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アルファ磁気スペクトロメータ、東南大学にデータ分析拠点設立

中国科技日報     2011年 9月15日

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 米国のスペースシャトル「エンデバー号」が5月16日に打ち上げられると、太平洋を挟んだ中国の東南大学コンピュータ・ソフトウェア学院院長の羅軍舟教授にも緊張が走った。東南大学は「 アルファ磁気スペクトロメータ(AMS-02)」実験プロジェクトの参加部門であり、まもなく建設されるデータ分析センターは今後5年以上に渡り、世界の科学者が宇宙の反物質・暗 黒物質に関するデータを求める一大拠点となる。

 ノーベル物理学賞受賞者、中国系アメリカ人の科学者サミュエル・ティン(中国名は丁肇中)教授は、アルファ磁気スペクトロメータの実験を指導した。同実験は宇宙の起源およびその仕組みと関連するため、世 界各国の科学者が注目する大型の国際的科学実験プロジェクトである。現在のところ、世界15カ国の800名以上の研究者が参加している。

 反物質と暗黒物質はどこにあるのか。理論的には、これらの物質は存在するはずだ。しかし現実の世界において、これらの物質の痕跡をつかむことができていない。科学者はこれまで、高 エネルギー粒子の衝突により反物質の「影」を見つけられることを証明した。ところが現実世界における反物質の存在を証明する有力な証拠が、現在もなお見つかっていない。反 物質ははるか遠くの宇宙に隠れているのではないか。この疑問は現在、素粒子物理学者および宇宙物理学者の注目を集めている。AMS-02が1998年6月2日に打ち上げられると、科 学者は反物質と暗黒物質の粒子を探す途方も無い旅を開始した。

 2002年、サミュエル・ティン教授は東南大学と提携覚書に署名し、同大学にAMSセンターを設立し、アルファ磁気スペクトロメータの実験研究に共同参加することとなった。

 羅軍舟教授によると、東南大学が担当する主な課題は以下の3項目である。

  1. AMS-01を複製する。これをキャンパス内に保管しシミュレーション探索研究を行い、学生を対象に展示し、多くの青少年が宇宙空間物理学の今後の研究に関与できるようにする。
  2. AMS-02の研究と製造に参加する。AMS-02はAMS-01の性能を大きく上回る。科学者は当初、低温超伝導体の使用を計画していたが、さ まざまな原因により最終的に永久磁石を使用することになった。しかし探知機と電子設備の性能の強化に成功した。
  3. データ分析センターを設立する。AMS-02からのデータを保存し分析研究を行い、各種の物質粒子の軌跡・運動量・エネルギーに関する信号を選別する。

 今後3-5年間で、AMS-02からのデータ量は420Tbyteを上回り、20カ国の図書館の蔵書のデータ量に相当することになる。まず米国NASAが国際宇宙ステーションのデータを受信し、欧 州原子核研究機構(CERN)のサミュエル・ティン教授の実験室に送信され、さらに東南大学に新設されたデータ分析センターに送信される。東南大学はこれに向け、専門の保存・分析システムを開発した。世 界各国の科学者たちは、インターネットを通じて同センターに登録し、東南大学が開発したソフト分析システムを通じ、科学研究を行う。

 保存量が500Tbyteを上回り、IPv6次世代インターネット・プロトコルおよび大量のデータ処理分析等を融合させた先進的なデータ処理分析センターは、今年6月より使用開始となり、A MS-02による成果を分析している。