第122号
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中国の農業由来バイオマスエネルギー産業の発展の現状と効果の評価にかかる研究(その1)

2016年11月22日

高 文永:農業部農業エコロジー・資源保護総合ステーション

博士。主に農村の再生可能エネルギー利用や農業における資源・環境保護に関する業務に従事する。

李 景明:
農業部農業エコロジー・資源保護総合ステーション、中国メタン発酵ガス学会

概要:

 農業由来のバイオマスエネルギーとその関連産業の発展は、化石エネルギーからの効果的な代替につながるほか、エネルギー構造の最適化や対外依存度の低減、国のエネルギー安全保障、エネルギー供給体制の安定化にとっても重要な意義を有する。本稿は、中国の農業由来バイオマスエネルギー資源の開発にかかる現状について実地調査や資料収集を行い、2000年から2013年までの全国の関連統計データを踏まえた上で、国内各地の農業におけるバイオマスエネルギーの現状について定量研究や効果分析を行った上で、中国のバイオマスエネルギー産業の発展のために科学的な根拠を提示するものである。

【キーワード】 バイオマスエネルギー、資源評価、産業発展、対策研究

1. 中国の農業由来バイオマスエネルギー産業発展の現状評価

1.1 中国の農村におけるバイオマス資源の利用開発状況

 中国の農村においてバイオマス資源はかなり豊富であり、現時点で利用可能な農業由来バイオマスエネルギー資源のほとんどが広大な農村地域に分布している。中国の農村におけるバイオマスエネルギーの利用及びその産業の発展状況にかかる分析を通して、中国にけるバイオマスエネルギーの利用およびその産業の発展状况をおおむね把握することができる。中国の農村においては、すでに多様な形でバイオマスエネルギーが利用されている。本稿では、中国におけるバイオマスエネルギー産業の発展の現状把握に当たり、農村で行われている主要なバイオマスエネルギー利用方式のいくつかに焦点を当てる。

 中国の農村におけるメタン発酵・利用、特に家庭用のメタン発酵設備や、各種廃棄物の処理に利用される比較的大型のメタン発酵プロジェクトは、中国におけるバイオマスエネルギー産業の中でも比較的進展の早い応用分野であり、一部のメタン発酵・利用プロジェクトでは、メタンを製造するほか、他の利用可能な方式の模索も進めており、有効利用を実現している。

 1999年~2013年における中国の農村におけるメタン発酵・利用情况については、表1~表3を参照のこと。

表1 1999年~2013年における中国のメタン発酵・利用情况[1]

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表2 1999年~2013年の中国におけるメタン発酵・利用情况(農業廃棄物処理) [1]

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表3 1999~2013年の中国におけるメタン発酵・利用情况(工業廃棄物処理) [1]

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 家庭でのメタン利用の推進に力を入れる中国では、家庭用メタン設備が年々増加し、受益者となる家庭も増えつつある[2]。2003年からは、同年に始まったメタン発酵・利用を柱とする「生態家園富民計画(エコ住居による住民富裕化)」を受けて、その増加がやや加速している。同計画は「2003 年農業部重点活動」に位置付けられ、同年の農民支援事業に選ばれたほか、農業・農村関連事業を的確に進めるための国の活動意見書でも、農村におけるメタン施設の整備加速を打ち出しており、農村におけるメタン事業のための国債プロジェクトが実施されたり、アジア開発銀行プロジェクトによる借款がスタートするなど、いずれも中国の農村におけるメタン事業の発展を促している。

 表1~表3から見て取れるように、中国の農村におけるメタン事業の発展は、全体としては良好な状況であり、処理能力や処理量、有効利用能力のいずれも伸びている。

 メタンの利用のほかにも、表4に示した通り、中国の農村では藁の改質・利用技術の普及や応用も進んでいる。中国の農村における藁の改質・利用技術には、主にガス化及びガス集中供給、炭化、固化による成型燃料の製造などがあり、これら技術の実施規模は通常さほど大きくない。これら3種の利用技術は、数量、ガス供給量、藁利用量のいずれにおいても、固化成型燃料を除いて年々拡大しつつある。こうした技術の応用・普及や規模の拡大は、農作物とともに生じる藁の有効利用により、農業生産の副産物の無駄を減らし、廃棄物を十分に活用するものでもあり、農村の生態環境の改善に優れた貢献を果たしている。

表4 中国における藁の利用情况

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1. 2 中国の農業由来バイオマスエネルギー産業のキャパシティ

 中国における農業由来バイオマスエネルギー産業はスタートこそ遅かったものの、資源条件、生産能力ともに良好であり[3]、中でもバイオディーゼル、バイオマスのメタン化、バイオマス発電産業の発展が急速に進んでいる。バイオマス発電産業のうち、農業生産・加工余剰物を利用した分野でキャパシティの拡大が力強く、サトウキビかすを利用した発電量は170 万kWに達する[4]

 中国のバイオマスエネルギー産業はなお発展段階の初期にあり、様々な利用形式があるものの、いずれも今後の発展においてキャパシティや規模の拡大と、品質向上が望まれている。中国のバイオマスエネルギーをめぐる現状として、そのキャパシティは中国の中長期的な発展目標との間になお大きな隔たりがあり、バイオマスを利用したメタン製造や発電などの一部産業のキャパシティについては、なお大きな発展や向上の余地がある。目標との隔たりが比較的小さい燃料エタノールやバイオディーゼルといった産業でも、目下のところ原料の転換や品質向上などになお問題を抱えている。

 現在、中国における農業由来バイオマスエネルギー産業の布陣はほぼ合理的と言えるものの、なお一連の問題が存在する。その主たるものは、産業の発展規模と利用可能な原料量とのアンバランスであり、一部の資源が豊富な地域では産業の発展速度が遅いため、運輸コストが高くなり、資源の浪費につながりかねないなどの問題がある。

その2へつづく)

参考文献

[1] 農業部科技教育司/『中国農村エネルギー年鑑』[M] 北京: 農業出版社、2013

[2] 李景明/『中国メタン発酵30年』[M]北京:中国農業出版社、2012

[3] 李景明,薛梅/『中国バイオマスエネルギー利用の現状と発展の展望』[J].農業科技管理、2010.4,29(2) :1-4.

[4] 陳建省、張春慶,田紀春ほか/『バイオマスエネルギー発展の趨勢及び策略』[J]山東農業科学、2008,(4):120-124.

※本稿は高文永,李景明「中国農業生物質能産業発展現状与効応評価研究」(『中国沼気』第33巻第1期、2015年,pp.46-52)を『中国沼気』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司