大型航空機デジタル化組み立て技術の研究
2018年9月5日 李城 李進平(航空工業西飛)
概要:
デジタル化組み立て技術の背景と発展の現状の分析を通じ、大型航空機構造の長耐用年数や高信頼性、高効率、低コストの確保に対してデジタル化組み立て技術が持つ意義を指摘し、航空機デジタル化組み立て技術がすでに、中国の航空機組み立て技術の重要な発展方向になっていることを示した。本稿は、デジタル化組み立てにおける自動精密穴開けやデジタル化連結プラットフォーム、システム統合制御などの技術を概説したものである。業界関係者の参考とし、大型航空機のデジタル化組み立て技術の研究を共同で推進することを望む。
キーワード:大型航空機、デジタル化、組み立て、穴開け
大型航空機の製造は、大国の工業の総合的な実力をはかる重要な要素である。大型航空機の機体構造には、サイズが大きい、信頼性への要求が高い、耐用年数に対する要求が高いなどの特徴がある。中国は、大型航空機の製造能力を備えた世界でも数少ない国の一つである。だが航空機のデジタル化組み立て分野では、中国は依然として、初期的な発展段階にある。航空機の複合材料の運用比率の高まり、航空機製品の品質と生産効率に対する要求の高まりに伴い、デジタル化組み立て技術はすでに、中国の航空機組み立て技術発展の新たな方向性となっている。大型航空機のデジタル化組み立て技術の研究は、中国の大型航空機組み立て水準と航空企業のデジタル化製造水準の全面的な引き上げを推進する重要な役割を果たすものとなる。
1 デジタル化組み立て技術の研究の現状
時代の発展に伴い、大型航空機も発展を続け、その構造技術はより複雑化し、大型航空機の組み立てに新たな課題を提起している。伝統的な航空機組み立て技術はすでに、航空機組み立ての発展のニーズを満たせなくなっている。まず大型航空機は構造が複雑で、組み立ての作業量が大きいことから、手動での穴開けでの治具位置決定や下穴開け、拡孔、リーマ通し、皿取りなど各操作プロセスでの穴開け効率は、設備を使った一度での穴開けによる効率をはるかに下回り、その組み立て周期は生産進捗度の要求を満たすことができない。手動穴開けで大量の治具が必要になることも設備コストを増大し、機体更新のコストや周期を高める。次に航空機製造では複合材料の運用がますます広まり、伝統的な手動穴開けは労働者の健康にとってもよくない。さらに複合材料の穴開けでは、亀裂や分層、強熱などの問題が発生しやすく、手動の穴開けでは複合材料の穴開けの質の要求を満たすことができない。最後に穴開けの質が不安定である。手動での穴開けや皿取りの方式では、正確な穴開けの孔径や垂直度、皿取りの深さを確保できず、接続の強度や航空機表面の平面性にも影響を及ぼす。デジタル化組み立ては、航空機の構造連結部の疲労強度を有効に高め、生産効率を向上させ、労働者の労働強度と生産コストを引き下げることができる。デジタル化を利用した航空機組み立ては必然的な発展の方向性となる。
世界の航空製造業大手のボーイングやエアバス、ロッキード・マーティンなどは1980年代にはすでに、航空機のデジタル化組み立て技術の発展を開始し、航空機の大量の組み立て生産に幅広く運用し、航空機の生産量を大きく高めている。現在、中国のデジタル化組み立ての応用規模には限りがあり、パネルの自動ドリリング・リベッティング技術での運用は比較的成熟し、機体の総組み立てや主翼ボックスの総組み立て、動翼の組み立てのデジタル化組み立ての運用でも一定の成果を上げているが、技術は未成熟で、主には依然として人間の操作に依存している。
2 デジタル化組み立て技術の概説
2.1 自動化精密穴開け
航空機の構造故障絶の大部分は、構造連結部位の亀裂の出現と拡張によって引き起こされる。大型航空機の耐用年数の長い連結と高効率・高信頼性の技術要求を満たすため、中国はすでに、航空機のデジタル化組み立てを航空製造の重要な発展方向としている。
自動化穴開け設備は、法線方向測定、カメラキャリブレーション、磁気センサーキャリブレーション、自動締め付け、切削工具の検査、穴の自動検査などの機能を備え、穴開けと皿取りを一度でスピーディーに完了し、自動キャリブレーション/自動穴開け/臨時固定具の自動設置を実現する。設備の位置決め精度は0.1m、繰り返し位置決め精度は0.05mm以下、穴開け孔径精度はH8に達する。アルミ合金やチタン合金、複合材料などのよく見られる航空材料に対し、混合サンドイッチ構造の一度での穴開けができ、異なる材料に対し、回転速度や送り量などを自動調整する穴開け工法のパラメーターを設置することができる。現代の自動化穴開け技術研究には、デジタル化測量技術、データ統合・制御技術、オフラインプログラミング技術、加工プロセスの分析、加工パラメーターの研究などが含まれる。
2.2 システム統合制御技術
航空機デジタル化組み立ての過程では、多くのシステムの協調や連携が必要となる。これらのシステムは、デジタル化組み立てに共同でデータを提供。システム統合制御技術は、これらのデータを統合し、データ間のインタラクションと協調を確保する。システム統合制御技術の研究には主に、次のいくつかが含まれる。まず、データの採取技術、デジタル化組み立てシステムと連携できるマルチシステムの統合を研究する必要がある[5]。次に、データ処理の基準とシステムのインターフェイス技術を研究する必要がある。最後に、立体制御技術とリアルタイムのモニタリング・フィードバックのオンライン制御技術を研究する必要がある。
2.3 航空機のパネル構造の組み立て
パネル構造は、航空機の主翼と機体によく見られる構造である。パネル組み立ての工法性分析に基づけば、パネル構造はデジタル化組み立て技術の利用に適し、自動ドリリング・リベッティング設備の主要技術の難点攻略と技術案、工法プロセスを結合することにより、パネルのプレ組み立てフレキシブルシステム、パネル自動ドリリング・リベッティングシステム、パネル接続フレキシブルシステムなどの整ったパネルモジュールデジタル化組み立てシステムを用いることができる。航空機パネル構造の組み立て過程でのこうしたシステムの運用は、パネルモジュールのデジタル化組み立て工程、関連データの自動採取と分析処理を実現し、システム全体のデジタル化協調能力を十分に発揮させ、パネルモジュールの組み立てと後期の作業の展開を便利にし、パネルモジュール組み立ての効率と製品の品質を大きく高めることができる。
2.4 デジタル化連結プラットフォーム
デジタル化による位置決めの設備を利用することで、主翼の設置過程で設置ポジションをキープすることができる。データの伝送を通じて設備の運動方向の制御・制約を実現し、位置決めのポジションを調整し、最終的に航空機の外翼と中央翼の有効な連結を実現する。連結エリアの多くは、自動化設備による穴開け、高干渉固定具での連結を採用しており、構成部品の疲労寿命を伸ばすことができる。主翼の上下翼面にはフレキシブル加工工作機械をそれぞれ一台ずつ設置し、自動ドリリング・リベッティング装置を配備、穴開けとリベッティングを一度に完了する。レーザー設備を通じて、航空機の主翼の異なる位置の位置決めを行うことができると同時に、より良いデータを取得し、デジタル制御位置決めシステムにフィードバックすることでポジションを調整し、さらに主翼の連結後のねじれ耐性を測定することもできる。
3 デジタル化組み立て技術の発展
デジタル化組み立て技術は、多くの分野で幅広く応用できる。航空機組み立てへの応用時には、航空機組み立て過程の全面的な記録や情報を提供することができ、航空機組み立てをさらに精密化し、組み立ての質と生産効率を高めることもできる。中国はここ数年、この面での研究を強化し、一定の成果を上げた。だがデジタル化組み立てのシステム制御技術の発展と運用ニーズとの結合は十分ではない。航空機デジタル化組み立ての運用においては、絶えず模索と検証、発展を続け、科学的な発展戦略を制定してデジタル化組み立て技術の発展を促進する必要がある。現有技術の熟練と把握を進めると同時に、新たな設備や技術の導入も続け[6]、デジタル化組み立て技術の人材育成を強化し、将来の航空機製造産業の発展ニーズを満たす必要がある。
4 結語
このように大型航空機の組み立てに対しては、デジタル化組み立て技術を採用することにより、製品の品質や生産効率を高めることができ、これは未来の大型航空機の量産の必然的な選択と言える。だが中国は現在、航空機の組み立て分野の作業は依然として手動が中心で、労働強度が高く、生産周期は長く、製造コストも高い。中国は、自動化精密穴開け技術やシステム統合制御技術、デジタル化組み立て技術の運用などの研究強化する必要がある。技術者のたゆまぬ努力があれば、近い将来、デジタル化組み立て技術は中国の航空機製造産業に幅広く用いられることになるだろう。
参考文献:
[1] 成書民, 張海宝, 康永剛. 数字化装配技術及工芸装備在大型飛機研制中的応用[J].航空製造技術,2014 (22):10-15.
[2] 王巍, 兪鴻均, 安宏喜,等.大型飛機数字化装配在線測量技術研究[J].航空製造技術,2015(7):48-52.
[3] 董一巍, 李暁琳, 趙奇. 大型飛機研制中的若干数字化智能装配技術[J].航空製造技術,2016(Z1):58-63.
[4] 周園, 張莎莎, 周旭. 大型飛機数字化装配技術初探[J].科技創新導報,2015(15):96.
[5] 宋利康, 朱永国, 劉春鋒, 等. 大飛機数字化装配関鍵技術及其応用[J].航空製造技術,2016(5):32-35.
[6] 季青松, 陳軍, 范斌, 等. 大型飛機自動化装配技術的応用与発展[J].航空製造技術,2014(Z1):75-78.
※本稿は李城, 李進平「大型飛機数字化装配技術研究」(『科技創新導報』2017年36期、pp.5-6)を『科技創新導報』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司