「中国の原子力開発」に関する調査報告書を公表
2016年10月 5日 中国総合研究交流センター編集部
福島第一原発事故で一時中断していた中国の原子力開発は、「原子力強国」の構築に向けて再び大きく動き出した。中国総合研究交流センター(CRCC)の調査報告書によると、現在稼働中の原発は30基2860万kWで、建設中が24基2720万kW、さらに計画中は275基2万9140万kWと、2030年頃には米国を抜いて世界1位の原子力大国となる見通しだ。
中国の原子力発電所は大半が加圧水型原子炉(PWR)で、安全性を大幅に高めた第3世代PWRや第4世代の先進炉に多額の資金とマンパワーが投入されている。
とくに独自開発の「華龍1号」は、世界市場を視野に入れた戦略炉で、すでに海外からの受注にも成功した。
また米国の「AP1000」をベースにして出力アップを図った「CAP1400」など安全性を高めた原子炉を開発するとともに、「ACP100」「ACPR100」「CAP150」「NHR200」など、海上浮動式や都市の熱供給を含めた小型原子炉の開発にも力を入れている。
一方次世代の原子炉として、ロシア、インドと並んで高速増殖炉の開発を進めるとともに、米国が1960年代に開発した「トリウム溶融塩炉」のプロジェクトをスタートした。また劣化ウランを利用できる「進行波炉」の開発を、米国テラパワーとの間で協定を締結してスタートさせた。
さらにPWRの回収ウランを利用できる先進燃料重水炉(AFCR)を開発するため、カナダのCANDUエナジー社と合弁会社を設立した。
核燃料サイクル事業では、再処理工場(800トン)を仏AREVAと協力して建設するとともに、急増する使用済み核燃料の中間貯蔵を目的に、サイト外の使用済核燃料貯蔵施設の建設を進める。またガラス固化施設の建設に2020年に着手、2030年の完成を目指す。
建設や研究開発を担う国家電力投資集団公司、中国核工業集団公司、中国広核集団有限公司などは従業員10万人を超える国有企業である。原子力研究を行う大学は40を超えるといわれ、原子力工学科に在籍する学生は1万人と見られている。
原発の急増と研究開発の多様な展開を進める中国だが、急速な拡大による人材不足を懸念する声が、中国の研究者からも上がっていると言う。
関連リンク:調査報告書『中国の原子力分野における研究開発の現状と動向』