第142号
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新材料産業は「資源シェア」の時代に突入

2018年7月13日 柯懐鴻(科技日報記者)/謝開飛

情報の孤島をつなげ取引の効率を向上

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視覚中国より

 以前は毎年、使用時間が600時間ほどだったのが、今は1200時間になった。これは、貴州大学化学・化学工業学院の大型器具「走査型電子顕微鏡」(SEM)が貴州省器具公共オンラインサービスプラットフォームに盛り込まれて以降の変化だ。

 中国工業・信息(情報)化部(省)、財政部(省)がこのほど発表した、ハイエンド器具のシェアから、各種イノベーション資源のシェアを盛り込んだ、「国家新材料産業資源シェアプラットフォーム建設プラン」(以下「プラン」)は、中国の新材料産業の資源シェアサービス水準を全面的に向上させ、業界管理水準や公共サービス供給能力を向上させることを目的としている。

情報封鎖を打破し、シェアプラットフォームの構築を呼びかける

 伝統産業が盛んな福建省晋江市の主力商品の一つは運動靴だ。同市の靴企業は、福建海峡グラフェン産業技術研究院が開発したグラフェン3D多層マイクロエアー技術、表面セッティング・コーティング処理技術、TPUプラズマイオン表面処理技術などを活用し、石を点じて金と成し、同市の産業モデル転換・高度化を実現させるのに一役買っている。

 戦略型新興産業の重点発展分野の一つである新材料は、製造業全体のモデル転換・高度化の産業基礎となっている。グラフェン、ナノ、超伝導体などの新材料が現在、世界中の新たなテクノロジー革命と産業変革を牽引している。中国工業・信息化部原材料工業司の関連の責任者によると、新材料産業には、品種のカテゴリーが多い、生産、使用する企業が多い、広い地域に分布している、産業の上流と下流の需要と供給の関係が複雑などの特徴がある。長年の急速な発展を経て、大量の資源を蓄積しているものの、各種資源がさまざまな主体に分布し、情報が封鎖されている、アンバランス、資源が未使用、無駄になっている、取引・流通が困難、その価値が効果的に発掘、利用されるのが難しい、資源のシェアがスムーズでないなどの問題解決が急務だ。

 そのため、「プラン」は、インターネット、ビッグデータ、人工知能などの技術と結び合わせて、垂直化、専門化した資源シェアプラットフォームを立ち上げ、オンライン・オフラインを組み合わせたスタイルを採用し、技術・設備、研究・開発・設計、生産・製造、経営・管理、仕入れ・販売などの分野の資源のシェアサービスを展開しなければならないとしている。同責任者は、「国家戦略と新材料産業の発展・需要を方向性とし、新材料の分野の資源のオープン化とシェアメカニズムを構築、整備し、商品の設計、研究、開発、生産、運営、管理の知的意志決定、最適化の深化を促進し、カギとなる器具・設備のオンラインによる連結とサービスシェアを実現し、協同イノベーションを促進し、取引の効率を向上させなければならない」と指摘する。

成果の転化、プラットフォーム建設の弱い部分を強化

 水、電気、ガスなどの公共サービスが都市のライフラインであるように、資源の統合、プロジェクトのマッチング、取引・サービスなどの基本的なサービスは、新材料産業の資源シェアプラットフォームの効果的な運営を促す原動力だ。

 「プラン」は、「製造強国戦略の重大な需要と新材料産業の発展の需要を満たすために、産業チェーンや資源のオープン化とシェアの弱い部分を強化する」としている。プラットフォームのシステムソースの建設に関しては、政務情報サービス、業界知識サービス、器具・設備のシェア、テクノロジー成果の転化、需要と供給のマッチングサービス、その他の資源・サービスの6大システムモジュールが含まれている。

 福建省テクノロジー発展研究センター・テクノロジー管理研究室の陳徳金・室長は、「産業資源のシェアプラットフォーム建設を加速させなければならない。うち、テクノロジー成果の転化、需要と供給のマッチングサービス、器具・設備のシェアなどは、産業チェーン全体において最も弱い部分であるのは間違いなく、資源のオープン化とシェアにおける課題を克服するのが急務」と指摘している。

 陳室長の分析によると、現在、中国のテクノロジー成果の転化の妨げになっている要素は多く、うち情報交流は、テクノロジー成果の転化においてカギとなる部分で、テクノロジー資源の配置の「断片化」、「情報の孤島」などの問題が原因で、研究開発の主体と企業間の情報がアンバランスになることが多く、企業の技術のイノベーション活動や成果の転化をかなりの程度妨げている。

 いかに産業のイノベーション資源を活用し、企業とのイノベーション、需要のシェア、マッチングを実現すればいいのだろう?福建省では、海峡技術転換公共サービスプラットフォームの模索が縮図となっている。同プラットフォームは、福建省のテクノロジーイノベーション、資源シェアの重要なプラットフォームの一つで、産業化を方向性として、「インターネット+テクノロジー成果転化」という技術転換のスタイルを導入し、最先端のネットワークプラットフォーム、Eコマースなどの手段を活用して、成果、人材、サービス、政策などのイノベーションの要素を集め、コネクティビティの技術取引ネットワークを構築し、福建「テクノロジー淘宝城」を作り、地域技術発展の需要や世界のイノベーション資源のマッチングをめぐるワンストップサービスを提供している。プラットフォームが立ち上げられてから1年の間に、技術成果2万件(特許技術を含む)、企業の需要3000件以上、専門家4785人、アンカー科学研究院所235軒が集まり、中国国内で最先端の重大技術プロジェクト成果の多くが福建省で転化されるよう促進しており、イノベーション資源を集めるうえで重要な役割を果たしている。

優位性誇る機構を呼び込む資源シェア生態システムの形成が必要

 情報資源シェアプラットフォームや各種マッチング、取引サービスプラットフォームなどの取引ココスをいかに効果的に削減し、取引周期を短縮し、イノベーションの効率を向上させればいいのだろう?国家新材料産業発展専門家咨訊委員会の徐堅氏は、「需要のある企業側と技術供給側をつなげるために、体制、メカニズムの革新が必要」との見方を示す。

 「優勢性を誇る機構がプラットフォームの建設に参加するよう奨励し、専門のサービスを提供する能力のある社会化機構を積極的に誘致し、豊富な資源が集まり、イノベーションが活発で、効果的に協力できるサービス生態システムを構築しなければならない」。「プラン」は、資源シェアプラットフォーム運営スタイルの位置付けは、公共利益事業をメインとし、基礎サービスが無料で、特色ある付加的サービスは内容に基づいて合理的に料金を徴収するとしている。そして、融通性があり、多様な運営スタイルや特色ある資源、有料付加的サービスなどの解決策を模索し、独立して良好な運営ができるよう模索するようにと奨励している。

 この点、浙江省は率先して「テクノロジーイノベーションクラウディングサービスプラットフォーム」を構築し、サービスを購入するためのイノベーション券を配布して、企業が所有する科学研究のハードウェア、資源、サービスなどをプラットフォームを通してシェアできるようにし、中小企業、零細企業の起業、イノベーションを効果的にサポートし、プラットフォームが活力あふれる場所になるようにしている。また、大規模な相互作用がある資源シェアプラットフォームの各産業、各分野における応用が日に日に活発になっており、これも新材料産業の資源の交流、連結が加速するよう促進している。

 中国初の新材料産業生態プラットフォームである「新材全球網」は、「注文獲得」と「共同購入」をメインテーマに、無料で取引のマッチングを行うことで取引コスト削減を実現し、運営効率を向上させ、プラットフォームでの材料の共同購入を実現し、新材料産業関連の上流・下流の企業や大学、科学研究機構、金融機構などにサービスを提供し、「ビッグデータ」、「新インターネットシンキング」の応用を基にした新材料産業チェーン生態システムを形成している。科学研究、技術取引界の「阿里巴巴(アリババ)」と呼ばれる「科易網」はプラットフォーム上で、技術貿易情報サービス、マッチングサービス、取引サービスなどの一連の"商品"を提供し、技術、業務、データなどが融合した産業資源シェアポータルネットワーク体系を構築している。「科易網」の責任者は、「当サイトは接触する企業のイノベーションをめぐる需要を発掘し、企業の特許取引、技術の人材の採用などをめぐる専門的なサポートを提供し、さまざまな応用シーンを研究、開発することができる」と説明する。

 福建工程学院科学研究処の鄒復民処長は、「政府・企業・学校・科学研究機構・ユーザーが統一して推進するメカニズムを作り、政府、企業、業界、社会が参加し、共有・共同ガバナンスシェアを実現しなければならない。新材料産業のイノベーション資源シェアプラットフォームの建設は、市場メカニズムという『見えざる手』が基礎的役割を果たすほか、政府という『見える手』の導きが必要で、産業チェーンの各部分の資源シェア需要を満たすことを目標にして、テクノロジー資源シェアの良好な生態環境を積極的に作り出し、資源のオープン化とシェアの効果と利益を最大化しなければならない」との見方を示す。


※本稿は、科技日報「新材料産業進入"資源共享時間"」2018年7月4日付,第06版を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。