第122号
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中国の高比率再生可能エネルギー発展の実現のための研究(その3)

2016年11月18日

白 建華:国網エネルギー研究院

工学博士、高級工程師(エンジニア)、国務院特殊手当専門家。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、エネルギー・経済・環境・電力総合発展計画など。

辛 頌旭:国網エネルギー研究院

工学修士、高級工程師。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、新エネルギー送電網接続・運用、技術経済評価など。

劉 俊:国網エネルギー研究院

工学博士、高級工程師。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、再生可能エネルギー送電網接続、エネルギー貯蔵技術など。

鄭 寛:国網エネルギー研究院

工学博士、工程師。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、新エネルギー送電網接続・運用、技術経済評価など。

その2よりつづき)

3 中国の高比率再生可能エネルギーの発展の見通し

3.1 全社会の電力使用量の予測状況

 今後かなり長い時期にわたって、中国の電力消費の増加は基本的に、経済の成長とともに増加していくものと見られ、エネルギー全体の消費よりも成長率は高くなると予想される。中長期電力需要予測モデルによると、中国の全社会電力使用量は2020年、8.4×104億kW・hに達し、「電気による石炭の代替」が加速すれば、8.8×104億kW・hに達する可能性もある。2050年には、中国の全社会電力使用量は15×104億kW・h前後にのぼり、一人あたりの電力使用量は1万kW・hを超えると見られる。

3.2 電源発展の状況

 2050年までに、全国の水力発電の発電容量は5.4億kW前後、風力発電の発電容量は15億kWから20億kW,太陽エネルギー発電の発電容量は15億kWから20億kW、バイオマス発電の発電容量は0.8億kWから1億kWに達するものと見られる。全国の再生可能エネルギーの発電容量の規模は36.2億kWから46.4億kWとなる。このほか原子力発電の発電容量の規模は2億kWから3億kWに達するものと見られる。

 電力計画モデルを採用し、前述の再生可能エネルギー発展目標を前提として、未来の中国のその他の電源発展の状況を最適化する。計算結果によると、2050年には、全国の石炭発電の発電容量は9億kWから10億kW、ガス発電の発電容量は2億kWから3億kW、エネルギー貯蔵容量の規模は4億kWから6億kWとなる。

 以上を総合すると、2050年の全国の発電容量規模は56.2億kWから65.4億kWとなり、そのうち再生可能エネルギー発電の発電容量規模は36.2億kWから46.4億kWに達し、全国の総発電容量に占める割合は64%~71%へと拡大する。2050年、全国の再生可能エネルギーの発電量は8.5×104億kW・hから10.5×104億kW・hとなり、全国の電力使用量の57%~70%にのぼることとなる。

3.3 地域間の電力網接続と電力潮流増加の状況

 国家電網の経営地域における送電先電力網が西部・北部のエネルギー基地から受け取る地域間電力潮流規模は2020年までに、2.7億kWから3.1億kWに達する見通しだ。2030年までに、中国の地域間電力潮流規模は引き続き増加し、電力網の輸送能力も引き続き高まり、全国の地域間電力潮流の規模は4億kWから5億kWに達し、電力潮流における再生可能エネルギーの比重は引き続き増加する。2050年までに、再生可能エネルギーとりわけ風力発電と太陽光発電の急劇な成長に伴い、全国の地域間電力潮流の規模は引き続き増大し、6億kWから8億kWに達し、再生可能エネルギーは、電力潮流の増加を引っ張る主力となるものと見られる。未来の中国の電力網の接続局面は図2に示す通りである。

図2

図2 未来の中国の電力網接続の局面

Fig. 2 Power grid structure of China in future

3.4 エネルギー貯蔵の作用と需要の分析

 分析計算において、エネルギー貯蔵(揚水発電所を含む)を候補電源として最適化を行う。2050年の全国の最大負荷は24億kW前後、年間の最小負荷は12億kW前後となると見られる。再生可能エネルギーだけを考えると、最小出力は3億kWに満たず、最大出力は19億kWから25億kWに達する従来型電源の運用を考えに入れれば、システムの発電の出力が負荷を超える値はさらに大きくなる。このため高比率の再生可能エネルギー発展の実現は、エネルギーの貯蔵に新たな要求を提示している。2050年の発展の生産シミュレーション結果に基づき、すべてのシステムの出力が負荷を超えたという状況で統計を取ると、95%の状況においては、全国の地域間の接続の制約を考えなくても、必要なエネルギー貯蔵容量は5.6億kWから7.8億kW、必要なエネルギー貯蔵発電量は20億kW・hから30億kW・hに達し、エネルギー貯蔵設備の平均全出力エネルギー貯蔵(充電)時間は4h前後となる。地域間の電力網接続の容量と直流運行などの要素の制約を考えると、各地域間の協調は「全国で統一的な制約のない電力市場」という理想状態に到達するとは考えられず、エネルギー貯蔵設備にはさらに一定の規模の増額が必要となる。未来の電動自動車による電力システム調節への参加や、需要サイドの応答などの要素を考えれば、未来の中国のエネルギー貯蔵の必要量は4億kWから6億kWと見られる。

3.5 石炭燃焼発電の発展とポジション

 中国の電源構造における再生可能エネルギーの割合の高まりにつれて、石炭発電の比重は次第に低下し、2050年には16.3%にまで低下していると考えられる。石炭発電は、電力供給の任務を担うというよりもむしろ、再生可能エネルギーの大規模な送電網接続後のシステム調節と予備のための容量需要の増加を満たすために重要となる。発電の効果は相対的に高まり、石炭発電の利用時間は大幅に減少する。計算によると、2050年、全国の平均石炭発電利用時間は3000h前後となり、現在の全国の石炭発電の平均利用時間よりも約1800h少なくなる。再生可能エネルギーを優先的に近場で吸収するとの原則から、再生可能エネルギーの比重が比較的大きい地区の石炭発電利用時間は相対的に低くなる。このうち東北・西北・南方・華中の電力網の火力発電利用時間数は全国の平均水準を下回ることとなる。華北と華東の電力網の再生可能エネルギーの比重は比較的低く、火力発電の利用時間数は全国の平均水準をいくらか上回ることとなる。図3に示す通りである。

図3

図 3:2050 年各地域石炭発電平均利用時間数

Fig. 3 Average utilization hours of coal power of each area of China in 2050

3.6 総合効果の評価

(1)エネルギー構造の最適化が明らかに進む。

 再生可能エネルギーの大規模な開発利用に伴い、再生可能エネルギーが中国の一次エネルギー消費に占める比重は2014年の10.1%から2020年の13.4%、2030年の20.6%、2050年の62.5%へと上昇する。図4に示す通りである。原子力発電を考えると、2050年に非化石エネルギーが中国の一次エネルギー消費に占める比重は72%に達し、同時に、中国のエネルギーの対外依存度も現在の20%前後から2050年には5%前後に下がると見られる。

図4

図 4:再生可能エネルギーが中国の一次エネルギー供給に占める割合

Fig. 4 Proportion of the renewable energy to the primary energy in China

(赤は再生可能エネルギー量、青は再生可能エネルギーの比率、左軸の単位は億標準炭トン)

(2)全国の電力供給コストが明らかに低下する。

 風力発電と太陽エネルギーのオングリッド電力価格は2020年と2025年に石炭発電に相当するようになる。その後、再生可能エネルギーのオングリッド電力価格はさらに石炭発電を下回るようになり、電力価格の上昇を有効に抑えるものとなる。2050年までに、西部と北部のエネルギー基地が年間に東中部地区へと輸送する再生可能エネルギーの発電量は3×104億kW・hに達し、東中部の電力供給コストが毎年約6000億元減少し、各業界の生産コストを有効に低下するものとなる。省エネ・排出削減の効果は際立っている。2050年には、年間でSO2を2090万t、窒素酸化物を2220万t、CO2を80億t排出削減できるようになり、これは2013年の中国の各種汚染物排出量の1~1.3倍に相当する。技術の進歩と排出標準の高まりを考慮すれば、2050年の中国の各種の大気汚染物の排出量は現在の18~25%に抑えられ、大気の質は明らかに改善することとなる。全国における環境ロスは際立って減少する。2050年、再生可能エネルギーの開発量は原炭44億tに相当し、環境外部損失は9000億元減少する住民の生活条件の改善や衛生医療費の減少などの要素を考慮すると、毎年の減少可能な環境損失は約2×104億元に達する。

4 発展経路研究

 高比率再生可能エネルギー発展目標の実現にあたっては、水力発電と風力発電、太陽エネルギー発電の大規模利用を実現すると同時に、従来型電源と新型エネルギー貯蔵、電力網の調和的な発展を総合的に考慮する必要がある。本稿が提出した2050年の発展見通しは、中国の資源の潜在力と電源・電力網・エネルギー貯蔵などの技術の発展趨勢を総合的に考慮したものである。異なる発展段階の実現経路は図5に示す通りである。

図5

図中の電源の発電容量と電力潮流の単位は億kWとする。

図5:中国高比率再生可能エネルギー発展ロードマップ

 具体的な発展経路は以下の通りである。2020年前においては、水力発電と風力発電の開発利用度を重点的に拡大し、石炭発電の高効率・大容量ユニットを重点的に発展させ、スマートグリッドを建設し、揚水発電所を大いに発展させ、模範となるエネルギー貯蔵新技術を積極的に開発し、新たなエネルギー供給能力におけるクリーン化の程度の向上に努め、再生可能エネルギーの発電容量の割合を35%に到達させる。2020年から2030年までは、原子力エネルギーや風力エネルギー、太陽エネルギーなどのクリーンエネルギーを新たなエネルギー供給の中心とし、石炭発電を適量発展させ、電源総体を低炭素成長の段階に入れ、エネルギー貯蔵新技術の普及に努め、再生可能エネルギーの発電容量が占める割合を48%に到達させる。2030年から2050年までは、海上風力発電や太陽熱発電技術を成熟させ、エネルギー供給方式の重要な一部に発展させると同時に、エネルギー貯蔵技術を急速に発展させることによって、再生可能エネルギーの大規模発展と効率的な利用に力強い保障を与え、2050年までに再生可能エネルギーの発電容量の割合を63%に高めるという目標を実現する。

 電力網構造の構築の面では、超高圧交流・直流送電技術の成熟に伴い、中国国家電網の経営地域においては、華北・華東・華中の「三華」の超高圧電力網を核心とした電力網が形成され、東北と西北、西南の3大地域を送り出し側とし、「三華」を受け入れ側とする4つの同期電力網の局面が形成されている。各級の電力網の協調発展の強化を通じ、堅固なスマートグリッドを形成し、電力システムの知能化と情報化の水準を徐々に高め、高比率再生可能エネルギー発展の実現における電力網の資源配置作用を十分に発揮させる必要がある。

5 まとめと政策の提案

 エネルギー構造を調整し、再生可能エネルギーを大いに発展させることはすでに、エネルギー安全や環境汚染、気候変動などの問題を解決するための世界各国の共通認識となっている。中国において今後、高比率で高効率の再生可能エネルギー発展を実現するには、再生可能エネルギーの発展に対する長期的で積極的な、安定した支援を次の4つの面から国家レベルで与える必要がある。

(1)再生可能エネルギー目標をガイドラインとすることを重視する。国家は、再生可能エネルギーの各段階における発展目標と計画を制定し、目標の実現をめぐって、総合的な優遇政策と保障措置を取り、市場経済の手段を通じて、再生可能エネルギー分野における投資を奨励し、利用水準を高める必要がある。

(2)電源と電力網の統一計画を強化する。再生可能エネルギーの建設を総体電力計画に組み込み、風力発電所や太陽エネルギー発電所の接続と集中のための施設の最適化と同時建設を進める。主要電力網の建設を事前に計画し、省内及び省・地域間の電力網建設を強化し、西部・北部地区からの超高圧送電ルートの建設を加速する。

(3)電力価格や手当、租税などの政策の仕組みを整える。従来型火力発電所の汚染物やCO2排出の外部コスト徴収標準を打ち出し、化石エネルギーの省エネ・排出削減を促進する。再生可能エネルギーのオングリッド電力価格と手当のダイナミックな調整メカニズムを構築し、再生可能エネルギー技術の進歩とコストの低下を促進する。従来型の電源と電力網の輔助サービスの補償または奨励価格政策を整備し、従来型の電源と電力網の再生可能エネルギーの変動への適応の能動性と積極性を高める。

(4)技術の革新とブレークスルーによるリードをはかる。第一に、電力網技術の革新発展を強化し、超高圧送電技術の開発を一層推進し、より高い輸送能力を備え、複雑な環境に適応した超高圧技術を発展させる。第二に、風力発電や太陽エネルギー発電のキー技術の発展を強化する。これには、先進的な大型風力発電ユニット・低風速ユニット、風力発電所の出力予測・予報、効率的な太陽光電池、低コストの太陽熱発電ユニット、大容量インバーター・マイクロインバータ―などが含まれる。

(おわり)

※本稿は白建華,辛頌旭,劉俊,鄭寛「中国実現高比例可再生能源発展路径研究」(『中国電機工程学報』第35巻第14期、2015年7月,pp.3699-3705)を『中国電機工程学報』編 集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司