第110号
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原材料工業の経済動向と展望

2015年11月11日  中国総合研究交流センター編集部

 2014年、原材料工業は、複雑に絡みあう国内外の経済状況に直面しながら、経済の下方圧力に積極的に対応し、産業管理の革新の推進に力を入れ、生産能力の過剰の解消に努め、産業の下流における需要を強力に開拓し、産業の経済動向は総体として安定的な成長の傾向を維持し、産業構造の調整は新たな進展を見せた。

一、原材料工業の動向の特徴

(一)2014年の産業生産の動向は総体として安定しているが、成長率は鈍化した。原材料工業の付加価値額の成長率は8.3%で、2013年に比べて2ポイント低下した。そのうち石油化学、鉄鋼、非鉄、建材業界の成長率はそれぞれ7.2%、7.2%、11.4%、9.6%だった。生産量から見ると、ほとんどの製品の成長率は下落しており、通年の粗鋼、エチレン、セメント、非鉄金属10種の生産量は8.23億トン、1704万トン、24.9億トン、4417万トンで、前年からの増加率はそれぞれ0.9%、7.6%、1.8%、7.2%で、2013年に比べてそれぞれ6.6ポイント、0.9ポイント、7.8ポイント、2.7ポイント下落した。

(二)経済収益はいくらか改善したが、全体としての利益水準は依然として低い。鉄鉱石や石炭の価格が大幅に下落したことを受け、重点統計対象の鉄鋼企業の利潤は2014年、前年比40%増の304億元に達したが、売上利益率はわずか0.9%で、工業業界のうち最低水準にとどまった。非鉄金属業界の通年利潤は2053億元で、前年から1.5%下降した。石油化学工業界の利潤は7652億元で、前年から8.5%下降した。そのうち精油は下降幅が特に大きく、69%の減少となった。建材業界の利潤は4770億元で、前年より4.8%増加した。利潤の構成から見ると、下流の精密加工の部分の占める割合が高まった。非鉄金属の採掘・選鉱と精錬は前年比でそれぞれ12.4%と13.7%下降したが、圧延加工は11.6%成長した。また建材業界のうちセメント製品と軽質建材、ガラス繊維、断熱材料、衛生陶器などの利潤の成長率はいずれも12%を上回った。

(三)主要製品の価格に低落・低迷の傾向が見られた。鋼材価格は低迷を続け、2014年末の価格指数は83.1ポイントで、前年同期を16.1ポイント下回った。非鉄金属の価格は総体として変動の激しい調整期に入り、アルミニウム価格はいくらか反発したが、昨年の水準を下回った。建材製品の価格は総体として安定し、通年の平均価格は前年とほぼ横ばいとなった。セメント価格は下降を続け、1トン当たりの価格は12月までに316元と、年初から39元引き下がった。1月から12月までの石油化学工業製品の出荷価格は前年同期から2.6%低下した。石油化学連合会が監視・測定する188種の製品のうち価格が前年から下降したものは77%を占めた。

(四)固定資産投資の成長率が鈍化し、産業構造の調整が加速した。2014年の化学工業と非鉄金属の各業界による固定資産投資はそれぞれ1.56兆と6910億元で、前年に比べてそれぞれ10.5%、4.6%増加したが、増加率は4.1ポイント、15.2ポイントの下落となった。建材業界における固定資産投資は1.46兆元で、前年を14%上回り、増加幅は前年とほぼ横ばいだった。鉄鋼と電解アルミニウム、セメントの各業界の固定資産投資はマイナス成長となり、それぞれ前年より3.8%、17.8%、18.7%減少し、生産能力の過度に急速な成長の勢いは抑制され、規模を重点とする成長から内容を重視した成長への発展方式の転換がはかられた。

(五)産業の技術革新の歩みが加速し、省エネ・環境保護が新たなステップを踏み出した。2014年、鉄鋼業界では一連の新製品の産業化が成功した。宝山鋼鉄の600℃超々臨界火力発電ユニット鋼管、鞍山鋼鉄の3大シリーズからなる原子力発電用鋼、武漢鋼鉄の無方向性ケイ素鋼、太鋼の0.02mm精密帯鋼などが、産業下流のカギとなる分野での応用を実現した。建材業界では、精密陶器やシンチレーション結晶、耐高圧複合材シリンダーなどの産業化技術で突破を実現した。省エネ・環境保護の面では、原材料工業の主要汚染物の排出とエネルギー消耗指標はいずれもいくらか下降し、重点とされる大中型鉄鋼企業の鉄鋼1トン当たりの総合エネルギー消費と二酸化硫黄・煙塵の排出は前年比でそれぞれ1.2%、16%、9.1%低下した。エチレン、水酸化ナトリウム、炭化カルシウムの総合エネルギー消費はそれぞれ2.2%、3.2%、5.5%低下した。アルミニウムインゴット生産のための総合交流エネルギー消費は前年より144kWh /トン減った。建材業界の除塵・脱硝・脱硫技術の応用は加速し、セメントキルンの共処理も良好な発展の傾向を見せた。

(六)輸出貿易が大幅に成長し、製品のランクが若干高まった。2014年の中国の鋼材輸出は9378万トンで、前年から51%と大幅に増加した。鋼材の輸入は1443万トンで、増加率は2.5%だった。化学工業業界の輸出額と輸入額はそれぞれ1621億ドルと1865億ドルで、それぞれ11%、0.6%増加した。非鉄金属の輸出額は772億ドルで41%増、輸入額は1000億ドルで3.2%減だった。インドネシアなどの原鉱輸出制限政策の影響を受け、ボーキサイトとラテライトの輸入は前年よりそれぞれ49%、33%減少した。建材業界の輸出額は361億ドルで、前年より5.3%増加した。輸入額は、ダイヤモンドなどの貴重非金属鉱が大量に輸入された影響で、111%の大幅増加となり、463億ドルに達した。輸出製品のランクはいくらか高まり、電磁鋼板帯や冷間圧延薄広鋼帯などの高付加価値製品の割合が拡大した。各方面の要素の影響を受け、2014年の原材料分野の貿易摩擦は大幅に高まり、鉄鋼業界では40件に達し、その範囲は欧米からアジア・アフリカ地域に広まった。化学工業業界では、中国のタイヤに対して米国が反ダンピングと反補助金の調査を起こし、案件にかかわる金額は33億ドルに達した。非鉄業界でも、アルミニウム材に対する多くの反ダンピング訴訟が起こされた。

二、目前に存在する主要な問題

(一)生産能力の過剰と需要の不足が併存し、市場の需給の矛盾が目立っている。原材料工業では2014年、新設の厳しいコントロールや遅れた生産設備の淘汰、需要の拡大などの措置を通じて、生産能力の利用率がいくらか高まった。だが生産能力の総体水準は依然として高い位置にあり、鉄鋼業界の2014年末の粗鋼生産能力は11.6億トンに達した。通年の新プロジェクトの起工は2000件を超えた。電解アルミニウムの現在の生産能力3500万トンのうち、遅れた生産能力はすでに多くない。セメント業界では2014年、クリンカーの生産ライン54本が新たに竣工・操業開始となり、総生産能力は7000万トン余りに達した。化学工業では2014年、新たに1万件余りのプロジェクトが起工となった。市場の需要に目を向けると、国内の大口原材料の消費はピーク期に入り、国内の粗鋼のここ数年の見かけ消費量はそれぞれ6.7億トン、7.7億トン、7.4億トンで、ゆっくりとした下降傾向を示している。中国経済が突入した「新常態」(ニューノーマル)期においても原材料工業の生産能力過剰問題は長期にわたって存続するものと見られ、鉄鋼や石油化学、非鉄、建材などの業界に転換・調整の加速を迫っている。

(二)環境と安全の制限が高まり、市場の競争環境には規範化が待たれる。2015年に新たな環境保護法と排出基準の実施が始まると、かなりの部分の鉄鋼とセメントの企業が要求を満たすことができなくなる。鉄鋼企業が排出基準を達成するためには、鉄鋼1トン当たりの環境保護投資を13%高める必要があり、運営費用は約200元増加する。とりわけ京津冀(北京・天津・河北)や長江デルタなどの特別な排出制限地区では、企業の環境保護に対する監督管理が一層厳しくなる。原材料工業企業にはさらに、巨額の投資と資金利用が必要でああるために、融資が難しい、遅い、コストが高いなどの問題がある。2014年の鉄鋼・化学工業・非鉄の各業界の財務費用は前年比でそれぞれ21%、21%、20%増加した。鉄鋼業界では財務費用が利潤の3倍余りに達した。市場の競争環境の面では、一部の地方には依然として、法執行の面で厳格さを欠き、企業が環境保護設備を運用せず、粗悪な製品を生産・販売するなどの状況が存在している。

(三)一部のカギとなる材料の保障能力が不足し、新材料は依然として戦略的新興産業を制約する突出した問題となっている。2014年、中国の新材料産業は発展を加速し、いくつかのハイエンド金属構造材料や特殊機能材料で新たなブレークスルーが実現された。湖南や江蘇、広東など一部の省では、特別資金や補助金などの政策措置が相次いで打ち出された。だが先進国や戦略的な必要性から考えれば、国内の新材料産業はまだ大きく遅れており、カギとなる大量の材料が輸入に依存しているという局面は根本からは変わっていない。例えば第8世代と第8.5世代の液晶パネルの生産ラインは順調に操業開始となったものの、偏光板や超薄型ガラス基板、液晶材料などのカギとなる材料の自給率はいずれも10%に満たない。海洋探査や採油プラットフォーム用の高強度極厚鋼板などはほぼ国外に頼っている。2014年に中国の輸入額が最大だったのはICチップだが、そのほとんどの価値は材料によって構成されている。

三、今後の展望と重点対策措置

 2015年、中央の成長安定や改革促進、構造調整、民生改善などの一連の政策の細かい実施に伴い、とりわけバラック地区の改修や中西部のインフラ建設の強度が高められ、「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)などの重大戦略の実施が進められることで、国内の原材料需求は総体として安定を保持すると見られている。2015年の原材料工業の付加価値額の成長率は8%前後と見込まれ、安定した発展傾向の維持が期待できる。だがマクロ経済の構造調整や転換促進という総体的な情勢の下、生産能力過剰の深刻さなどの要素の影響も受け、産業の成長率は一層鈍化し、鉄鋼や電解アルミニウムなどは大きな困難に直面し、厳しい下方圧力に見舞われることとなる。2015年は以下の対策措置を重点的に講じ、原材料工業経済の安定的で健全な進行を促進する。

 第一に、過剰な生産能力と成長安定との関係を適切に処理する。一方では、生産能力の新設を断固として抑制し、遅れた生産能力の淘汰と建設中プロジェクトの監督を強化する。もう一方では、先進的な企業が技術改造や製品調整、両化(工業化・情報化)融合など内生的な成長に有利な投資を実施するのを強力に支援し、「一帯一路」や京津冀の共同発展、長江経済ベルト戦略をめぐって、一連の重大プロジェクトを配置する。鉄鋼や電解アルミニウム、セメント、化学肥料などの優秀で強力な企業が合併や再編を展開することを奨励し、条件の整った企業が資源の採掘や精錬、精密加工の拠点を海外に建設することを支援する。

 第二に、原材料工業製品の市場需要を大いに開拓する。新型都市化や交通・水利インフラ、先進設備製造などの分野で、上流・下流の強力を強化し、高品質で高付加価値の製品の生産と応用を積極的に推進する。高強度鉄筋や高性能電磁鋼、船舶、海洋工事用鋼などの協調メカニズムを拠り所として、ハイエンド鋼材の応用を推進する。新型アルミニウム材の上流・下流の協力メカニズムを拠り所として、産業と需要との連結を強化し、アルミニウム合金車両や航空機用アルミニウム材を普及する。公共サービスプラットフォームを構築し、製品評価とラベル管理を厳格に行い、グリーン建材を大いに普及する。高分子材料の軌道交通とハイエンド設備分野への応用を推進する。

 第三に、経済動向の監視を強化し、産業管理を引き続き深める。鉄鋼や化学工業、非鉄などの業界で下方圧力が目立っているという状況に配慮し、企業に立ち入った調査研究を行い、生産や価格、収益などの指標を正確に見続け、問題の芽や傾向をすばやく発見し、これをターゲットとした対策措置を検討し、提出する。産業規範の管理を改善し、通告を受けた企業の動態検査を強化し、企業が自社で声明を出し、政府が事中・事後の監督管理を強化する管理方法を一歩ずつ構築する。通告リストと金融や環境保護、エネルギーなどの面との連結と連動を強化し、公平な競争が可能な市場環境を作り出す。重点製品の輸出入協調メカニズムを構築し、国際貿易紛争を適切に解決し、輸出環境を保障する。

 第四に、新材料産業を引き続き育て、新材料産業の健全な発展を導く。トップダウンのデザインを強化し、新材料の促進と産業の発展のための指導意見を制定する。科学技術体制改革の総体配置と結びつけ、重点新材料の研究開発と応用重大プロジェクトの実施プランの編制・論証を推進する。新材料の業界団体や産業連盟、専門家諮問委員会の設立を検討し、新材料統計体系・認定体系・基準体系の建設を展開する。新材料の応用当初のリスク補償メカニズムを推進し、利用によって生産を高め、生産によって利用を促進し、上流・下流の良性の相互反応と産学研用(産業・学術・研究所・実用)の緊密に結合した共同革新体系の形成に努め、研究開発でのブレークスルーや工学応用、産業化大量生産を急ぎ、新材料産業の大規模発展を実現する。


※本稿は原材料工業司より許可を得て翻訳・転載したものである。
【原文】http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832/n11294132/n12858387/16458497.html