エネルギーインターネット情勢における電力ビッグデータの発展動向(その1)
2016年 7月27日
李棟華:北京南瑞埃森哲信息技術中心有限公司
主な研究テーマは企業情報システム、モノのインターネット、ビッグデータ、モバイルインターネット等。
耿世奇:北京南瑞埃森哲信息技術中心有限公司
主な研究テーマは電力システムの情報化
鄭建:北京南瑞埃森哲信息技術中心有限公司 エンジニア
長年にわたりビッグデータ技術研究および情報システム設計に従事する。
概要
エネルギーインターネットの情勢下における電力業界のビッグデータ応用の発展動向について、電力ビッグデータ技術のシステム、基盤技術の枠組を掲げ、その適用のシチュエーション、応用モデルを定義することで、電力ビッグデータの発展・研究を推し進め、エネルギーインターネット環境に適したエネルギー公共データサービスプラットフォームを提唱し、将来のエネルギーインターネットの「分析活用の中枢」とし、エネルギー網全体の運営に必要な基礎データ支援、意思決定支援を提供する。
[キーワード] エネルギーインターネット、電力ビッグデータ、エネルギー公共データプラットフォーム、スマートグリッド、データ集合ポイント
はじめに
近年、先進的なセンシング・測量技術、先進的な設備・技術、先進的な制御方法、先進的な意思決定支援技術の応用に伴い、スマートグリッドをはじめとするエネルギーシステムが大いなる発展を遂げたと同時に、エネルギー企業において、エネルギーネットワークの動作の安定性、安全性、経済性、効率性、環境配慮性、使用の安全性を保証するため、配電管理システム、エネルギー管理システム、地理情報システム、企業資産管理システム、停電管理システム、マーケティング管理システムなど、多くの管理システムが確立された。
情報システムの整備、スマートセンシング技術の十分な活用により、電力業界で収集されるデータは爆発的に増加し、既存の従来型データ分析方式・方法では、大量かつ複雑で、急成長するデータの総合的分析を支えられなくなった。この状況に対応するため、ビッグデータの管理を導入することにより、電力業界各段階のさまざまな応用ニーズを満たし、情報データの収集、保存、加工、処理、全バリューチェーン分析の処理能力を強化し、管理の向上、最適化、統合化、サービスシフトのために技術的支援を提供することが早急に必要とされるようになった。
このため、現状と動向を踏まえ、エネルギー公共サービスプラットフォームを提供し、現在の管理システム、情報システムを跨ぐことで分析、最適化のプラットフォーム機能を提供し、多くのシステムに関して、「物理分布、ロジック集中」の水平統合と垂直統合のコラボレーションを実現し、システム分析モデルを構築し、既存システムのデータ、機能について多次元解析、データのデプスマイニング、クラスター分析を行い、各種ビジネス規則を抽出し、エネルギー分野の各種高級アプリケーションのためにデータおよび最適化、分析の基礎プラットフォーム機能を提供することが求められる。
1 将来の長期計画と支援技術
エネルギー公共サービスプラットフォームの位置づけは、多角的なデータ融合、情報ディスプレイ支援プラットフォームで、各データの集合ポイントであり、ビッグデータ分析、情報マイニング・融合の基礎プラットフォームである。エネルギー公共サービスプラットフォームは、大量の収集データソースを利用し、真実性、信頼性のあるデータを取得し、データマイニング、分析、多元情報融合を通じて分類・保存を行う。上向きにビジネスアプリケーションに向けて信頼性のある情報源を提供すると同時に、各種アプリケーション開発に合理的で、便利かつ迅速なインターフェース・開発環境を提供し、動作制御システムの中の各種高級アプリケーションの支えとする。
エネルギー公共サービスプラットフォームはモノのインターネット(IoT)、ビッグデータ技術を利用し、基礎データの収集において総合検知機器を採用し、機器の状態、環境、ユーザーなどの情報の正確性・時効性を収集し、電気エネルギーの質量、環境の変化、ユーザーの電力負荷状況を速やかなモニタリングし、全面的な検知の要件を満たす。同時に、マルチソースエネルギーデータの統合により、交換を通じて、すべての測定ポイントの収集、システム転送のデータを統合する。データの収集ルートは以下のとおりである。
① 電力の運用、管理システム系のデータは、スケジューリング自動化システム、配電自動化システム、電力使用管理システム、スマートメーターAMI、地理情報システムGISなどのシステムが転送するデータが含まれる。
② エネルギー機器収集データは、エネルギー保存、マイクロタービン、空気熱源ヒートポンプ、太陽熱、バイオマスエネルギー、電気自動車用充電スタンドなど、ガス網、熱力網などを源とする情報が含まれる。
③ マクロ経済政策および環境、気候などのデータ。マルチチャネルデータの接続、マルチソースデータの融合、多次元データ管理機能が含まれる。また、システムデータ、収集データのプラグアンドプレイに対応する。
公共データプラットフォームの確立は、データ接続、開発志向、応用に対する支援、サービスユーザーなどの視点から、エネルギーインターネットの革新・変革をもたらし、エネルギーの生成、転換、輸送、使用、調整などのデータの統合、管理、計算、分析、管理、応用を満たす。データのプラグアンドプレイ、迅速な開発手配の運転維持、電力網、電力使用ユーザー向けの高効率なサービス提供を発展のビジョンとする。
図1 エネルギー公共サービスプラットフォームの将来の長期計画
1.1 エネルギー公共サービスプラットフォーム構造
エネルギー公共サービスプラットフォームは、ハードウェアリソース、ベーシックソフトウェア、ネットワーク通信、データ統合、計算サポート、応用サポート、セキュリティ管理などの7つの方面をめぐり、全面的な高度化を行い、適切で多元化されたデータ融合、情報ディスプレイの基礎プラットフォームを構築し、エネルギー生産者とエネルギー消費者のプラグアンドプレイ、協調的、最適化制御を実現するとともに、エネルギーインターネットとのインタラクション、アクティブ最適化制御を実現する。
ハードウェアリソースは、CPUコンピューティングリソース、メモリとハードディスクリソース、ネットワーク帯域幅リソース、仮想化を通じたフレキシブルな拡開、一括管理、対外トランスペアレントサービスが含まれる。
ベーシックソフトウェアは、分散型コンピューティング環境、分散型データ保存、プラットフォームバスの3つのベーシックソフトウェアが含まれる。
マルチソースビッグデータを支援するため、ネットワーク通信、データ保存、データ計算の3大リソースをデータの支援設計とする。データの支援機能は3つの類が含まれる。
① ネットワーク通信:主に、大量のデータ通信を満たす情報伝送、開放的なサービスインターフェース、統一的なサービス管理。
② データ統合:すべての測定ポイントの通信、統合を通じて、収集、システム転送されたデータで構成されるデジタルの海。マルチチャネルデータの接続、マルチソースデータの融合、多次元データ管理機能が含まれる。システムデータと収集データのプラグアンドプレイを支持する。
③ 計算支援:主に、ビッグデータ計算分析処理の要件を満たす。データ検索エンジン、データ処理インターフェース、計算エンジンが含まれる。
また、システムは各部分のセキュリティシステムを配慮し、重点的にハードウェアリソース、ソフトウェアサービス、データのセキュリティの統一を配慮し、統一的なセキュリティ管理システムを構築し、資源管理、ソフトウェアセキュリティ、データセキュリティ、権限管理、セキュリティ監査などの機能を含め、システムの安全性を力強く保障する。
通信、保存、計算のリソースの統合を通じて、アプリケーションサービスに統一的な支援を提供し、インターフェースの開放性、多様性、支援性のあるビッグデータ、ヒューマンコンピューターインタラクションの特徴を支援する。
以上により、ハードウェア、ソフトウェア、データ、ビジネス職員の4位1体の公共サービスプラットフォームを共同で構築し、マルチソースエネルギービッグデータの支援ニーズを満たし、エネルギーインターネットの各種アプリケーションサービスを力強く支援し、統一的なエネルギー公共サービスプラットフォームを構築する。
エネルギー公共サービスプラットフォームのエネルギービッグデータ基盤技術は主として、データ統合管理分類技術、データ保存管理技術、高性能コンピューティング技術、分析マイニング技術が含まれる。具体的な技術内容および範疇は表1を参照されたい。
表1 エネルギー公共サービスプラットフォームコア技術
エネルギー公共サービスプラットフォームのビッグデータ支援モジュールの全体フローは、データ保存、データ計算、タスクスケジューリング、ビジネスアプリケーションの4つの段階が含まれる。図2は、電力ビッグデータ支援プラットフォーム構造であり、全体設計の主要モジュールはインフラリソース管理、構造化データ処理、非構造化データ処理、過去/準リアルタイムデータ分析、グリッドスペースデータ管理、データコネクターの6つの方面で、データ計算にリアルタイム計算、バッチコンピューティング、フローコンピューティングを導入した混合コンピューティングシステム構造である。
図2 エネルギー公共サービスプラットフォーム全体構造
図3 電力ビッグデータ技術の枠組
1.2マルチソースエネルギーデータ統合およびサービス技術
マルチソースエネルギーデータ統合技術は、エネルギー公共サービスプラットフォームデータの基礎を構築するための中核技術であり、プラットフォームのフロントエンドに位置する。マルチチャネルデータ接続、マルチソースデータ融合技術、多次元データ管理技術などの中核技術が含まれる。
図4 スマートグリッドマルチソースデータ統合およびサービス技術
① マルチチャネルデータ接続
マルチソースデータを研究するプラグアンドプレイ接続技術を研究し、電力管理システム系、エネルギー機器のデータ収集など、出所が異なる多数のデータのプラグアンドプレイデータ接続を実現する。
② マルチソースデータ融合
電力網オブジェクトに向けたマルチソース異種データ統合と管理技術のビッグデータ統合と管理プラットフォーム構築を研究し、マルチソースデータ融合のエネルギーモデルベースを形成し、各種スマートグリッドアプリケーションに基礎データ支援を提供する。
③ 多次元データ管理
スマートグリッド向けのデータ、モデル、アルゴリズム、ディスプレイ向けの共有管理技術を研究することで、システムの各種アプリケーションをよりよくプラットフォームに統一、統合できるようにする。
(その2へつづく)
※本稿は李棟華;耿世奇;鄭建「能源互聯網形勢下的電力大数拠発展趨勢」(『現代電力』第32卷第5期、2016年10月,pp.10-14)を『現代電力』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。
記事提供:同方知網(北京)技術有限公司