中国の大学発ベンチャー企業(科学技術型)について(その2)
2015年11月9日 陳 強(同済大学経済・管理学院管理科学与行程系教授)、
余 偉 (同済大学経済・管理学院博士課程)
( その1よりつづき)
二、中国の大学科技型企業の発展の現状
寧夏・新彊・青海・西蔵を除いた全国の489大学が参加した「2012年度中国高等教育機関経営産業統計報告」によると、大学の経営する企業は全国で3478社あり、そのうち科技型企業は988社を占める。このうち一級企業は37.85%の374社、二級企業は62.15%の614社とされる。
資産状況を見ると、2012年末の大学科技型企業の資産総額は2092.66億元で、全国の大学校営産業資産総額(3190.26億元)の65.60%を占めている。資産総額のトップ5の大学科技型企業は順に「北大方正集団」「同方株式有限公司」「東軟集団株式有限公司」「北大青鳥ソフトウェアシステム有限公司」「啓迪持株株式有限公司」だった。
経営状況を見ると、大学科技型企業の2012年の収入総額は1370.75億元で、全国の大学校営産業の収入総額(2086.07億元)の65.71%を占めている。2011年(1273.31億元)からは97.44億元増え、成長率は7.65%だった。利潤総額は56.52億元で、大学校営産業全体の利潤総額(108.44億元)の52.12%を占め、2011年(60.21億元)から3.69億元減り、減少率は6.13%だった。収入総額のトップ5は「北大方正集団」「同方株式有限公司」「東軟集団株式有限公司」「北大紫光株式有限公司」「誠志株式有限公司」、利潤総額のトップ5は「北大方正集団」「同方株式有限公司」「東軟集団株式有限公司」「紫光集団有限公司」「華工科技株式有限公司」だった。
人員状況を見ると、中国の大学科技型企業の従業員数は14.95万人で、このうち高等教育の学歴者は8.69万人で総数の58.13%だった。研究開発人員は3.87万人で25.89%、専任管理人員は1.60万人で10.70%だった。校営科技企業の実習学生受け入れは延べ21.04万人、労働時間は累計843.61万時間だった。大学校営科技企業はさらに、修士や博士の養成にも参加し、2012年度には博士課程の大学院生564人、修士課程の大学院生4181人の養成を請け負った。
科学技術イノベーションの指標を見ると、中国の大学科技型企業の取得した特許は1083件で、全国の大学校営企業の取得特許数(2287件)の47.35%を占めた。中国の大学校営企業の登録したコンピューターソフトウェアと電子回路の著作権数(1328項)に占める割合は50.45%だった。大学科技型企業の獲得した国家級・省部級の賞は506件で、全国の大学校営企業の総受賞数(1800件)の28.11%を占めた。
近年のデータからは、中国の大学科技型企業の発展が次のような特徴を示していることがわかる。
1.大学科技型企業の数は横ばいだが、規模は大きく拡大している。
中国の大学科技型企業の数は2002年から2012年まで「逆V字」を描いて変化し、全体としては減少した(図3参照)。だが販売収入総額や利潤総額、納税額などは急成長し、2012年の販売収入総額は1370.75億元に達し、1996年の122.61億元の11.18倍に達した。総利潤は1996年の12.34億元から2012年までに56.52億元に増え、増加幅は358.02%だった。国家への納税額は1998年の8.31億元から47.61億元に増え、増加幅は472.92%に達した。
図3 中国大学科技型企業数の移り変わり
出典:中国高等教育機関経営産業統計報告(1996-2012).
(その3へつづく)