第109号
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中国のノーベル賞学者、屠呦呦さんの地道な努力に賞賛の嵐

2015年10月 8日  中国総合研究交流センター編集部

 中国の女性薬学者、屠呦呦さん(84)のノーベル医学生理学賞の受賞決定について、日本メディアはいずれも、同時受賞となった日本の大村智(さとし)北里大学特別栄誉教授(80) とアイルランド出身のウィリアム・キャンベル米ドリュー大学名誉研究フェロー(85)と同じく、屠さんの研究成果がこれまでに貧しさの中で病に苦しむ地球上の莫大な数の人々を救ってきたことを高く評価した。 

 中国国内で研究を続けてきた中国人科学者にノーベル賞が授与されるのは屠さんが初めて。日本メディアは、テレビを含め、屠 さんのノーベル医学生理学賞受賞決定の報道に喜びを爆発させる北京市民の様子を伝えると共に、「中国各紙が今回の快挙を1面トップで取り上げた」などと報じた。

 屠さんはマラリア治療薬「アーテミシニン(青蒿素)」の発見者として日本や欧米の専門家の間では有名で、2011年にはラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞していたが、一 般の日本人にはあまり知られていなかった。しかし、屠さんが中国を10年間にわたって大混乱に陥れた文化大革命(1966~76年)の時代、中国南部でマラリアが蔓延して死者が続出する中で、古 くから伝わる数々の漢方薬を試し、最終的にマラリアに効果がある調合法を見つけ出したことなどが伝えられると、ネット上には「すごいぞ!感動した」「これからはアジアの時代」「この85歳の高齢の女性に敬礼」な どといった賞賛の声が広がった。

 また、屠さんが博士号や海外留学経験を持たず、学士院会員でもない「三無教授」といわれ、ラスカー賞を受賞するまでは、国内ではあまり脚光を浴びず、貧 しい生活を続けていたことも日本の一般市民には驚きだったようで、屠さんの成果を「極めて困難な状況で生まれた奇跡だ」などと表現する書き込みもあった。

 中国科学院の白春礼院長は屠さんに「あなたはアーテミシニンを発見し、マラリア治療の新しい道を切り開いた。これは単に重要な科学的意義であるだけでなく、多くの患者に福音をもたらした。あ なたのノーベル賞受賞は中国科学界の誇りであり、このことはきっと世界の科学という高峰を絶え間なく登る多くの中国の研究者を激励し、人類文明と人民の福祉のためのさらに多くの、さ らに大きな貢献となるだろうと確信している」との祝電を送った。

 新華社電によると、屠さんはノーベル賞の受賞決定後、「(屠さんが発見した漢方のマラリア治療薬は)伝統的な中国医薬が世界の人々へ贈ったプレゼントであり、中国の科学事業、中国医薬の栄誉だ」と 語ったとされている。医学の領域は確かに西洋医学が主流ではあるが、「西洋医学が見放した難病患者の治療に漢方薬が効いた」といったケースも報告され、近年、日本でも漢方、即ち、中国医薬が再評価されつつあり、屠 さんへの関心は今後さらに高まりそうだ。