共振吸収型導波路アレイの原理、特性、製作及び利用
2012年1月16日
周 建英(Zhou Jianying):
中山大学光電材料・技術国家重点実験室 教授
1957年12月生まれ。1978年~1982年、華中科技大学卒業(学士。レーザ専攻)。1984年~1988年、英国インペリアル・カレッジ物理学専攻(博士、ポストドクター研究)。1988年~現在、中山大学に勤務。博士研究員(ポストドクター)、講師、副研究員、教授、国家重点実験室主任、理工学院院長等を歴任。主な研究分野:レーザ物理学、情報光子学、3Dディスプレイ技術。SCI刊行物に論文70本以上を発表、SCI収録の引用はのべ300回以上(地震による引用を含まない)。教育部科学技術進歩賞、広東省自然科学賞を各1事業で受賞。国家発明特許1件。香港第1回(1995)求是基金会の「傑出青年学者賞」を受賞。1997年、労働人事部、教育部により「全国優秀留学帰国人員」称号を授与。2005年10月、「全国優秀博士研究員」の称号を授与。
共著者:張木棟、黎永耀、劉憶琨
1. 光子操作とフォトニック結晶
20世紀に入ってから、電子理論と実験の進展により電子技術と情報技術は空前のレベルまで発達した。通信の速度、容量、品質に対するニーズの高まりに伴い、電子特有の性質による限界を受けて、電気・光ネットワークにおける光電気転換速度や処理速度の遅さは情報技術の発展を阻害するボトルネックとなっている。このため、情報の伝達と交換は全光ネットワークに向け転換しつつある。一方、光子に対する操作の実現の面では、集積可能な光子装置中での光場のスイッチ、減速、静止、キャッシュメモリならびに光子エネルギーの高速・高効率転換及び信号処理の実現こそ、全光ネットワーク実現の鍵となる。光子の有効な操作の実現は、光子学の研究テーマの一つである。
フォトニック結晶(Photonic crystals、略称PhC)は、異なる屈折率を持つ媒質が周期配列されることで成立する人工のマイクロ構造であり、光子のバンドギャップ及び欠陥モデルを通じて光子操作が実現でき、光場の正確な制御に有効な伝達媒介を提供する。フォトニック結晶の概念は、1987年のJohn及びYablonovitchがそれぞれ行った報告が起源であり、以降約30年間、マイクロナノ光子学とフォトニック結晶の研究は一連の重要な研究成果を挙げている。例えば、フォトニック結晶のバンドギャップ端に存在する強烈な線形波長分散の利用や、2次元のフォトニック結晶の導波路構造の調節を通じ、低波長分散区間10 nmの範囲内で群速度0.02cの低速光を得ることができる。さらには、例えば非線形効果により生じるフォトニック結晶バンドまたは欠陥モデルの移動、あるいは双安定性、光子態密度の変化等の効果を利用することで全光スイッチを実現できる。一方、フォトニック結晶のさまざまな性質を総合的に利用して、さまざまなフォトニック結晶装置が製作・報告されており、例としては大周波数範囲のフォトニック結晶偏光子、ブロードバンド阻止帯域及び超ナローバンド周波数選択濾波器、分光能力の強いフォトニック結晶超プリズムレンズ、高効率の発光ダイオード、光スイッチ、光導波路、光メモリ及び光子周波数インバータ等、これらフォトニック結晶装置はサイズ及び性能の面で既存の光電気装置より優れる。
2. 共振吸收型フォトニック結晶及び発展の概要
フォトニック結晶は材料特性に基づき、パッシブ型とアクティブ型に分類される。パッシブ型フォトニック結晶の中では、入射電磁波は基質・媒質と共振、分極、吸收またはゲイン等の作用を生じず、誘電率実部を通じて周期的変調を実現するのみである。このような既存のパッシブ型フォトニック結晶と異なり、例えば量子ドット、金属または染料等の構造中のドープ・吸收(ゲイン)性媒質を通じて、屈折率の繰り返し周期的変調を有する機能性アクティブ型フォトニック結晶を得ることができる。このようなアクティブ型フォトニック結晶は、共振型の非線形フォトニック結晶である。
非線形フォトニック結晶は、光の伝達を制御する有效な方法であることがすでに証明されており、関連研究もすでに大きな成果を挙げている。ギャップソリトン(Gap soliton)とは、光の周波数により、周期構造の光子・バンドギャップ中に位置する光パルスが周期構造を突き抜けるときに生じる自局在化状態である。フォトニック結晶の非線形効果とバンドギャップの強烈な群速度と波長分散関係との相互作用により生じるギャップソリトンを利用すれば、超短レーザパルス速度の減速ないし静止を実現できる。しかし、非線形フォトニック結晶において主流となっている研究対象は、非共振的な非線形光学材料Kerr又は二次非線形に集中している。非共振・非線形光学については、非線形光学係数が比較的小さいために大きなレーザ光強度が必要であり、例えばKerr効果では、必要なピーク出力は109~1011W/cm2にも達する。実験では、ブラッグの光ファイバ回折格子中におけるKerr非線形作用とバンドギャップ端面の群速度の波長分散とのバランスを利用したところ、発生したブラッグ回折格子ソリトンはピコ秒光パルスを50%減速させることができた。欠陥のあるブラッグ光ファイバ回折格子の使用やラマンソリトンとギャップソリトンの衝突の利用も、理論上、静止的超短光子ソリトンの存在を予言した。しかし、実験で必要とされた光度の高い(>10 GW/cm2)のポンプ光がこの方法の利用を制限した。
しかし、線形フォトニック結晶中に共振原子を取り入れ、共振した非線形光学材料が生じた場合は、共振が励起された際にさらに大きな非線形係数が生じ、さらに有效な非線形光と物質の相互作用が導かれるため、入射光場の平均出力はμW~mWオーダーとなりうる。共振吸收型フォトニック結晶のこのように強い非線形効果、迅速な応答速度、低い作業閾値等の長所と共振により、非線形プロセスに光場の局在化、光子-原子束縛状態等の一連の現象がもたらされ、光場特性により有効な操作が提供されるため、重要な研究価値がある。共振吸收型ブラッグ反射鏡構造(Resonantly absorbing Bragg reflector, 略称RABR)等の、よく見られる共振吸收型フォトニック結晶は、まさに共振型の非線形フォトニック結晶である。
フォトニック結晶の概念が報告される前に早くも、モード同期レーザに用いられる共振吸收(ゲイン)型周期構造の分布帰還型構造(Distributed Feedback, 略称DFB)は、ある意味で言えばゲイン型のアクティブ型フォトニック結晶として存在した。1986年、MantsyzovとKuzminは1次元の離散型周期性共振媒質中の自己インダクタンスに関する透明化現象を研究したところ、この構造こそがすなわちアクティブ型の共振フォトニック結晶であり、無限に薄い2つのエネルギー準位の原子層が周期的に材料にドープされて形成されることがわかった。その後、特に1987年にフォトニック結晶の概念が発表されて以降は、2つのエネルギー準位の原子層をドープした非線形光子の研究が相次いで実施された。Mantsyzovらの研究を基礎に、Kurizkiの研究グループは共振吸收型ブラッグ反射鏡構造(RABR)を発表した。この構造は、周期配列された非吸收媒質中に共振型の2つのエネルギー準位の原子薄膜層を周期的にドープして形成される(図1のとおり)。KurizkiはRABR中のソリトンの精確な解を求め、かつ、いかなる任意のブラッグに対して光パルスが放射されても、大量の静止・移動のある安定したギャップソリトンが必ず形成され、かつ、対応する解析解があることを見出した。このことは、このようなメカニズムを利用して光メモリが実現できることを意味している。均一媒質中の自己インダクタンス透明化現象と異なり、RABR中で生じるソリトンには任意のパルス面積がある。均一な二次非線形媒質中に存在する安定した明ソリトンは不安定な暗ソリトンと異なり、アクティブな原子層を持つRABR構造は安定した明、暗両ソリトンが同時に存在する初めてのモデルである。これらRABRに関する研究は、基本的にソリトンの解の存在性及びその性質の考察に限定された。
図1 RABR構造イメージ図
白色:共振吸收原子層、灰色と黒色:周期配列の無吸收パッシブ型媒質
一方、超短パルスの共振周期構造中の進化の問題についても広く研究されており、理論上、超短パルスレーザの減速、ストレージ、制御及び解放が実現されている。RABR構造を基礎に、共振増幅型ブラッグ反射鏡構造(Resonantly amplifying Bragg reflector、略称RAmBR)及び双共振吸收型ブラッグ反射鏡(Doubly resonant Bragg reflector、略称DRBR)が発表され、かつ、深く研究されてきた。共振吸收型フォトニック結晶はすでに光装置中で広く採用されているが、RABR構造が共振吸收の2つのエネルギー準位の原子共振中心を必要とするだけでなく、構造周期と入射・波長の3者を互いにマッチングさせる必要があり、かつ、サンプルの製作も難しいため、利用が制限されてきた。
共振吸收型フォトニック結晶は2次元、3次元の共振吸收型フォトニック結晶にまで拡大され、バックフィル技術により、フォトニック結晶の隙間に量子ドットまたは金属材料が埋め込まれて作製される。1次元のRABR等とは構造が異なり、共振吸收型導波路アレイ構造(Resonantly absorbing waveguide array、略称RAWA)、反転非線形結晶格子導波路構造等の2次元の共振光子結晶格子アレイは、光の伝達方向と周期構造配列が平行な導波路アレイであり、図2で示すようにRAWA構造である。共振吸收型導波路アレイの原理、光学特性、サンプルの製作と利用について、以下に説明する。
図2 RAWA構造
黒:共振吸收のアクティブ層、白:無吸收のパッシブ層
3. 共振吸收型導波路アレイ
光学結晶格子に基づく導波路アレイは、光ファイバ結合により形成される1次元の結合導波路アレイに由来し、このモデルはJonesにより1965年に発表されたのが最初である。1988年、Christodoulides及びJosephは非線形効果の導入により、理論上、この種の結合による導波路アレイ中の離散型ソリトン(Discrete soliton)の存在を予言し、かつ、有名な離散型非線形シュレーディンガー方程式(Discrete nonlinear Schroedinger equation、略称DNLSE)を導いた。その後、非線形結合アレイ導波路中の離散型ソリトンの研究は幅広い進展を見せた。特に1998年、EisenbergとSilberbergがGaAsを利用し、作製した導波路アレイ中で離散型ソリトンを見出すと、非線形結合アレイ導波路と離散型ソリトンという研究テーマがさらに注目されるようになった。最近、ある種の光伝達方向と周期構造配列が平行な共振吸收型光子結晶格子アレイが注目されており、これにはRAWAや反転型非線形結晶格子導波路構造等がある。われわれは、この種の共振導波路アレイ構造の研究において一連の重要な理論的成果を挙げており、これにはRAWA構造の線形回折効果、非線形共振導波路アレイの電磁誘導透明化作用下の準離散型ソリトン、反転型非線形結晶格子導波路中の結晶格子ソリトンの連続的な自発的対称性の破れ等が含まれる。実験では、われわれはホログラフィックリソグラフィ技術及びバックフィル技術を利用し、回折光学デバイスを分光デバイスとして結びつけることで、高品質の2次元RAWA構造を作製した。
3.1 共振吸收型導波路アレイの原理と特性
1次元RAWA構造は図2のとおり。図中の黒い部分はアクティブ媒質層を、白い部分は無吸收のバックグラウンド材料を示す。得られた導波路アレイの周期はd = 2.86 um、アクティブ層の厚さはd1 = 0.5d、x方向は周期方向で、z方向は光場伝達方向である。Maxwell方程式で得られる光の1次元RAWA中の伝達は、次の方程式を満たすことができる(1):
式中のk = k0n、nはバックグラウンド媒質の屈折率で、k0は電磁波の真空中の波数である。αはアクティブ媒質の吸收係数であるうえ、吸收線形の仮定はローレンツ分布による。ΔnはKramers-Kronig (K-K)関係により算出された対応する屈折率の実部の変化である。Kramers-Kronig(K-K)関係に基づけば、アクティブ材料の吸收によりその実部の屈折率に変化が生じるため、吸收ピーク両側付近の入射波長に対し、RAWAシステムは屈折率周期分布の導波路システムとなりうる。V(x)は周期変調関数で、黒い部分のアクティブ媒質はV(x) = 1を代表し、白い部分のバックグラウンド媒質はV(x) = 0を代表する。
1次元RAWA中のアクティブ媒質の吸收線型はローレンツ分布であると仮定し、かつλ0は吸收中心とすると、A /B2は吸收係数の最大値で、2Bが線幅であり、以下の式(2)で示される。
シミュレーションにおいては、λ0 = 564 nm、A = 1.3×10-5 um、B = 5×10-3 umを取る。ΑとΔnの対応関係は図3に示すとおりで、共振吸收中心付近では、Δnに劇的な変化があり、RAWAは屈折率に依存した導波路システムとなり、共振吸收中心の両側の入射光波に対し、システムは相応に高い屈折率層を導波層として選択する。
図3 α(実線)とΔn(点線)の対応関係
シミュレーションにおいては、波長λ1 = 554 nmとλ2 = 574 nmのガウスビームをそれぞれ入射した。光波λ1 = 554 nmに対しては、RAWAのアクティブ層Δnはマイナスで、屈折率は減少し、システムはパッシブバックグラウンド層を導波層として選択した(図4(a)のとおり)。一方、光波λ2 = 574 nmに対しては、Δnがプラスのため、RAWAのアクティブ層の屈折率は増大し、システムはアクティブ層を導波層として選択した(図4(b)のとおり)。回折理論に基づけば、回折場の分布は光場のフーリエ変換である。一次回折効率ηは一次回折強度と入射光度との比と定義する。すなわち、λ1 = 564 nmに対しては、Δnは0であるためηはαにより決定される。λ1 = 554 nmとλ2 =574 nmに対しては、ηはαとΔnの両方により決定される。図4(c)で示すとおり、RAWAの厚さの増加に伴い、共振吸收中心では回折ホールバーニングが形成され、かつ、RAWAの厚さの増加に伴い深さが増す。理論シミュレーション結果によれば、ある固定の入射波長から見れば、一次回折効率ηは厚さの増加に伴い最初に増加した後は減少を示し、図4(d)に示すとおりとなる。ピーク値の大きさと位置はαとΔnにより決定される。
図4 1次元RAWA中の光波の伝達
(a)入射波長 λ1 = 554 nm、(b) 入射波長λ2 = 574 nm、
(c)さまざまな厚さでの1次元RAWAの回折効率スペクトル
(d)波長554nm、564nm、574nm時のηはRAWAの厚さに伴い変化
RAWA構造の線形回折効果に関して研究を行う基礎として、われわれはパッシブ媒質中にアクティブな共振多エネルギー原子をドープすると仮定し、かつ、電磁誘導透明化技術(Electromagnetically induced transparency、略称EIT)及びこの技術中の増強された自己カー効果と巨大カー効果を利用して、共振多エネルギー原子システムの共振導波路アレイを作製した。研究の結果、この導波路アレイは弱い光ソリトンの伝達を支持できることがわかった。このほか、測定された光場とエネルギー間の離調周波数の調節を通じ、非線形屈折率が高く光学密度の低い媒体と非線形屈折率が低く光学密度の高い媒体の組み合わせにより、反転非線形結晶格子アレイ導波路を実現することができた。その構造は図5(a)のとおり。このような結晶格子構造の特徴は、結晶格子の屈折率の変調と非線形屈折率の変調が互いに反転し、その結果として結晶格子に線形と非線形効果の競争関係が存在するようになったことである。研究の結果、光場で形成されるソリトンは反転非線形結晶格子アレイ導波路の伝達において敏感な出力依存関係にあるため、線形と非線形の競争によりソリトンには相転移及び自発的対称性の破れが多数回出現することがわかった。われわれは伝達方向上に非均一的にアクティブ原子をドープすると仮定し、さらに特殊な導波路構造を提案した。この導波路の特徴は構造が碁盤に相似する点にある(図5(b)のとおり)。研究の結果、この構造中では一定の閾値の時にソリトンの伝達を支持できることがわかった。特に、入射中心がシステムの対称点を乖離する際、ソリトンは折れ線状に伝達することがわかった。このメカニズムは、すなわち自発的対称性の破れがソリトンに横向きの伝達運動量を生じさせることで、ソリトンが折れ線状の伝達を呈するものである。
図5 (a)反転非線形結晶格子導波路
青:非線形所在区間の導波路、灰色:線形媒質区間の導波路
(b) 碁盤状の導波路構造
黒:アクティブ原子所在区間、白:パッシブ媒質所在区間
3.2 共振吸收型導波路アレイの製作と特徴
2010年、われわれは高品質な回折光学デバイス(Diffractive optical elements、DOE)を分光デバイスとして利用し、ホログラフィックリソグラフィとバックフィル技術を結合させ、レーザ染料ローダミンBをドープした2次元の共振吸收型光子結晶格子アレイを簡単かつスピーディに製作した。これは別称、虚部屈折率光子結晶格子とも呼ばれる。光路中では高品質な回折光学デバイス(DOE)を分光デバイスとして利用し、多数の光束フェーズが制御可能なホログラフィックリソグラフィを実現し、SU-8フォトレジスト上で露出させてRAWAテンプレートを得て、その後テンプレート中のバックフィルレーザ染料からRAWAサンプルを作製する(図6(a))。染料の共振吸收区間においては、K-K関係の影響により、染料をドープした区間と染料をドープしていない区間の間に屈折率差が生じるため、波長がRhB染料の共振吸收区間にある光波は光子結晶格子の変調を感受するが、波長が共振吸收区間から遠く離れている光波から言えば、このサンプルはバルク材料に相当する。
近場共焦点走査型レーザ顕微鏡を利用して調整可能なレーザ光源(Opium Auto 100, Radiants Light S.L.)を結びつけ、われわれは2次元RAWAサンプル出射端における光場分布を測定した。図6(c)(d)は実験で測定した結果であり、対応する理論計算も含まれており、良好な一致効果を示した。図6(b)はこのサンプルの一次回折効率的η、理論シミュレーション値と実験測定値であり、それぞれ点線と実線で示しており、曲線では波長に対する2次元RAWAサンプルの屈折率の依存特性を示している。理論曲線と実験で得られたデータは互いに一致するため、われわれの理論シミュレーションは信頼性が検証されたといえる。曲線から分かるように、RhB吸收材料に対しては、K-K関係による屈折率実部の変化の最大値は吸收ピークの両側にあるため、回折スペクトルのピーク値は染料RhBの吸收ピークから乖離する。サンプルの長さが小さいとき、このような屈折率実部の差もはっきりしないため、サンプルの長さが大きい程、吸收材料の吸收スペクトルに相対した回折スペクトルの乖離も大きくなる。
図6 (a)バックフィルを経た後に形成されたRAWA構造の顕微鏡図
(b) RAWA構造の回折スペクトルの理論シミュレーション(点線)と実験測定(実線)結果
(c)入射波長λ1= 547 nm
(d) λ2 = 581 nmの際の2次元RAWAサンプルの放出端の光場分布。
対応する理論計算結果は挿入図のとおり
3.3 共振吸收型導波路アレイの応用
導波路アレイは重要な研究価値を持つ周期性構造であり、離散回折、異常屈折、光学的ブロッホ振動、ツェナー・トンネル効果、離散または結晶格子ソリトン等の多くの目新しい物理現象がある。既存の導波路アレイはいずれもPPLM、光屈折結晶、液晶等のパッシブ材料から構成されている一方、アクティブ材料はパッシブ材料に比べ豊富な波長分散特性を持つため、光場制御上さらに多くの自由度を提供でき、かつ、強い非線形効果、スピーディな応答速度と低い作動閾値等の長所を持つ。RAWA構造は材料の吸收ピークを乖離する際に構造の均一なバルク材料と同等になる一方、特定波長域と光の強い作用下では光子結晶格子の性質を示すため、この2つの現象は高速の量子情報処理及び光子キャッシュメモリ等の領域で幅広い応用価値がある。一方、光パルスがRAWA中で伝播する際に現れる時空分離特性はバンドパスフィルタ、波長分割多重、全光スイッチ、可変光ディレイライン(Tunable optical delay line)等の光学装置中で潜在的な応用価値があるだろう。このほか、RAWA構造の時空分離特性を利用すれば、入射する白光を赤・緑・青の三原色に分ける分光器を設計することもでき、ディスプレイ領域での応用が期待される。
4 まとめと展望
本稿では、さまざまな種類の共振導波路アレイの光伝達特性を概観し、RAWA構造について詳細かつ全面的に紹介した。RABR構造と比べ、RAWA構造に対する研究は現在主に線形領域の回折効果及び非線形領域のソリトンに集中しており、その欠陥など、より多くの光学特性に基づくソリトンの制御等についてはさらなる模索と検討が待たれる。
光子の精密操作において解決すべき重要な問題は、有效な光子装置の設計と製作である。研究者たちは共振吸收型フォトニック結晶サンプルの作製面で大きな努力をしており、一連の重要な研究成果が得られている。1次元の共振吸收型フォトニック結晶に基づいた比較的成熟した方法は、分子束外延成長法に吸收原子層をドープする方法である。ホログラフィックリソグラフィ技術とバックフィル技術を結合させれば、2次元の共振吸收型導波路アレイが簡単かつスピーディに作製できるが、構造の厚さがやや小さすぎる。作製技術の絶えざる向上と理論研究の進展に伴い、共振吸收型フォトニック結晶はその豊富な光学特性により、光子操作領域で重要な役割を発揮するだろう。
謝辞
イスラエル・ワイツマン科学研究所のGershon. Kurizki教授、イスラエル・テルアビブ大学のBoris A. Malomed教授、英国St Andrews大学のThomas F. Krauss教授、李俊韜博士、香港科技大学のK. S. Wong教授、ならびに馮銘能、肖万能、程静ら、当該研究事業に貢献した方々に感謝申し上げる。