2014年 中国衛星応用の進展について(その2)
2015年 7月14日(中国総合研究交流センター編集部)
(その1よりつづき)
衛星リモートセンシング応用の急速な発展
2014年は、中国の衛星リモートセンシング応用が急速に発展した一年だった。とりわけ高解像度地球観測重大特別プロジェクトの建設と高解像度地球観測衛星の応用は、大きな成果を実現した。国産リモートセンシング衛星は急速に発展し、衛星リモートセンシングデータの取得能力も急速に高まった。
1.リモートセンシング衛星・システムの建設の持続発展
中国は8月9日と9月8日、10月20日、11月15日、11月20日、12月11日にそれぞれ、「リモートセンシング衛星20号」「リモートセンシング衛星21号」「リモートセンシング衛星22号」「リモートセンシング衛星23号」「リモートセンシング衛星24号」「リモートセンシング衛星25号」の6基のリモートセンシング衛星を打ち上げた。一連の衛星は主に、科学実験や国土資源の一斉調査、農作物の生産高見積もり、防災・減災などの分野に用いられる。「リモートセンシング衛星21号」と同時に打ち上げられた衛星「天拓2号」は、動画作成と動画像リアルタイム伝送の機能モデルを採用し、動態運動過程の連続観測と追跡を実現し、観測地域の動画データを取得するものである。
8月19日、衛星「高分2号」の打ち上げが成功した。衛星の空間分解能は1m以下で、高放射精度、高測位精度、急速姿勢機動能力などの特性を備えている。「高分2号」の打ち上げ成功は、中国のリモートセンシング衛星がサブメートル級の「高解像度時代」に入ったことを示した。
12月7日、中国とブラジルが共同開発した「中国・ブラジル地球資源衛星04星」の打ち上げが成功した。12月8日、中国リモートセンシング衛星地上ステーション密雲ステーションは軌道に乗った衛星の最初の図像データを受信した。
リモートセンシング衛星の数量が増加すると同時に、リモートセンシングシステムの構築も発展し続けている。1月23日、国家測量地理情報局衛星測量応用センターが主導して取り組んだ高解像度プロジェクト(民間用部分)のアプリケーションシステムプロジェクト「高解像度地球観測系統測量応用キー技術とモデルの事前研究」が無事検収された。プロジェクトでは、高解像度測量のアプリケーションシステムプランが設計され、相応する多くの産業標準・規範が制定された。また高解像度衛星測量などの多くのキーテクノロジーで進展が見られた。
4月、国家戦略的新興産業プロジェクト「マルチソース・グローバルリモートセンシングデータ収集処理・総合サービスプラットフォーム」の船載モバイルノード総体設計プランの審査会が北京で開かれた。船載モバイルノードは、戦略的新興産業プロジェクトのグローバルリモートセンシングの受信ノードの一つ。中国の極地観測船「雪竜号」上に、海洋衛星・気象衛星・ナビゲーション衛星からの情報の受信・処理能力を持つ衛星アプリケーションシステムが構築され、完成後は北京運輸管理センターと南米固定サービスノードとともに、グローバルリモートセンシングデータ収集処理と総合サービス情報プラットフォームを形成し、応用モデル事業が展開される。
リモートセンシングデータの正確な補正は、高精度の定量リモートセンシング製品を作り出す土台となる。8月、中国資源衛星応用センターなどは、中国のリモートセンシング衛星放射補正場である惇煌場で、軌道上の国産陸域観測衛星の絶対放射補正実験を行った。この実験では、6基の衛星の16個のペイロードについて高・中・低反射率の3サイトの同時観測が行われ、衛星がサイトを通る際の地表実測反射スペクトルデータ、太陽放射データ、大気観測データを収集した。
2.リモートセンシング衛星の応用が発展の黄金期に
リモートセンシング衛星の幅広い応用に伴い、中国はリモートセンシング大国へと向かい、リモートセンシングの応用は「黄金期」に入っている。リモートセンシング技術は国土資源や環境のモニタリングや都市管理などの各産業で幅広く応用され、人々の生活の様々な場面に影響を与えている。
(1)高解像度リモートセンシングデータ応用が「サブメートル級時代」に
「高分1号」と「高分2号」の両衛星は軌道上で順調に運用されている。そのうち「高分1号」はすでに正式に運用開始されており、20余りの政府部門と産業、10の省級地域の応用モデルセンターでモデル事業を展開している。「高分1号」の衛星データはすでに、リモートセンシングによる土地利用の動態モニタリングや鉱業資源調査、環境モニタリング・調査、農産物の作付面積の動態モニタリング、減災・防災、森林の保護などに幅広く活用されている。
「高分2号」は、高解像度特別プロジェクトにおける重大な段階的成果の一つであり、中国のリモートセンシング衛星がサブメートル級の「高解像度時代」に入ったことを示す成果となった。9月、「高分2号」の最初のサブメートル級高解像度衛星画像が発表された。国土資源モニタリングや鉱業資源開発、都市精細管理、交通施設モニタリング、林業資源調査、被災地復興・再建などの多くの分野で「高分2号」が持つ応用潜在力が示された。「高分2号」衛星画像技術の特性を幅広いユーザーに知らせ、後続の普及・応用のスムーズな展開に道を開いた。
(2)国産リモートセンシング衛星による度重なる緊急救援活動への参加
2014年に起きた緊急事件や災害で、中国は複数回にわたって、リモートセンシング衛星による地球観測を組織した。緊急モニタリングのサービス能力は大きく高まり、国産衛星データの社会的効果が十分に発揮された。
2月、「雪竜号」に乗り込んだ中国の第30回南極科学調査隊は、流氷に閉じ込められたロシアの船舶の救出や、流氷密集エリアに自らが閉じ込められた際の脱出、補給や新隊員乗船などを経験した。中国のリモートセンシング衛星が撮影した多くの高解像度図像は、雪竜号の航路設計にナビゲーションデータによる重要なサポートを提供した。
3月、マレーシア航空MH370便が離陸後に地上との連絡を断った。中国はリモートセンシング衛星10数基を急遽動員し、旅客機の捜索にあたった。
5月30日、雲南省盈江でM6.1の地震が発生した。中国資源衛星応用センターはただちにII級緊急対応体制を始動し、軌道上の中国の高解像度陸域観測衛星を急遽動員し、複数の高解像度衛星による連続観測を繰り返した。同時に衛星データ緊急共有ルートを開通させ、震災地区の地震前の衛星データを提供した。
7月、台風9号「ラマスーン」が中国の華南沿岸地区に上陸した。国家衛星気象センターは多くの気象衛星「風雲」を動員し、台風の経路を観測した。「高分1号」「資源3号」「資源1号02C」「実践9号A」「環境減災衛星A/B/C」などの陸域観測衛星も台風エリアで高解像度・中解像度を結合した継続観測を行い、衛星データの緊急共有ルートを速やかに開通し、被災地のデータを関連部門にただちに提供した。
風雲3号B星の観測したラマスーンの画像
8月、雲南省魯甸で地震が発生し、多くの死傷者が出た。民政部国家減災センター(衛星減災応用センター)は災害救助の緊急マニュアルに従い、国内の衛星と航空データの緊急協調共有協力メカニズムを速やかに始動し、「環境減災衛星」「高分1号」「資源1号02C」「資源3号」「実践9号」「リモートセンシング衛星」「快舟1号」などの衛星データ80枚余りを取得し、リモートセンシングによる観測と評価を展開し、災害の損失評価をサポートした。
10月、雲南省普洱市景谷で地震が発生した。中国はII級緊急対応体制を始動し、多くの陸域観測衛星を急遽手配し、被災地の観測を行った。このうち「資源1号02C」衛星は8日正午12時に被災地の撮影に成功した。さらに「高分2号」や「高分1号」など多くの軌道上の高解像度衛星が、災害地区に対する連続観測を繰り返した。
3.国産衛星リモートセンシングデータの商用化がスタート
3月、ドッキング目標機「天宮1号」のアプリケーションデータの使用普及関連政策が公表された。政策では、中国科学院空間応用工学・技術センターがデータの処理と分配を担当し、中国資源衛星応用センターなど3組織が初のデータ商用代理機構となり、国内外のユーザーに有償サービスを提供することが明確化された。「天宮1号」のアプリケーションデータの正式な商用化の始まりを告げる政策となった。「天宮1号」の空間アプリケーションデータは、資源調査や都市計画、環境モニタリング、防災減災、海洋探査、科学研究などに利用できる。
6月、中国資源衛星応用センターと国家リモートセンシングセンターは「国産衛星リモートセンシングデータ共有・応用普及の共同促進に関する戦略協力合意」を締結した。国家リモートセンシングセンター陸域衛星リモートセンシング部が中国資源衛星応用センターに開設した。今回の戦略協力は、資源の統一調整や科学技術の進歩と産業発展の推進という国家リモートセンシングセンターの機能、並びに国産衛星リモートセンシングデータのストックや分配サービス、産業応用の拡大などの中国資源衛星応用センターの有利性に基づき、国産衛星科学技術の革新と成果の移転、国産衛星データの産業応用と産業発展、国家総合地球観測システムのデータ共有サービスプラットフォームの建設、国産衛星データとその製品の共有、気候変動や生態環境などの問題の研究への国産衛星データの応用などの面で協力を深め、国産衛星データの各産業と各地域での利用のさらなる普及を促進するものである。
9月、中国資源衛星応用センターと国家電網南瑞集団公司は、戦略協力枠組合意を締結した。双方は、中国資源衛星応用センターのリモートセンシング画像データ資源の優位性、南瑞集団の地理情報研究の開発とマーケットの優位性を拠り所とし、衛星リモートセンシングデータの応用や通信ネットワーク資源サービス、データセンターの建設、研究協力などの分野で戦略協力を深め、有効な協力モデルを積極的に検討し、日常的な交流・協力の体制を形成し、国産リモートセンシング衛星データの応用普及を共同で推進することとした。
(その3へつづく)
※本稿は「衛星応用」編集部より許可を得て翻訳・転載したものである。
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