中国における産学研連携の概況(その7)
2015年 8月31日 孫福全(中国科学技術発展戦略研究院院務委員)
( その6よりつづき)
4.4 国家技術移転モデル機構
2013年末まで、全国には274社の国家技術移転モデル機関があり、企業ニーズを進むべき方向として、大学と科学研究機関を基本に、技術移転サービスを紐帯とする産学研それぞれが結合した新型技術移転体系の第一歩を構築したため、技術移転のメカニズムは一層健全となった。大学による技術移転機関は65社(うち211大学47社)、科学研究機関による技術移転機関は82社、独立した第三者企業の特徴をもつ技術移転機関は28社、技術(産権)取引機関は17社、政府所属の技術移転機関は82社がある。
274社の国家技術移転モデル機関の中、8社は国際技術移転を行っている。国家技術移転モデル機関には、従業員29462人、そのうち技術マネジャー資格を持つものは1821人、機関の総人数の6.18%を占めている。また、大学学部以上のスタッフは24265人、機関の総人数の82.36%を占めている。そして、中級職階名を持つものは17527人、機関総人数の59.49%を占めている。
国家技術移転モデル機関は、国家公共財政を投入したプロジェクト移転転化と戦略的新興産業の技術移転を促進する側面においてきわめて著しい成果を上げている。2013年、国家技術移転モデル機関が71285項目の技術移転を促して成功させ、取引額は1397.97億元になった。そのうち、国家公共財の投入プロジェクトの移転転化項目は11911項、取引額は194.82億元、総額の13.94%を占めている。
また、戦略的新興産業技術プロジェクト29677項目を促して成功させ、取引額は679.64億元となり、総額の48.62%を占めた。そして、1000万元以上の重大プロジェクト1124項目を促進し成功させ、取引額は381.42億元、総額の27.28%を占めた。さらに、国際技術移転プロジェクトは2485項目を成功させ、取引額は108億元となった。
一方、技術推進と取引活動を9878回組織し、技術移転養成は29.37万人、サービスした企業は21.01万社。17.1万項目の企業の需要を解決した。今年、機関は20541項目の発明特許を獲得し、実用新型特許は10154項目、外観デザイン特許は3011項目、版権(ソフト著作権)4276項目、商標権105項目となっている。
4.5 新型研究開発組織
近年、地方経済社会と産業発展の需要に応じるため、多くの地域には各種の新型研究開発組織が相次ぎ現れ、かつ急速的な発展の傾向を見せている。このような新型研究開発組織は往々にして戦略的な新興産業に目を向け、政府の支援、市場化と結合した運営メカニズムを採用し、産業の共通した技術と創造的、創業専門サービスを提供するなど、力強い創造的なパワーを見せている。これは産学研連携を促すだけでなく、戦略的新興産業の発展と地域の創造体系の構築の強い支えになっている。
広東珠江デルタ地域には、華大基因(遺伝子)研究院(研究院名)、深圳光啓高等理工研究院(研究院名)などに代表される典型的な多くの新型研究開発組織が現れ、これらの組織は柔軟な体制を取り、基礎研究と先端的な技術研究に力を入れている。また、長江デルタ地域には、多くの産業技術研究院が現れ、江蘇省はすでに200社の各種新型研究開発組織が設置されている。
2013年12月、江蘇省は産業技術研究院を設置し、この産業技術研究院は理事会が指導する院長責任制度を取り、プロジェクトマネジャー制を推進し、プロジェクトマネジャーが産業の重要な技術問題に取り組み、自主的なプロジェクトチーム、自主的な調査、優れたプロジェクトを推薦するとしている。この組織は、「民営公助」の社団法人管理モデルを模索し、会員制による独立した研究開発機関の加盟を取り入れた省産業技術研究開発協会を設置した。
2012年8月、上海産業技術研究院が設置された。現在、この産業技術研究院は4大専門分野に焦点を当て、3Dプリント研究開発サービスプラットホーム、知能交通研究開発サービスプラットホーム、臨床医学転換研究センターなど12個の研究開発サービスプラットホームを設置し、共通の技術の研究開発を行い、産業連携の欠ける部分、重要な部分の技術の需要を解決している。同時に、「創造新パートナー計画」を実施し、企業、高等学校、科学研究機関、金融機関などと多層的な創造ネットワークを構築した。浙江省も一連の創造的なキャリアを導入している。例えば、清華長三角(長江デルタ)研究院、中国科学院寧波材料技術与工程(材料技術・エンジニア)研究所、浙江省現代紡織工業研究院などである。また、西部地域も地域の特色に合わせ多くの工業技術研究院が設置されている。例えば、陝西省は西安交通大学、電子科学技術大学、西北大学、西北工業大学などと連携し、6つの工業技術研究院を設置されている。
研究機関は組織の構築の面において、新型研究開発組織は、政府の力強い支援の下、多数が参加する組み合わせモデルを採用している。研究機関の設置、運営初期において、政府は一定の資金を提供し、税金を優遇し、土地、柔軟な職員編成などの形で多方向からサポートしながら、大学、科学研究機関、企業、政府などいくつの主体が参加する投資と建設を行う。
研究機関の運営方式において、理事会が指導する院(所)長責任制を取り、理事会は最高の政策決定権を持ち、院(所)長は日常的な管理の責任を負い、理事会に報告する責任を負うように、良好な管理規範を形成している。
科学研究、技術開発或いは創造的なサービスを提供する面において、連携創造と開放的な創造はその特色とし、新型研究機関と大学、科学研究機関、企業などが連携して研究を行い、共同で技術の難題に挑戦し、共同で連合実験室と研究センターを設置し、共同で会社の設立などを行っている。
運営において、「創造、創業、サービス」の三位一体の発展モデルを取り、産業化と市場化の方向に主要な技術と共通技術の開発と応用を展開し、研究開発プラットホームと実験室を開放して、積極的にインキュベート機能の計画を実施するなど、地域の創造的な需要に応じて、「創造、創業、サービス」の三大機能を融合して形成する。
収益の獲得の面において、創造的な全体が連鎖する収益モデルを取り、例えば、産業に共通する技術研究開発を通じて、パイロットプロセスの研究開発によって技術的な成果を獲得し、移転譲渡によって収益を獲得する。また、パイロット、技術評価と検査測定、人材養成などのサービスを提供することで、創造的なサービス収益を獲得する。そして、プロジェクトの芽が出る段階での投資を通じて、創業期の直接投資、技術成果の投資参加、創業サービスを株権に転換するなどの多様な方法によって、創業プロジェクトの成果の分配に参加することができる。例えば、インキュベートハイテク技術企業の場合はそうである。
このような新型研究開発組織の発生源は、経済と社会発展によって生じる科学技術の創造に対する巨大な重要である。これは産業の変革と発展の積極的な対応であり、その組織形態、運営モデルと管理体制は現代的な研究機関制度の試みであり、科学と教育が融合した組織モデルの一種の試みである。しかし、これらの発展の歴史は浅く、関連する体制のさらなる整備と成熟を待つ必要がある。現在最も顕著な問題として、例えば、このような研究機関は、現在の制度において依然として法的な地位がまだ不明確であり、登録類型が多種多様であるため、その存在の認識上の困難も政策の実践に困難をもたらし、既存の政策体系に組み入れることができない。また、このような研究機関は、大学、科学研究機関、企業などと多元的な主体間において、技術移転譲渡、創造的なサービス、投資成果、知的財産権などの領域において、分配メカニズムがなお明確な法的規定が欠如している。
これらの新型研究開発組織は設置から運営期間が長くないにもかかわらず、その創造的なパワーが強力で、実績も顕著である。その具体的な成果のひとつとして、伝統産業における水準の向上をもたらしていることが挙げられる。例えば、華中科技大学の製造工程(製造・エンジニア)研究院が東莞市の家具、編織、食品、アパレルなどの伝統産業の技術的なニーズに応じて、十数種、数十シリーズの業種の鍵となる設備を自主研究開発し、各種の知的財産権100以上の項目を申請し、東莞市の伝統産業の転換とレベルアップを力強く促進した。もうひとつは、戦略的新興産業の発展を牽引したことが挙げられる。例えば、深圳光啓高等理工研究院は、メタマテリアル領域において創造を展開すると同時に、関連成果を迅速に製品化と産業化を実現したことで、予想される生産値が数千億元に達する新興産業――スーパーマテリアル産業を創設し、戦略的な新興産業を養成、発展させる新しい力となった。3つ目に挙げられるものは、創造的資源の有効な連携を実現し、一部の研究開発の実力がある大学や科学研究機関が新型の研究開発のプラットホームを通じて、自身の技術的な優位と人材のストックを現実的な生産力に換え、サービス経済社会の能力を有効的に実現させた。
(その8へつづく)