2014年 中国衛星応用の進展について(その3)
2015年 7月14日(中国総合研究交流センター編集部)
(その2よりつづき)
衛星通信の多元化発展
1.インフラ建設で新たな進展
10月、清華大学と信威集団が共同で開発した通信実験衛星「霊巧」が打ち上げに成功し、軌道上での通信実験を完了した。中国初の低軌道モバイル通信衛星の重要な進展となった。通信衛星「霊巧」の打ち上げ成功は、小衛星通信の新技術と新方法の実験展開に革新プラットフォームを提供するものとなった。
中国電信が投資・建設したカシュガル国際地球衛星ステーションが11月初めに運用開始となった。カシュガル国際地球衛星ステーションの到達範囲は、中央アジアや西アジア、中東、東アフリカ、西アフリカ、東欧などの国をカバーし、国内外のグローバル企業に衛星通信サービスを提供するものとなる。
2.応用分野の拡大
9月25日、海南南中国海における漁船へのラジオ・テレビ放送の普及プロジェクトが始動した。同プロジェクトは、漁船に衛星テレビの受信設備を配備し、海上で作業する漁民にテレビやラジオの視聴を可能とするもので、漁業に携わる人々に利益をもたらし、漁業生産に貢献し、経済発展を促進する国民生活のためのプロジェクトである。プロジェクトの資金は中央財政資金を中心とし、省財政資金も合わせ、漁民に無料でサービスを提供するものとなった。
2014年11月13日までに、直接放送衛星サービス「戸戸通」のユーザーは全国で1700万戸に達した。戸戸通プロジェクトの省単位での推進の2回目の対象となった15省(自治区・直轄市含む)のうち、内蒙古・吉林・広西・青海・新彊ではすでに設備設置が始まり、1日平均で約1万5千戸のサービス開通が行われている。黒竜江・江西・四川ではすでに設備の入札が完了している。河北・山西・湖北・湖南・重慶ではすでに資金の目処がつき、実施プランも省政府に提出され、エリア分けのための調査業務が全面的に展開されている。安徽・河南でも準備作業が始まっている。
3.民間旅客機のインターネット利用、通信衛星の新たな戦場に
工業情報化部の授権と民用航空局の認可を経て、Kuバンドによる伝送を利用した南方航空による衛星高速ブロードバンドインターネット接続事業は、技術験証飛行の段階に入った。Kuバンド伝送を利用した衛星高速ブロードバンドインターネット接続技術は、機内でのインターネット接続向けに50Mのブロードバンドを提供するもので、光ファイバーFTTP並の速度が実現される。国内の航空会社の機上インターネット接続技術はこれによって、地上ベースステーションへの依存や帯域幅の狭さなどの技術的なボトルネックを脱することとなる。この技術は安定性が高く、地域や航路の制限を受けないなどの特性を持ち、全世界の海上飛行でのインターネット接続を実現できる。南方航空はすでに、A330-300型機1機の改造作業を完了している。衛星高速伝送インターネット接続技術の中国初の運用となり、海上を飛行するワイドボディ旅客機のインターネット接続設備による初のアクセスともなった。
7月、中国電信と東方航空の連携による大陸部初の衛星ブロードバンドインターネット接続商用テスト便が上海・北京間の往復飛行任務を成功させ、空中インターネットの旅客へのサービス開放の幕を開けた。中国電信は今後、より多くの航空会社やその他の協力パートナーと連携し、さらに優れた機上通信サービスをユーザーに提供することとしている。
衛星応用の国際協力の推進
1.北斗の海外市場の積極的な開拓、国際プロジェクトの実施
中国は、北斗システムの二国間・多国間協力を積極的に推進し、コンパティビリティとインターオペラビリティの協調を展開し、さらに優れたサービスをユーザーにともに提供し、衛星ナビゲーションシステムのコンパティビリティ・共存と融合共用を推進し、国際民間航空や国際海事、3GPP国際モバイル通信などの組織標準への北斗システムの融合を推進している。
(1)中国と米国の協力が幕開け
5月19日、中米両国の衛星ナビゲーションシステムに関する最初の会議が北京で開かれ、「中米民用衛星ナビゲーションシステム(GNSS)連合協力声明」が締結された。声明においては、双方が各自の利益から出発し、透明性や相互利益などの精神に基づき、ともに関心を寄せる民用衛星ナビゲーション関連の問題について話し合ったことが強調され、これは双方の共同の利益にかなうとの評価が示された。双方は、協力を強化して、北斗とGPSの世界での応用を共同で促進する意欲を見せた。双方は、北斗とGPSの両システムの日常的な交流・協力のメカニズムを構築し、頻繁な会議を通じて協力を引き続き進め、共同ワークスチームを組織し、双方がともに関心を寄せる議題をめぐって協議することに同意した。
(2)中国とロシア、4つの重点協力分野を提出
6月30日、中露衛星ナビゲーション協力円卓会議がハルビンで開かれ、「中露衛星ナビゲーション協力了解覚書」が締結された。
10月13日、中露の両総理は第19回定期会合の期間中、「中国衛星ナビゲーションシステム委員会とロシア連邦宇宙局のグローバル衛星ナビゲーション分野の協力の了解覚書」を締結し、「中露衛星ナビゲーション重大戦略協力プロジェクト委員会」の設立を明言し、「システム」「コンパティビリティ・インターオペラビリティ」「監視評価」「応用普及」の4つの分野を重点に後続協力を強化することを提出した。
11月、ロシア宇宙システム社は、同社が、中国へのGLONASS差分補正・モニタリングシステム(SDCM)の配備を準備しており、設置作業は2014年12月に開始する計画であることを明らかにした。ロシア宇宙システム社の代表と中国のカウンターパートは、ウルムチと長春市の付近に差分補正・モニタリングシステム局を置くことの評価をすでに行っている。
(3)タイが北斗初の海外ユーザーに
3月、タイは北斗初の海外ユーザーとなった。北斗システムはアジア太平洋地域をカバーするようになり、北斗ナビゲーションシステムは中国の国土で使用できるだけでなく、周辺国家も次々と北斗システムでGPSを代替するようになった。
6月、3つの北斗衛星地上型補強システムモデルステーションがタイで運用開始となった。主に災害の監視と予防など生活向けに応用される。今後3年から5年で220個の同様の地上ステーションが建設され、タイ全域がカバーされるようになる。タイでは今後、北斗技術に基づくより多くの民間分野のプロジェクトが推進されることになっている。
(4)中豪衛星ナビゲーションの協力体制構築
9月20日、中国衛星ナビゲーションシステム管理弁公室とオーストラリア地球科学局(GA)は衛星ナビゲーション分野での協力について北京で会議を開いた。双方は、衛星ナビゲーションの監視評価や融合応用、研究交流などの分野での協力に大きな潜在力があるとの見方で一致し、正式な協力体制を構築することを確定し、監視評価や共同研究、データ共有、北斗/GNSS革新センター建設などの今後の協力方向を検討した。
2.衛星リモートセンシングの国際協力が発展
1月、ミャンマー科学技術省の代表団が中国資源衛星応用センターを訪問した。双方は、サービスプラットフォームの共有プロジェクトとリモートセンシング衛星共同実験室の共同建設の実施計画を土台としてさらなる協議を重ねることで一致した。ミャンマー側は、プロジェクトの実施と共同実験室の建設に全力を尽くし、これを契機として重点応用協力分野を探し、農業・林業・資源モニタリングなどでのリモートセンシング衛星データの重点応用模範プロジェクトを検討するとの方針を示した。
4月、国家測量地理情報局衛星測量応用センターはブラジルImagem社と戦略協力合意を締結した。双方は、「資源3号」の測量衛星画像データの加工サービス能力を支柱として、ブラジルImagem社の成果の移転・普及と生産・実践の応用能力を土台とし、衛星データ加工やデジタル画像処理ソフトウェア、地理情報システムの応用などをめぐって技術・ビジネス協力を共同展開し、資源の共有を最適化し、中国とブラジルの国民経済・社会の発展への測量衛星地理情報資源サービスの応用の新たな局面を共同で構築する。
7月、中国航天科学技術集団公司はベネズエラ科学技術革新省と「ベネズエラ『リモートセンシング衛星2号』プロジェクトに関する合意」を締結した。ベネズエラ「リモートセンシング衛星1号」に続く双方の再度の協力となった。
10月、中国国家航天局とインドネシア海上安全保障調整機構はジャカルタで、インドネシアリモートセンシング地上ステーションプロジェクトの協力了解覚書を締結した。両国の海上協力の発展を促進し、インドネシアの海上取締活動と防災・減災の能力向上を支援し、両国の海上協力のさらなる発展を推進する。
3.中国衛星通信サービスが世界に進出
(1)ボリビア通信衛星の全面引き渡し
4月1日、ボリビア通信衛星の引き渡し式典がボリビアの首都ラパスの大統領府で行われた。中国長城工業集団有限公司はボリビア宇宙局に、ボリビア通信衛星と地上観測制御システム、アプリケーションシステムを正式に引き渡した。
(2)通信衛星「ラオス1号」プロジェクト地上ステーション建設プロジェクトが始動
2014年3月28日、中国アジア太平洋モバイル通信衛星有限責任公司はラオスビエンチャンのメコン川北岸で、ラオス衛星プロジェクト地上ステーション建設プロジェクト始動に関する会議を開き、ラオス衛星プロジェクト地上ステーション建設事業が正式にスタートした。「ラオス1号」はラオスが保有する初の通信衛星となるだけでなく、ASEAN諸国では初めての中国の衛星の輸出となる。ラオス衛星プロジェクトはさらに、中国が衛星全体を輸出して地上運営にも参加する初のプロジェクトとなる。
(おわり)
※本稿は「衛星応用」編集部より許可を得て翻訳・転載したものである。
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