中国企業が新たなHIV診断試剤を開発、唾液による診断を実現
中国科技日報 2012年 3月21日
北京万泰薬業から得た情報によると、同社はエイズウイルス(HIV)を口腔内粘液から検出する最新試剤を発表し、30分以内に診断結果が出るとした。同製品は採血の必要がなく、唾 液による診断が容易であることから、家庭向けの販売も期待される。同製品はエイズの自己診断の手段となる可能性が期待されている。
一般的に、エイズ感染者は血液の他に、尿液、口腔内粘液、精液、涙にHIV抗体を持つ。HIV抗体は一般的に感染後数週間で現れ出し、最後まで生き続ける。同社が今回発表した試剤には、免 疫膜分離法が採用されており、口腔内粘液のHIV1+2型抗体を検出することができ、一般的にHIV感染の補助診断に用いられる。現在、中国で使用されているHIV診断試剤はすべて血液標本を用いており、侵 襲性のサンプリングを行う必要があり、利便性が低く需要を満たせずにいる。今回発表された試剤は唾液を利用するもので、迅速な検査を実現した。通常の血液標本による検査と組み合わせることができ、将 来的に世界のHIV検査の主な方法となる見通しだ。
同社はG20プロジェクト(北京市によるバイオ医薬発展プロジェクト)の入選企業である。同試剤は同社と、中国国家伝染病診断試剤ワクチンプロジェクト技術研究センターが共同開発した。同試剤は現在、中 国国家食品薬品監督管理局の登録審査を通過し、販売を許可された。
同社は中国免疫診断試剤市場の最大手で、現在までに中国およびアジア最大の免疫診断試剤生産メーカーとなっており、年産が2億人分に達する。血液スクリーニング検査診断試剤市場で、同 社は中国トップシェアを誇る。うちHIV、C型肝炎等の免疫診断試剤の生産量は、長年に渡り中国一をキープしている。HIV診断試剤の研究開発に最も早く取り組み始めた企業として、同 社が開発生産するHIV診断試剤は、その感度、特異性、安定した品質により、8年連続(2003−2010)で中国トップシェアを記録した。
業界関係者は、「中国国家バイオハイテク産業化モデルプロジェクトの拠点として、同社の近年の高度成長は偶然ではない。その発展は中国の診断試剤分野の成長と緊密に関連しており、中 国医薬産業の発展の縮図である。同社は科学研究を重視し、技術研究開発に長期的に投資することで、持続的な発展に向けた原動力を確保し、基礎研究と産業化実践に基づく自主イノベーション方式を形成した」と 指摘している。
同社の研究開発投資が売上高に占める比率は、12−15%を維持している。同社は万泰研究開発センターを設立し、科学技術者は100名以上に達している。診断試剤とウイルスの研究開発に関する、中 国一流レベルの技術者による研究開発チームを結成しており、2000万元以上(約2億4000万円)の研究開発用の設備を保有し、高い自主開発能力を持つ。この高額の研究開発投資は、中 国の医薬品企業としては異例である。
同社は厦門大学と10数年間の提携を行なっており、「中国国家伝染病診断試剤ワクチンプロジェクト技術研究センター」を共同建設した。科学研究成果の産業化に関する豊富な経験、効 率が高く成熟した技術転化プラットフォームは、同社の高い競争力を支えている。
HIVウイルス抗体診断試剤分野において、同社は常に中国トップ水準を維持している。90年代中頃、中国の第3代HIV診断試剤は輸入に依存しており、国産試剤は第2代の水準にとどまっていた。1 999年、同社はアモイ大学の研究者と共同で、中国唯一のHIVウイルス抗体診断試剤の生産要求を完全に満たす、HIVウイルス組換抗原を開発し、中国国内の技術空白を埋めることに成功した。双 方はさらに中国初の第3代HIVウイルス抗体診断試剤を開発し、その品質は世界一流の水準に達した。同試剤は国産第2代製品と比較して、感度や特異性の面で質の飛躍を実現した。同 試剤はまた2000年に中国国家二類新薬証書を獲得し、外国企業による独占を打破した。同社はさらに科学研究成果を、科華、華美、新創、金豪等、中国の診断試剤・臨床検査の主要企業10数社に譲渡した。こ れにより、中国国産のHIVウイルス診断試剤は2001年に全面的な世代交代を実現し、中国のHIVウイルス予防抑制能力を強化し、かつ「国家科技進歩二等賞」を受賞した。2003−2006年、同 社は中国国家発展改革委員会ハイテク産業化モデルプロジェクトの「HIVウイルス組換抗原と抗体診断試剤の産業化」を請け負った。中国国家発展改革委員会は2008年、同社に対して「 国家ハイテク産業化十年成果賞」を授与した。同社は2008年、中国初の国産HIV第4代診断試剤を発売し、中国のHIV診断能力をさらに強化し、国産試剤の水準を世界トップ水準まで高めた。