第146号
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業界の再編成でソーシャル・イノベーション・プラットフォームは量から質の変化へ

2018年11月15日 潘劉嘉露/王春、劉垠(科技日報記者)

 中国政府が「大衆による起業・イノベーション」というスローガンを打ち出して以降、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームが急速に発展し、イノベーション・起業の主戦場となっている。現在、上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームは500軒以上で、国際イノベーション資源が集まる場所となっている。胡潤百富と上海市科学技術委員会が発表した「上海市ソーシャル・イノベーション・プラットフォーム発展白書」の初のオンライン電子版がこのほど、2018年「浦江イノベーションフォーラム起業家フォーラム」で発表された。

 2017年版の同白書と比べると、今年の白書は上海に進出している企業チームのより詳しい統計、分析を示しているほか、グラフを通して上海の各区域のサポート政策を比較したり、上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームを、国外の異なる生態系、サービス機能と比べたりして、幾つかの注目ポイントをまとめると同時に、上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームに対する提案も行っている。

 報道によると、上海市のソーシャル・イノベーション・プラットフォームの数は2015--16年に爆発的に増加したものの、2017年には、「マタイ効果」が起き、「量」から「質」への変化が始まった。業界の再編成が進み、資源が少しずつ「強者」に集まるようになり、「量」から「質」へと変化した。最終的に、強者はさらに強くなり、弱者は淘汰されるという結果になると見られている。

 また、2017年、上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームの利益は大幅に増加し、売上高が300万元(1元は約16. 4円)以上のプラットフォームの数も前年同期比16.2ポイント上昇したものの、大半のソーシャル・イノベーション・プラットフォームが運営を専門的な水準に向上させて、継続的に利益を確保できる経営スタイルを実現することが急務となっている。規模においては、現在上海に進出している起業チームの6割は10人未満のチームで、その多くがハイテク分野の電子情報、バイオ医薬・医療器械、先端製造業に集中している。その他、15年以降の政府サポート文書を見ると、上海では実績ベースの奨励型政策が最も多いが、イノベーション・起業の発展を促進するのは、直接的な資金援助だ。国際交流協力の分野では、上海市は2017年、国際協力交流活動を712回企画し、多くの世界的に知られるソーシャル・イノベーション・プラットフォームが上海に既に進出している。また、「起業査証(ビザ)」を発給するなどして、国外のプロジェクトの誘致に取り組んでいる。

 同時に、白書は発展のための以下の5つの提案を行っている。

 1つ目は、生態系を整備し、産業の構造を最適化することだ。今後、上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームは、全要素が詰まるシェア型インキュベータープラットフォームのほか、さまざまな産業構造の特徴と結び合わせた専門的なソーシャル・イノベーション・プラットフォームを構築し、地域資源の優位性を生かして、「量より質」の原則に沿い、企業インキュベーションの効率、質を向上させ、産業チェーンを構築し、それが伸びるようサポートすべきだ。

 2つ目は、経営スタイルの革新を進め、サービス競争力を強化することだ。上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームは、継続的に利益を得ることができる個別化のビジネススタイルを模索すべきだ。例えば、Yコンビネーターの運営スタイルは、少しの株式所有権を、インキュベーションサービスに変え、コストを抑えると同時にプロジェクトの孵化もサポートするというものだ。そして、インキュベーションプロジェクトが成功すると、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームも恩恵にあずかるという、良い循環が形成されている。

 3つ目は、政策サポートに専念し、投資の牽引力を強化することだ。現在、上海の一部のソーシャル・イノベーション・プラットフォームには、クラスター化の特徴が現れるようになっている。各区は、それぞれの地域事情に応じた牽引を行って、クラスター発展のデメリットを克服すべきだ。また、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームの依存性を下げ、自身の競争力を向上するために、政府は「資金」をメインにしたサポートを、できるだけ優待政策に変えるべきだ。

 4つ目は、国際協力を深化させ、海外進出の能力を向上させることだ。上海は今後、国際協力を深化させ、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームに対して、海外進出能力を向上させるよう奨励すべきだ。そのために、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームと、世界的に知られるソーシャル・イノベーション・プラットフォーム、企業の深い協力をサポートするほか、さらに多くのグローバル人材の誘致に取り組むべきだ。

 5つ目は、PRを強化して、ブランドの影響力を向上させることだ。上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームは、マルチメディアを活用して、インキュベーションに成功したプロジェクトや活動、コンテストなどをPR・報道することで、プラットフォームの影響力を強化し、さらに多くの企業、投資家、指導役、資源を誘致すべきだ。

 2017年、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームの発展は前の2年と比べると落ち着いた状態になり、「量」から「質」の発展へと移行する重要な時期を迎えている。まさに、その2017年、上海市は、「イノベーション起業サービス体系能力向上計画」を打ち出し、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームの「プロフェッショナル化、ブランド化、グローバル化」のための育成、育成牽引事業を正式にスタートした。2年間で、139のソーシャル・イノベーション・プラットフォームがプロジェクトを立ち上げるためのサポートを得て、傾斜性があり、ランク付けがなされ、また弱肉強食の競争原理が働くソーシャル・イノベーション・プラットフォームの育成体系を徐々に構築し、関係するソーシャル・イノベーション・プラットフォームの大きな発展を推し進めている。そして運営スタイル、サービス業績、インキュベーションの効果によって、上海のソーシャル・イノベーション・プラットフォームの発展を牽引している。


本稿は、科技日報「行業洗牌後 衆創空間由"量変"到"質変"」(2018年11月5日第06版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。