第104号
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2014年度海外研究者国際協力賞、受賞者紹介

2015年 5月18日(中国総合研究交流センター編集部)

 中国科学技術部(省)は今年1月、2014年度海外研究者国際協力賞を発表した。中国の大使館や地方政府の推薦に基づき、ロシア・カナダ・米国・ニュージーランド・タイ・オーストラリア・オランダの7カ国の研究者が受賞者として選ばれた。個人以外では、米テキサス州立大学の研究機関も表彰対象となった。

ロシア:ジョレス・イヴァノヴィチ・アルフョーロフ

 半導体物理学者、ロシア科学アカデミー会員。2000年度ノーベル物理学賞受賞。在ロシア連邦中国大使館による推薦。

 アルフョーロフ氏はヘテロ構造物理学の創始者として名を馳せる。1970年、半導体レーザーの常温連続発振に世界で初めて成功し、光ファイバー通信の発展に道を開き、インターネットや電子・光電子技術、エネルギー技術などの土台を築いた。低次元(ナノ)ヘテロ構造研究の創始者にして第一人者である。

 ここ20年余りは中露科学技術協力の推進に尽くした。2005年以降は、北京郵電大学の初の学科革新・知力誘致基地学術大家に選ばれ、情報フォトニクス・光通信国家重点実験室の名誉室長に就任したほか、「アルフョーロフ中国ロシア共同実験室」の設立・指導を行うなど活動を活発化させた。氏の指導と教育の下、中国の協力研究チームは革新能力が急速に高まり、数々の重大な科学問題で大きな進展を果たした。

カナダ:バーノン・ダグラス・バローズ

 エンバク品種改良の専門家。カナダ農務 • 農産食品省終身教授。カナダ国家勲章や中国友誼奨、カナダ国家公共事業貢献記念賞など受賞。吉林省による推薦。

 バローズ教授は、エンバク品種改良・応用研究に50年近く取り組み、エンバクの品種改良と産業化に貢献した。1998年からは吉林省白城市農業科学院と協力し、中国・カナダ間のエンバク科学技術にかかわる協力を展開し、エンバク関連の先端研究・技術を教え、11のエンバク新品種を共同で育て上げ、その他の研究機関も指導して20のエンバク新品種の育成を成功させた。これら新品種の普及・応用は、中国のエンバク品種の不足を解消し、中国のエンバク生産の能力と品質を高め、さらにエンバク栽培地域の農業の生態環境も改善した。

 バローズ教授は中国を熱愛し、中国人とカナダ人との友好を広げ、中国のエンバク事業の発展を長らく支え、エンバク研究の国際協力の幅広い展開を促した。バローズ教授の指導の下、中国のエンバクの科学研究者が増加し続け、自主革新能力が高まり、中国のエンバク産業が大きく発展した。

米国:黎念之(Norman N. Li)

 化学エンジニア専門家。全米技術アカデミー会員、中国科学院外国籍院士、NL化学技術会社社長。化学エンジニア分野における世界レベルの賞「パーキンメダル」や国際化学技術特別功労賞など受賞多数。中国工程院による推薦。

 黎念之博士は、膜科学の土台を築き、液体膜技術を発明したことで知られる。化学エンジニアや膜科学・技術、表面化学などで際立った研究成果を上げた。著書20冊、論文100本以上、保有特許は50件以上にのぼり、研究成果は化学工業や環境保護、資源再生利用などで幅広く応用されている。分離科学と膜科学・エンジニアの発展を引っ張る科学者の代表格である。

 中国の科学技術事業の発展にもここ30年余り貢献してきた。中国人専門家の育成に熱心で、資源・環境・エネルギーなどの分野で中国人専門家が重要な役割を果たすべく指導してきた。北京低炭素クリーンエネルギー研究所の学術委員会会長としては、その発展戦略や技術方向の制定、人材誘致に貢献した。中国と米国の化学工業界の学術交流・協力を長期にわたって促進し、先端技術の紹介と導入に尽力してきた。第7回中米化学エンジニア学術大会の開催も支え、米国側代表を務め、中国による化学工業分野の国際学術交流を促し、関連分野における中国の影響力を高めた。

ニュージーランド:フィリップ・ロルストン(Philip Rolston)

 草地産業科学技術専門家。ニュージーランド国家草地農業研究所シニア研究員、植物改良研究開発チーム代表、国際牧草種組織代表。ニュージーランドの科学技術賞3賞、中国政府友誼賞を受賞。在ニュージーランド中国大使館による推薦。

 ロルストン博士は、草地農業システムや草地農学、牧草種子学などで多くの功績を上げ、先端科学理論を用いて生産における数々の重大課題を解決するのを得意とし、国際牧草種子生産学の第一人者として認められている。

 1983年からは、中国の草地・畜牧業関連プロジェクト30事業の実施にかかわり、ニュージーランド等の草地・畜牧業の先端理論・技術を中国西部地域の実情に合わせて取り入れ、蘭州大学や貴州省農業委員会等と長期的に協力し、中国西南部カルスト地域の草地土壌改良や品種選択、草地造成・管理・利用などの技術問題を解決し、地域の環境改善や農民・牧畜民の貧困解決に貢献した。中国南部で建設を指導した放牧型酪農場は現在まで草地造成と放牧業のモデルとなっている。蘭州大学等と共同で行った牧草種子学研究は、同分野を急速に進展させることとなった。中国の専門技術者の育成にも貢献し、中国の草地産業研究の水準を高め、草地の農業生産を推進・普及した。

タイ:Peerasak Srinives

 品種改良専門家。タイカセサート大学農学部副学部長、国際アジア・オセアニア品種改良研究協会会長。江蘇省による推薦。

 Srinives教授は1979年に米イリノイ州立大学を卒業し、博士学位を取得。進んだ品種改良の理念・技術・設備を中国に導入し、新技術の応用と革新的品種改良、幅広い普及を促し、豆類などの優秀資源の導入の評価・鑑定、病虫害予防のための分子育種技術、新品種の選択栽培などでの先進国との差を縮め、中国の食用豆の安全と安定生産の保障を実現した。

 中国との関係も良好で、訪中は実に38回に及び、27省市の100カ所以上の団体を訪れた。中国農業科学院や江蘇農業科学院など国内の多くの団体とも長期的で緊密な協力関係を保っている。多数の国際食用豆会議での中国人科学者による主催や参加を指名・推薦し、多くの中国人学者を国際食用豆組織の要職に推薦するなど、中国人学者の国際的地位の向上にも貢献した。

オーストラリア:Franco Pirajno

 鉱床地質学者、鉱物資源調査専門家。西オーストラリア州地質調査局首席地質学者、西オーストラリア大学客員教授、国際誌『Ore Geology Reviews』編集長、国際鉱床成因協会副会長。鉱床分野の国際的賞「Kutina-Smirnov賞」(2014)受賞。国土資源部(省)による推薦。

 Pirajno教授は、地域構造や鉱床地質、鉱物資源調査に長きにわたって携わり、ユーラシア大陸からアフリカ、豪州、南西太平洋諸島まで研究範囲を伸ばしてきた。学術論文150本余、地域地質図作成20点余、学術雑誌の特集編集7回。中国の鉱床地質研究に20年近く取り組み、国土資源部や教育部(省)、中国科学院など多くの機関や専門家と緊密に協力し、多くの理論研究や野外調査課題の解決を助け、重大科学プロジェクトに参加し、カギとなる科学問題を解決し、中国の鉱床研究・調査の水準を高め、中国の鉱床学分野の多くの学術リーダーや大学院生を育て、中国と協力して50本余の国際科学技術論文を発表し、鉱床学分野の中国人学者と中国の研究成果を積極的に国際舞台へと導いてきた。

オランダ:Niek Rengers

 工学地質、地質災害リスク評価・管理専門家。オランダ地球情報学・対地観測国際研究所教授、国際応用地質学会元会長、国際ジオエンジニアリング協会連合会執行代表。編集委員となっている国際雑誌多数。論文約100本、著書10部余りを執筆。国土資源部による推薦。

 Rengers教授はここ10年ほど欧州の理論と経験を用いて、中国の科学者と協力し、中国に適した地質災害リスク評価・防止体系を構築し、中国の減災能力を大きく高めた。さらに若手からミドルエイジの教師10人余り、修士・博士課程の大学院生20人余りを指導するなど、優秀な人材の育成にも貢献した。国際応用地質学会の事務局はRengers教授の提案で中国に移され、中国人学者が事務局長と副代表に就任し、国際学術界における中国の影響と地位を高めた。中国の地質災害研究と防止に対するその貢献は大きい。

米テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター

 1941年設立。がんの治療・研究・教育・予防を展開する世界で最も重要な医療センターの一つ。センターの従業員は1万9千人に達する。がん患者の診察は年間11万人余、専門科研修医の育成約1100人。広東省による推薦。

 2003年、中山大学腫瘍予防治療センターがMDアンダーソンがんセンターの姉妹病院の一つとなった。その後の協力を通じて、中山大学腫瘍予防治療センターの中堅40人余りが米国で研修を受け、同センターの臨床治療と研究の水準を高めた。中山大学腫瘍予防治療センター発行の『Chinese Journal of Cancer』は2014年、トムソン・ロイターのSCI収録誌に認定された。このほかにも多くの臨床・応用・基礎研究プロジェクトで協力し、特許4件を獲得し、ハイレベルな学術論文60本余りを共同発表した。MDアンダーソンがんセンターの支援で、中山大学腫瘍予防治療センターは国内初の抗腫瘍新薬臨床試験機構を設立した。国際診療ガイドに採用された研究成果はすでに11件に達し、世界的な普及・応用が進んでいる。