中国の伝統建造物、レーザースキャニングによる保護と再建
中国科技日報 2012年 1月13日
2003年より開始した故宮博物館の大改修工事は、工期が17年間、修築・建設件数が数百件におよぶ一大プロジェクトだ。その改修工事の過程において、レーザースキャニング技術が、伝統建造物のデジタル化保存に採用されている。レーザースキャニングは伝統建造物の精密測量と模型製作に用いられ、マッピングおよび精密測量の分野に属する。同技術の利用により、文物保護のデジタル化管理と模型の作成が可能となり、社会的にも大きな利益がもたらされている。
工事の測量で新たな問題に直面し、伝統的な技術方法では解決できない場合、新たな解決方法が必要となる。例えば伝統建造物内部の構造を記録する伝統的な方法は、写真撮影と巻尺による測量・記録であった。しかし往々にして伝統建造物の構造は複雑で、伝統的な方法によって曲面部分まで再現された模型を製作することは、困難かつ時間のかかる作業である。特に細部の複雑な点についてはなおさらだ(梁と柱の間のつなぎ目等)。3Dレーザースキャニングを使用すれば、これらの技術的難題を解決することができる。
レーザースキャニングの原理は単純だ。レーザースキャナーは、レーザーが測定対象物で反射して帰ってくるまでの時間から距離を算出し、レーザーの移動方向角度から角度を算出し、3次元位置情報を求める。
レーザースキャニング技術を用いて伝統建造物の形状を獲得する(主に立面図、平面図、断面図で、いずれも伝統建造物の保護と再建の重要資料となる)など、同技術の活用によって、より正確かつ迅速な作業を実現できる。また同技術によって得られるデータには、空間や模様に関する情報が含まれ、作成される線形グラフは効率が良く、精度が高く、伝統建造物の保護と再建において高い応用価値を持つ。
これらの特長により、3Dレーザースキャニングは、伝統建造物の保護と再建の面で、幅広い利用が期待される。例えば、重点建造物の定期モニタリングにより、その変形に関する情報を把握することができる。また模様を再現した模型により、一般人も家から出ることなく、バーチャルの建造物を見学することができる。3Dレーザースキャニングによる測定と模型技術は、各伝統建造物の保護と再建に利用されている。2008年の四川省大地震の発生後には、覚苑寺の被害状況を調査した。また内モンゴル自治区フフホト市の大昭寺(ジョカン寺)の壁画、広西チワン族自治区の花山風景区の岩絵、山西省の飛虹塔、チベットの白居寺を対象に、スキャニングと模型作成を実施した。同技術は将来的に、文物保護のより広範な領域で応用される見通しだ。