有しているため、脳内に入った大豆イソフラボンはERβを通じてERβを豊富に含む領域に集積し、学習記憶と関わっている可能性がある。最近の研究によれば、大豆イソフラボンはAβの媒介する神経毒性に効果的に拮抗し、AβがもたらすADラットの海馬ニューロンの喪失を減らすとともに、N-メチル-D-アスパラギン酸2B受容体亜型の発現を促進し、記憶機能を改善する。実験はさらに、血漿中の高イソフラボンレベルは、脳内の構造、形態、機能に影響を与え、動物の行動に対する観察から、その学習記憶能力に影響を与えることを実証し、大脳が大豆イソフラボンの作用のターゲット部位の一つであることをさらに証明した。

 また、ゲニステインは筋萎縮性側索硬化症の治療において一定の効果があることがわかっている。筋萎縮性側索硬化症は一種の神経退行性疾患で、明らかな性別による差(男女比2:1)があり、病変は広く皮質、脳幹、脊髄にまで及ぶ。ゲニステインを用いて側索硬化症のモデル動物を処理したところ、雄性動物の疾患の進行を効果的に食い止められたのに対し、雌性動物には著しい治療効果がなく、これはゲニステインが内因性エストロゲンに類似した神経後作用を持っている可能性があることを示している。最近の研究は、ゲニステインにはMPTPで作ったパーキンソン病モデルマウスの黒質DA作動性ニューロンに対し、明らかな保護作用があることを明らかにした。別の研究では、ローズベンガルの静脈注射によって脳虚血性損傷を誘発し、腹腔にゲニステインを注射したところ、小脳の壊死病巣を縮小することができた。トリヒドロキシイソフラボンは雌性・雄性動物いずれに対しても保護作用があるが、雄性動物に対する保護作用のほうがいっそう明らかである。培養したニューロンを採用したin vitro 実験では、大豆イソフラボンはニューロンに対し明らかな抗酸化作用を持っていることが実証された。その抗酸化機能は、大豆イソフラボンが神経を保護できることの一つの重要なメカニズムである可能性がある。別のある研究は、大豆イソフラボンは虚血脳Notch1及びHes1の発現を抑制することにより、神経細胞のアポトーシスを抑制して神経保護作用を果たすことを明らかにした。過量の鉄集積が酸化ストレスを招き、ひいては神経細胞死をもたらすことは、すでに多くの神経退行性疾患において実証されている。大豆イソフラボンはエストロゲン様作用及び抗酸化機能を具えており、したがって、大豆イソフラボンを鉄代謝異常によって引き起こされる神経退行性疾患の予防に用いることには、大きな将来性が見込まれる。

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