中国の大学発ベンチャー企業(科学技術型)について(その9)
2015年11月27日 陳 強(同済大学経済・管理学院管理科学与行程系教授)、
余 偉 (同済大学経済・管理学院博士課程)
( その8よりつづき)
3.3.3 威視股份有限公司の発展の教訓
1.利益分配の明確化制度
威視股份有限公司の研究成果転化の過程においては、清華大学とリスクを共同負担し、利益を共有する相互利益の制度が構築された。双方の長期的で緊密な協力関係を確保することは、成果の転化を保証した。技 術の価値を確定することは難しく、成果の転化や譲渡には持続性が伴うため、威視公司は、毎年の実際の経営状況に基づき、清華大学に技術使用費を支払う方式で研究成果の転化がもたらした経済利益を共有した。こ のような利益分配の仕組みは、大学と研究所との協力の積極性を十分に引き出した。産学研の協力過程においてはさらに、知的財産権の問題を適切に処理することが非常に重要となる。利益分配の制度は、明 確な知的財産権の関係の上に築かれなければならない。同方威視と清華大学は、技術革新の成果を保護する手段として知的財産権を重視し、何が共有の権利であるのか、も しくは各自の権利であるかの線引きを具体的な状況に基づいて行った。協力初期においては大学が保持する知的財産権が多く、共同開発過程では共有の知財権が多くなる。さ らに産業化の過程においては企業の保持する知財権が多くなる。
2.異なる組織文化の融合
威視股份有限公司と清華大学は、大型コンテナ/車両検査システムの産業化推進において、実際の状況に基づき、大学と企業という異なる文化を認め合い、互いに学び合うことを重んじた。そ して両文化が互いに補完し促進する措置を取り、「自強不息、厚徳載物」(絶えず向上をはかり、徳をもって物事にあたる)と「革新、信頼、発展」という二つの文化を統合し、両者の共通認識を形成し、自 覚的な行動を促した。大学と企業との二つの文化を発展させるだけでなく、それぞれの強みを十分に発揮することで、大学と企業の成長は新たな精神と内容とを備えるようになった。
(おわり)
参考文献:
- 智瑞芝.「地域革新から見た大学派生企業の研究――日本の事例」[M]. 北京: 経済科学出版社, 2008.
- Kroll, H., Liefner, I. 「Spin-off enterprises as a means of technology commercialisation in a transforming economy--Evidence from three universities in China」[J].『Technovation』,2008, 28:298-313.
- 科大訊飛[EB/OL].http://www.iflytek.com/. 2011-1-1.
- 北大国有資産管理弁公室[EB/OL]. http://web5.pku.edu.cn/gyzcgl/.2010-7-7.
- 上海同済科技実業股份有限公司[EB/OL]. http://www.tjkjsy.com.cn/.2010-1-3.
- 北京林大林業科技股份有限公司[EB/OL]. http://www.bfus.com.cn/index/.2010-3-3.
- 胡海峰.「インキュベーション、移転、フィードバック、連盟:大学派生企業の革新発展の道――威視股份有限公司を例に」[J].『中国軟科学』,2010(7):58-63.