第121号
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中国の3D印刷業界の発展状況(その2)

2016年10月25日

柳 建:装備再製造技術国防科技重点実験室(北京市) 68129部隊(甘粛省蘭州市)

博士。研究分野は設備部品の付加製造/再製造技術。20編以上の論文を発表。

雷 争軍:68129部隊

顧 海清:68129部隊

李 林岐:68129部隊

その1よりつづき)

1.2 企業

 技術の普及と応用は、企業の関与があってはじめて実現する。3D印刷産業は将来的に有望であるため、現在、中国では多くの関連企業がビジネス拡大を目指して3D印刷企業を共同で設立している。具体的には、銀邦股份と安迪利捷貿易有限公司が飛而康快速製造科技有限責任公司を共同で設立し、昆明機床と秦川発展等の企業が共同で西安瑞特快速製造工程研究有限公司を立ち上げる等の事例があり、かつ、その多くはすでに上場している。中国の3D印刷企業や事業単位は、その事業内容に基づいておおむね以下の3つに分類できる。すなわち、印刷材料の研究開発を主に行う川上企業と、印刷機器開発と販売を行う川中企業、そして、3D印刷サービスを行う川下企業である。

 川上・川中・川下産業の主な企業およびその関連業務を表2~4に示す。このほか、広西玉柴やハイアール・グループ、浙江省の万向、吉利、衆泰、海康威視、蘇泊爾等の大手企業も3D印刷技術を利用した新製品の開発を行っており、先進的な技術を利用して自社製品の競争力を高めようとしている。

1.3 各地方政府

 ハイテクによって現地経済の発展を促すために、各省・各市の地方政府は次々に関連措置を打ち出している。3D印刷産業パークや3D印刷加工・3D印刷サービス基地等の建設を通じて、各地の3D印刷関連産業の発展や3D印刷プロジェクトへの投資の誘致に尽力している[29-36]。2013年には世界3D印刷技術産業連盟が設立され、本部が南京におかれた。同年6月には、華曙高科3D印刷産業基地が長沙ハイテクパークで着工され、中国科学院湖南技術移転センター3D印刷研究開発センターも設立された。また、同年7月20日には、広東省珠海市香洲区と中国3D印刷技術産業連盟が「中国3D印刷技術産業(珠海)イノベーションセンターの共同設置に関する協力合意書」を締結し、同区に3D印刷の拠点が構えられることとなった。同じころに、山東省濰坊市濱海区において中国3D印刷技術産業加工・サービス基地が設立され、青島市高新区盤古ハイテクパークにも3D印刷産業パークが設置された。さらに、広東省東莞市の天安数碼城集団も、同パーク内に3D印刷産業化基地と3D印刷に関する一連のサービスシステムの実現のための用地計画を行った。

表2 中国の3D印刷業界の川上企業および主な業務
企業名 主な業務 備考
飛而康快速製造科技有限責任公司 印刷用粉末材料、各種新素材の開発、生産、販売、技術サービスならびにコンサルティング 銀邦股份と無錫安迪利捷貿易有限公司の合弁会社。3D印刷サービス(SLS技術)を提供
海源機械 複合材料、セラミックス、ケイ酸塩等の材料の3D印刷製造技術の研究 清華大学老科技工作者協会と昆山永年先進製造技術有限公司の協力により設立。川中企業でもある
銀禧科技 各種樹脂、変性プラスチックの研究開発および生産・販売 中国3D印刷産業連盟に加盟
深圳恵程 世界的な航空・宇宙分野における3D印刷のニーズに基づき、印刷材料を開発 ポリイミド産業チェーンを有する。子会社の長春高琦は、中国で唯一、全産業チェーンを持つ
昆明機床 光硬化樹脂の開発 西安瑞特快速製造工程研究有限公司に資本参加
宏昌電子 3D印刷材料に注力(液状エポキシ樹脂) レーザーを利用した樹脂の硬化・成形
重慶徳固科技有限公司 ナイロン樹脂、アルミニウム合金、チタン合金、ステンレス、金型用鋼等の印刷材料  

 

北京隆源公司 SLS技術用エンジニアリングプラスチック、精密鋳造による粉末ロウ材料等 3D印刷設備の開発事業も経営

 中西部地域では、2013年はじめに、湖北省武漢市にある武漢光谷未来科技城の約500ムーの用地において、投資額約1億元で濱湖機電3D印刷生産基地が建設された。同年3月には、貴州省では初となる3D印刷プロジェクトが貴陽国家ハイテクパークで実施された。報道によれば、このプロジェクトにおいては3D印刷機器研究開発センターの設立が予定されている上に、3D印刷機器の大量生産基地を5年以内に建設することを計画している。6月27日には、成都増材製造(3D印刷)産業技術イノベーション連盟が成立し、航空産業の国家的な3D印刷モデル基地の設立に向けて尽力することとなった。また、同年11月には、綿陽ハイテクパークでも西南3D印刷技術開発・応用サービスセンターならびに産業化基地の建設が始まった。このほか、情報筋によれば、山西省太原市や陝西省渭南市等でも3D印刷産業パークの建設が始まっている。

 さらに、3D印刷技術の発展に伴って印刷設備価格が下落したため、多くの小規模企業に加え、個人さえも、3D印刷産業に参入するようになった。2012年11月に中国初の3D印刷体験館である「上拓3D印刷体験館」が北京で開館して以来、3D印刷サービスを行う類似の写真館や体験館が全国で相次いで開業した。現在、中国製のデスクトップ型3D印刷設備の販売価格はわずか数千元であることから、一般家庭への普及が進みつつある。

表3 中国の3D印刷業界の川中企業および主な業務
企業名 主な業務 備考
大族激光 レーザー成形設備の研究開発および販売 商品レベルの設備はまだ開発できていない
華曙高科 ナイロンの選択的レーザー焼結設備 国産印刷設備を初めてアメリカ向けに輸出
先臨三維科技股份有限公司 各種3D印刷設備の販売  

 

南京宝岩公司 各種3D印刷設備の研究開発、生産および販売 DOGOシリーズ、デスクトップ型、HOFIシリーズの製品がある
上海彩石激光科技有限公司 レーザー金属成形システムの研究開発および製造 3D印刷産業連盟のメンバー。川下企業にも属する
西安非凡士機器人科技有限公司 3D印刷機及びロボットの研究開発、製造 世界トップレベルのロボットおよび3D印刷機の代理販売
海源機械 3D印刷機の開発、製造、販売業務 川上企業にも属する
新松公司 レーザー3D印刷成形システム 川下企業にも属する
北京隆源公司 3D印刷設備の研究開発、生産(中国初のSLS焼結設備AFS-300) 川上企業にも属する
北京太爾時代科技有限公司 FDM、SLA等の3D印刷設備の研究開発、生産、販売 印刷材料の研究開発も実施
華中数控公司 NC加工3Dプリント設備の研究開発、生産 研究段階。商品レベルの設備をまだ開発できていない

その3へつづく)

参考文献

[29]http://laser.ofweek.com/2013-03/ART-240015-8120-28673256.html.

[30]http://www.szmslaser.com/news/521.shtml.

[31]http://gongkong.ofweek.com/2014-03/ART-310002-8420-28782380_4.html.

[32]http://www.chinairn.com/print/3098379.html.

[33]http://www.3ddl.net/news/2014/0307/25988_3.html.

[34]http://china.toocle.com/cbna/item/2013-12-03/7118560.html.

[35]http://www.gywb.cn/content/2013-09/28/content_296604.htm.

[36]http://tech.southcn.com/t/2013-05/30/content_70006534.htm.

※本稿は柳建;雷争軍;顧海清;李林岐「3D打印行業国内発展現状」(『製造技術与機床』2015年第3期,pp.17-25)を『製造技術与機床』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記 事提供:同方知網(北京)技術有限公司