2013年度中国大気質に関する最新結果
2014年 6月27日 金 振(中国総合研究交流センター フェロー)
2014年5月27日、中国環境保護部は「2013年中国環境状況公報」(以下、2013年環境白書)を公表した。本環境白書において公開された統計データは大きく、1)汚染物質排出総量や森林面積等に関する統計値、2)水質や大気質等に関する測定値、3)エネルギー部門、道路交通部門に関する統計値、に分けることができる。
注目ポイント
往年の白書と比べた場合、2013年環境白書には2つの注目ポイントがある。一つは、エネルギー部門、道路交通部門に関する統計内容の新設である。石炭消費や自動車排ガスに起因する大気汚染問題の深刻化を受け、2013年環境白書は、いままで扱わなかったエネルギー、道路交通分野の統計データも盛り込んでいる。
いま一つは、新しい大気質環境基準(以下、新基準)に基づく測定結果の公表である。2012年、新基準の公布とともに74の都市が早期適用の対象に指定され、2013年より新基準に基づく測定が始まった。2013年環境白書は、新基準適用以来の初めての測定結果が含まれている点において注目されている。以下ではこの点につき少し立ち入って紹介する。
2013年度中国大気質に関する最新結果
74都市の大気質は、主に6種類の物質(SO2、 NO2、PM10、PM2.5、CO、O3)の年間平均値、または一日平均値(CO、O3)によって評価されている。計測結果に基づき、大気質上位10都市とワースト10都市のランキングも公開されている(表1)。
典拠:2013年中国環境状況公報に基づき筆者作成 | |
大気質上位10都市 |
大気質ワースト10都市 |
海口、舟山、ラサ、福州、恵州、珠海、 |
邢台、石家庄、邯鄲、唐山、保定、済南、 |
図1は、新基準をクリアした都市の割合につき、観測項目ごとにまとめたものである。PM2.5の大気質基準をクリアした地域は最も少なく、わずか3都市であり、全体の4%を占めるだけであった。
図1 新基準を達成した都市の項目ごとの合格率
典拠:2013年中国環境状況公報に基づき筆者作成
環境基準をクリアした日数が通年に占める割合を見た場合、80%以上の都市は10都市のみであり、5割を満たない都市は17にものぼる。
また、スモッグ(肉眼で識別できない浮遊物質の発生によって視程距離が10km以下までに制限される現象)が発生した全国平均日数は2012年比で18.3日増の35.9日であり、それは1961年以来の最多記録となった。言い換えると、2013年はこの53年間で最も大気汚染が深刻な年であった。
2014年から新基準の提供対象都市は161都市までに拡大した。いまだに抜本的な大気汚染防止策が見つかっていない現状に鑑みると、161都市を対象とした2014年度の測定結果は、依然として厳しいものとなる見込みである。