第121号
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エネルギー革命:化石エネルギーから新エネルギーへ(その2)

2016年10月27日

鄒 才能:中国石油勘探開発研究院、中国石油勘探開発研究院廊坊分院

教授級高級工程師、博士指導教官、李四光地質科学賞受賞者。『天然気工業』第7期編集委員会委員、『Natural Gas Industry B』編集委員会委員。現在、中 国石油勘探開発研究院副院長と中国石油勘探開発研究院廊坊分院院長を兼任。非在来型石油・ガス地質学、在来型の岩相地層石油・ガス埋蔵や大型石油・ガス地区などの地質理論技術研究と調査・生 産の実践などに主に取り組む。

張 国生:中国石油勘探開発研究院廊坊分院

趙 群:中国石油勘探開発研究院

熊 波:中国石油勘探開発研究院廊坊分院

その1よりつづき)

2 世界のエネルギーの新分布

 地殻の形成と進化に差異があることから、世界の化石エネルギーの分布は地域差が大きく、調査・開発や生産・消費にも大きな不均衡性が存在している。社会・文明の絶え間ない進歩に伴い、再 生可能エネルギーや水力発電、原子力発電、バイオマス燃料などの新エネルギーに対する人類の需要は日増しに増大している。近年は、非在来型の石油・ガスが猛烈に発展し、中 国やインドなどの発展途上国のエネルギー需要量は急速に増加し、供給と需要の両面からそれぞれ、従来のエネルギー局面に重大な影響を及ぼしている。石油・ガスは在来型と非在来型でそれぞれ4大分布を形成し、石 炭はアジア太平洋と北米、欧州の3大分布を形成し、新エネルギーの発展は欧州と北米、アジア太平洋の3大分布を形成している。

2.1 化石エネルギーの分布

2.1.1 化石エネルギー資源の分布

 世界の化石エネルギーには主に、石油と天然ガス、石炭が含まれる。理論的認識の絶え間ない深まりと資源調査技術の水準の大幅な上昇は、世界の化石エネルギー資源の地図を描きなおした。

 非在来型石油・ガスの発展は、従来の石油・ガス資源の分布を改変している。世界の在来型の石油とガスの可採資源量はそれぞれ4,878×10 8 t、471×10 12 m 3で、主に、中東とロシア、北米、南米の4大地域に集中し、資源量はそれぞれ35%、14%、13%、9%を占めている [1,3] 。2000年以降、認識と技術水準の向上に伴い、北米を代表とする非在来型石油・ガスは規模の拡大を実現し、非在来型の石油・ガス資源の潜在力が再認識された。最新の推計によると、世 界の非在来型石油可採資源量は6,200×10 8 tで、在来型石油資源量にほぼ相当する。非在来型天然ガスの可採資源量は約4,000×10 12 m 3で、在来型資源量のほぼ8倍に匹敵する。資源は主に、北米とアジア太平洋、南米、ロシアの4大地域に集中しており、資源量の比率はそれぞれ34%、23%、14%、13%で ある[1,3]

 石炭は、世界で最も豊富な化石エネルギーであり、資源の総量は100×10 12 tを超える。主に、欧州・ユーラシア大陸、アジア太平洋、北米の3地域に分布している(図1)。2014年末までに、調査で存在が確認されている世界の石炭埋蔵量は8,915×108 t(石油換算4,457.5×10 8 t)にのぼる。このうち欧州・ユーラシア大陸とアジア太平洋、北米の石炭埋蔵量はそれぞれ34.8%、32.3%、27.5%だった。石炭埋蔵量が最も豊富なのは米国で、総 量は2,373×10 8 tに達する。これに次ぐのがロシアで1,570×10 8 t、中国の埋蔵量は第3位で1,145×10 8 tだった [2]

2.1.2 化石エネルギー生産の分布

 技術進歩がもたらした非在来型石油・ガス革命は現在、世界の石油・ガス生産の局面の重大な変化を後押ししている。ここ10年にわたって、世界の石油生産量は安定的に成長し、天 然ガスの生産量は比較的急速に成長した。2004年と比べると、2014年の世界の石油生産量は42.2×10 8 t(表1)で、成長率は8.1%だった。天然ガスの生産量は3.46×10 12 m 3 [1,2] で、成長率は27.6%にのぼった。中東とロシア、南米の在来型石油・ガス3大生産地域の生産量は、安定を保持しながら上昇し、各地域の石油生産量はそれぞれ11.7%、1 5.3%、6.0%伸び [4] 、天然ガスの生産量はそれぞれ102.6%、0.9%、29.9%伸びた [2,4] 。2014年、中東とロシア、南米の在来型石油・ガ ス生産の3大地域の石油生産量が世界の石油総生産に占める割合は31.7%、12.7%、9.3%で、天然ガスの生産量はそれぞれ世界の17.3%、1 6.7%、5.0%を占めた。ここ10年で、北 米地域の非在来型石油・ガスの調査・開発は重大なブレークスルーを実現し、タイトオイルやオイルサンドなどの非在来型石油の急速な発展は、北 米の石油生産量の31.0%にのぼる成長を後押しし、世 界の石油生産量の主要な成長分野となった。シェールガスやタイトガスなどの非在来型天然ガスの猛烈な発展は、米国の天然ガス生産量の38.4%の 成長を後押しし、非在来型石油・ガ ス発展の波を世界的に引き起こした。世界には現在、「非在来型石油・ガスを主とした西半球」「在来型石油・ガスを主とした東半球」という2大生産分布が形成されている。 

図1 世界の化石エネルギー資源の分布

(棒グラフは左から「在来型総量」「在来型残余」「在来型予想埋蔵量」「非在来型総量」「石炭埋蔵量」、単位:石油換算108トン) 

表1 2014年世界エネルギー生産量・消費量対比表(単位:108石油換算トン)
注:BPデータに基づく
エネルギータイプ 生産・消費 世界:量・割合 中国:量・割合
石油 生産量 42.21 32.3% 2.11 8.4%
消費量 42.11 32.6% 5.20 17.5%
天然ガス 生産量 31.27 24.0% 1.21 4.8%
消費量 30.66 23.7% 1.67 5.6%
石炭 生産量 39.34 30.1% 18.45 73.8%
消費量 38.83 30.0% 19.61 66.0%
原子力発電 生産量 5.74 4.4% 0.29 1.2%
消費量 5.74 4.4% 0.29 1.0%
水力発電 生産量 8.79 6.7% 2.41 9.6%
消費量 8.79 6.8% 2.41 8.1%
再生可能 生産量 3.17 2.4% 0.53 2.1%
消費量 3.17 2.5% 0.53 1.8%
合計 生産量 130.52 100.0% 25.00 100.0%
消費量 129.29 100.0% 29.71 100.0%

 中国などの新興経済体における石炭生産能力の拡張の影響を受け、世界の石炭生産量の不均衡性は高まり、石炭生産量がアジア太平洋で際立って大きい局面は強化されている。北米と欧州は、石炭資源が豊富だが、i その生産量は下降の流れにある。アジア太平洋石炭の生産量は急速に伸び、生産の主体となっており、中国の石炭生産量はすでに世界の半数を占めている。2004年、世界の石炭総生産量は55.9×10 8 t(石油換算28.4×10 8 t) [4] で、アジア太平洋と北米、欧州の3大生産地域の比率はそれぞれ56.1%、21.5%、15.8%だった。2014年には、世界の石炭総生産量は81.65×10 8 t(石油換算39.3×10 8 t)(表1) [2] に達し、アジア太平洋と北米、欧州の3大生産地域の比率はそれぞれ69.2%、14.0%、11.2%となった。2004年と比べると、世 界の石炭総生産量は38.4%増加した。中国は、石 炭生産量の増加の主力となり、世界の生産増加量の67.0%を占めた。

2.1.3 化石エネルギー消費の分布

 新興経済圏のエネルギー需要量の増加と生態環境容量の限界への接近に伴い、人類はますます、異なるエネルギーの種類の間での選択を迫られつつある。この選択は、世 界の化石エネルギー消費の分布に直接かつ深刻な影響を与え、これを新たに作り変えつつある。

 世界のエネルギー消費は、社会経済の発展水準と資源の獲得の難度と関係している。米国や欧州などの先進国のエネルギー需要量は安定を保ち、ア ジア太平洋の新興経済体のエネルギー需要量は急速に増加している。化石エネルギーの消費の分布は、北米と欧州、アジア太平洋の3地域への分布から、東半球と西半球との「両極化」した分布へと発展しつつある。2 004年の世界の化石エネルギー消費量は石油換算90.1×10 8t [4] で、北米と欧州、アジア太平洋の比率はそれぞれ 27.1%、27.6%、33.0%だった。2014年には、世界の化石エネルギー消費総量は石油換算111.6×10 8t(表1)、北米と欧州、アジア太平洋の比率はそれぞれ21.3%、20.1%、43.1%となった [2] 。2004年と比べると、世界の化石エネルギー消費量は23.8%増加した。こ のうち北米と欧州のエネルギー消費量の増加はそれぞれ-2.7%と-9.7%で、マイナス成長となった。2 004年から2014年までに、アジア太平洋地域の化石エネルギー消費総量は石油換算29.7×10 8tから同48.2×10 8t [2,4] となり、増加率は62.3%に達した。このうち石炭と石油、天然ガスの消費量はそれぞれ81.9%、29.5%、79.3%増加した。

2.2 新エネルギーの分布

2.2.1 再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーによる発電はすでに、主要なエネルギー利用方式となり、再生可能エネルギーの発展の未来をリードしている。風 力エネルギーや太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの開発利用のための科学技術水準が絶え間なく高まる中、欧州とアジア太平洋、北米の新エネルギーの3大分布が初期的に形成されている。2014年、世 界の風力発電の発電容量は51.477GW [5] 、太陽エネルギー発電の発電容量は177 GW [5] 再生可能エネルギーによる総発電量は石油換算3.17×10 8 tに達した [2] 。このうち欧州と北米、アジア太平洋はそれぞれ39.3%、23.2%、29.7%を占めた。

 バイオマス燃料の生産は、強い地域性を持つと同時に、サトウキビなどの農作物の生産量の影響を受け、その発展は総体として緩慢である。現在までに、北 米と中南米を中心とする2大生産地域が初期的に形成されている。2004年、バイオマス燃料の生産量は石油換算0.16×10 8 tで [6] 、このうち北米と中南米がそれぞれ39.4%と44.5%を占めていた。2014年までに総生産量は石油換算0.71×10 8 tに達し [5] 、このうち北米と中南米、欧州、アジア太平洋の比率はそれぞれ44.1%、28.7%、16.3%、10.6%となった。

2.2.2 水力発電の分布

 世界の水力発電技術は成熟に向かっている。同産業の発展は主に、水力資源の分布条件の制限を受け、総体として、アジア太平洋と欧州、北米、中南米の4大地域が形成されている。2 014年の世界の水力発電の総発電容量は1036GW、発電総量は約3900TWh(石油換算8.79×10 8 t) [2,7] に達した。このうちアジア太平洋と欧州、北米、中南米はそれぞれ38.9%、22.3%、17.5%、17.7%を占めた。米 国とカナダは水力発電の発展で世界をリードする地位にあり、水 力発電の発電容量はそれぞれ79.6GWと77.6GWに達している(揚水発電を含まない) [7] 。米国政府は、発展を奨励しており、2 014年には3つの法律を公布し、既存の水利インフラへの小型水力発電プロジェクト建設の審査認可のプロセスを簡略化し、既 存の水利施設または水力発電の潜在力を持つ場所への水力発電プロジェクトの建設に対しては、関連費用の免除の対象となる水力発電の発電容量標準を5MWから10MWに引き上げた。カナダでは、総 発電量に占める水力発電の割合が63%に達し、建設中の水力発電プロジェクトの発電容量は4,000MWに達している。

2.2.3 原子力発電の分布

 日本の福島原発事故の影響を受け、世界の原子力発電の発展は総体として慎重な傾向にある。現在、欧州と北米の2大地域が中心となっている。2014年、世 界のオングリッド原子力発電ユニットの総発電容量は4,763MWe [8] で、総発電量は石油換算5.74×10 8 tに低下した。このうち欧州と北米はそれぞれ46.3%と37.6%を占めた。2014年、世界で建設中の発電ユニットの総数は70基に達し、総 発電容量は約74GWeとなっている [8,9] 。2014年に世界で新たにオングリッドで稼働が始められた原子炉は4基で、このうち中国の発電ユニットは方家山1号機(PWR、1,000MW)、福清1号機( PWR、1,000MW)、寧徳2号機( PWR、1,018MW)の3基で、残りの1基はアルゼンチンのATUCHA-2号機(PHWR、692MW)だった。

その3へつづく)

参考文献

[1]鄒才能, 陶士振, 侯連華,朱如凱, 袁選俊, 張国生, 等. 非常規油気地質学[M]. 北京:地質出版社,2014.

[2]BP.BP statistical review of world energy 2015[EB/OL].(2015-06)[2015-ll-20].
http://www.bp.com/content/dam/bp/pdf/energy-economics/statistical-review-2015/bp-statistical-review-of-world-energy-2015-full-report.pdf

[3]鄒才能, 瞿光明, 張光亜, 王紅軍, 張国生, 李建忠, 等. 全球常規―非常規油気形成分布、資源潜力及趨勢預測[J]. 石油勘探与開発, 2015,42(1):13-25.

[4]BP.BP statistical review of world energy 2005[EB/OL].(2005-06-14)[2015-ll-20].
http://envirofinance.com/downloads/energy_markets/bp_report_2005.pdf

[5]REN21.Renewables2015global status report[EB/OL].(2015-06-18)[2015-l1-20].
http://www.ren21.net/wp-content/uploads/2015/07/GSR2015_KeyFindings_lowres.pdf

[6]REN21.The first decade:2004_2014[EB/OL].[2015-11-20].
http://www.ren21.net/Portals/0/documents/activities/Topical%20Reports/REN21_10yr.pdf

[7]IHA.2015 hydropower status report[EB/OL].[2015-11-21].
http://www.hydropower.org/sites/default/files/publications-docs/2015%20Hydropower%20Status%20Report%20double%20pages.pdf

[8]IEA/NEA. Technology roadmap: Nuclear energy[EB/OL].(2015-08-29)[2015-11-23].
http://www.iea.org/publications/freepublications/publication/Nuclear_RM_2015_FINAL_WEB_Sept_2015_V3.pdf

[9]張映紅, 路保平. 世界能源趨勢預測及能源技術革命特徴分析[J]. 天然気工業, 2015, 35(10): 1-10.

※本稿は鄒才能、趙群、張国生、熊波、「能源革命:従化石能源到新能源」(『天然気工業』第36巻第1期、2016年1月,pp.1-10)を『天然気工業』編集部の許可を得て日本語訳・転 載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司