第142号
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北斗2号の「サブメンバー」が宇宙で活躍

2018年7月24日 潘 晨(科技日報記者)/付 毅飛

 10日午前4時58分、中国四川省の西昌衛星発射センターから、衛星打ち上げロケット・長征2号を使い、32基目となる北斗測位衛星を打ち上げた。

 近年、北斗グローバルネットワークの構築が徐々に進み、北斗3号衛星が中国測位衛星の舞台の「主役」となっている。しかし、今回のミッションで打ち上げられたのは、北斗2号の衛星だ。

 中国の宇宙開発計画における主契約企業である中国航天科技集団公司五院を取材したところ、この衛星は段階的に「退役」する北斗2号の「先代」に代わって、現有の北斗測位システムの安定した運行を全力で維持することが分かった。「サブメンバー」として登場するものの、縁の下の力持ちとして活躍する。

地域限定システムの「根拠地」を死守

 「もう北斗3号があるのに、まだ北斗2号が必要なのか?」と感じる人もいるかもしれない。

 北斗2号衛星総指揮兼チーフデザイナー楊慧氏は、「北斗は、非常に重要なシステムで、ユーザーに安定したサービスを提供し続けなければならない」と説明する。

 自身の北斗の「三段階発展」に対する見方を説明し、「北斗1号の登場で、それまでになかった中国独自に開発を行なっている衛星測位システムが存在するようになり、中国北斗が生き残るために戦う能力を示した。北斗2号は、驚く速さの『チャイニーズスピード』で、地域測位システムを構築し、国外の測位衛星システムに対する依存から完全に脱却し、ユーザーに対する『約束』を果たした。北斗3号は、設計指標と測位精度にさらに磨きをかけて性能を大幅に向上させ、グローバルネットワークの道を歩み始めた」と語った。

 北斗2号衛星の首任総指揮を担当する李祖洪氏は「『三段階発展』の各段階はそれぞれ連結、自然移行し、航空宇宙システムプロジェクトの順を追って着実に前進し続けるという原則に完全に沿っている」との見方を示す。

 北斗3号の全世界をカバーするという「意気込み」は、北斗2号から引き継いでいる。特に北斗3号が集中的に発射され、急速にネットワークが形成されている重要な時期に、北斗測位地域システムの確実な運行には、「根拠地」を死守するかのような意義があり、北斗をめぐるプロジェクト全体にとって非常に重要だ。

 2012年末から、地域サービスを正式に提供するようになって以降、北斗測位システムは安定した運行を続けており、どんな天候であっても、24時間、アジア太平洋地域のユーザーに高精度で信頼性の高い位置測定、航法、調時のサービスを提供し、それが中断したことは一度もない。

先代のミッションを引き継ぐ

 初期に次々に打ち上げられた北斗2号衛星の「先代」は今、老朽化が進んでおり、続々と退役の時期に差し掛かっている。そのため、中国は前もって準備を進めてきた。

 楊氏は「北斗はシステムプロジェクトで、1度の測位にも複数の衛星が必要。そのため、設計の時点で、システムに余裕を持たせることを十分に考慮し、サービス提供に必要な数よりも多い衛星を打ち上げている。1基の衛星が基準をクリアしない場合、他の衛星がそれに代わってミッションを引き継ぎ、システムが安定して運行し続けるようにしている」と説明する。

 地域限定測位衛星システムのサービスを確実に提供するために、北斗2号プロジェクトリーディンググループは早くも2012年に、北斗2号の予備衛星を4基増やすことに決めた。各「サブメンバー」には、仕事を引き継ぐ対象の「先代」があり、それぞれ段階的にバトンを受け、宇宙でミッションを遂行する。

 その時から、北斗の「ベースキャンプ」では、北斗3号チームがギアをさらに上げてグローバルネットワーク構築のために準備を進める一方、北斗2号チームは既に打ち上げられている数多くの衛星の維持と、「サブメンバー」の製作という重責を担ってきた。全身全霊で研究開発された「サブメンバー」の衛星2基が2016年に発射され、現在安定して運行を続けている。今回打ち上げに成功した第32基北斗測位衛星は、3基目の「サブメンバー」の衛星だ。

「途中出場」は単なる「コピー」ではない

 「途中出場」というのは、単なる「コピー」ではない。「先代」の良い模範を引き継ぐと同時に、第32基北斗測位衛星は、国産化の水準向上、軌道上の問題の改善、ユーザーの新たな需要への対応などの面で一連の最適化、アップグレードが行われており、信頼性が一層高まっている。

 一次設計、特定項目チェック、分類投入、秩序立てた推進、流れ作業、ロット生産、同時出荷、集中発射など、北斗測位衛星の研究開発の特徴と組み合わせて、中国航天科技集団公司五院は段階的に構想からパターン、そして体制へのギアアップを実現し、引き継ぎと革新、技術指標と国家工業基礎の統一した調整を行い、宇宙科学・研究・生産のモデル転換・高度化を実現した。そのような構想を引き継いだ第32基の北斗測位衛星は、先陣を切ってリモートテスティングを採用し、発射場のプロセスの最適化、発射場の人員削減などの面で、意義ある試みを実施し、今後の北斗測位衛星に新たな道を切り開いた。

 楊氏は、「できる限りのことをし、ベストを尽くす。これが、北斗測位の世界に対する厳粛な誓いだ」と話す。


※本稿は、科技日報「北斗二号"替補"星精彩上場」2018年7月11日付,第01版を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

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