ビッグデータがもたらすクラウドコンピュータの登場
2014年 3月27日 柳珺(中国総合研究交流センター フェロー)
近年は情報化社会の加速を背景にデータ量が爆発的に増加し、IT業界ではビッグデータの時代が到来した。しかしビッグデータを処理するには既存コンピュータ機器の限界が近づいてきている。構 造化されていないビッグデータの保存、管理及び活用技術に関して、IT業界は大きな課題に直面している。
2013年12月10日、紫光株式会社サービス戦略会議が開催され、紫光は初めて“クラウドコンピュータ”という新しい概念を打ち出し、世界初のクラウドコンピュータとして「紫雲1000」を披露した。
ほぼ2年間で開発に成功した「紫雲1000」は、中国がビッグデータの処理分野で重大なコア技術のブレークスルーを実現した。この技術はパソコン、スパコンと異なり、分 散型システムのアーキテクチャをベースに、バーチャル技術を生かし、複数の低コストの計算ユニットを統合的に制御する仕組みとなっている。その計算能力とストレージ能力を動的に調整、ま た自由に拡張が可能となった。
1台の紫光クラウドコンピュータのCPU数は最大6万5535個まで、ストレージは最大85PB(ペタバイト)まで拡張可能で、処理能力は1.2GB/秒に達する。ソフトウェア面において、シ ステム環境の中に自社ライセンスを持つバーチャルモジュール、ビッグデータモジュール、動的配置モジュールを動作させ、処理の最適化を図る。
「紫雲1000」をはじめとする紫光クラウドコンピュータには、次の特長がある。
- 分散型の新アーキテクチャ、低コストの計算リソースの並行計算による、ITインフラの計算能力とストレージ能力の大幅な向上。
- 大量の構造化・非構造化データの処理をサポート。
- 計算処理スペックを動的に増減させ、処理負荷の変化に対応。
- 障害の耐性が高く、計算ノードに障害が発生した場合でも処理が遂行され、クラウドコンピュータの電源を切断せずに障害のノードもしくはストレージユニットを取り替えることが可能。コ ンピュータ全体の拡張性、柔軟性を高め、インシデント発生時にスムーズに回復。
- 高速配置技術と組み合せ、ビッグデータの処理効率を高め、計算品質も向上。
クラウドコンピュータは今までにないコンセプトを提唱した。汎用的なハードウェアとオープン系アプリケーションの特徴により、ストレージと計算能力はユーザのニーズに従って自由に調整ができる。こ れにより運用・メンテナンス・管理がシンプルになり、時間とコストを大幅に削減できる。伝統的な手段により同様のシステムを構築した場合、10人以上の熟練したIT技術チームが、1 カ月から数カ月の時間をかける必要があるが、クラウドコンピュータを使用すれば、1人の熟練した技術者が数時間をかけるだけでよい。
紫光クラウドコンピュータは金融・通信・交通・放送業界からの高性能・低コスト・高信頼性・高拡張性というシステム要求を満たし、IT業界から注目を集めている。今後、ユビキタスネットワーク、ス マートシティ、スマートグリッド、スマートモビリティ、医療と食品安全などビッグデータの応用分野において幅広く利用されることが期待される。