天井を補強し基礎を固める―原材料工業の品質向上へ
2018年11月26日 于紫月(科技日報実習記者)
原材料工業は、国民経済の基礎であり、柱である産業で、鉄鋼、非鉄金属、レアアース、石油化学工業、化学工業、建材など各分野をカバーする。その発展水準が、国内の製造業の水準をそのまま反映する。
中国工業信息化部、科技部、商務部、市場監管総局がこのほど発表した「原材料工業質量提昇三年行動法案(2018--20年)」(以下「行動計画」)は、鉄鋼、非鉄金属、石油化学工業、建 材の4業界の行動目標を明確に示し、供給水準体系を整備し、技術のクオリティをめぐる難題に取り組み、「インターネット+」を推進するなどの重要な措置を挙げ、製 造業が確実にハイクオリティな発展を遂げることができるように計画している。
規格の制定・改訂が品質向上の前提
材料の規格化とは、材料の生産、選択、管理などの過程で一連の規格を確立することだ。
中国の材料の規格体系には現時点でどんな課題が存在しているのだろう?長年、材料の規格化に携わっている業界関係者・李強氏(仮名)は取材に対して、「中国のほとんどの材料の規格の名称や内容が、規 格の応用範囲を制限しており、業界を超えて使うことができない」と指摘する。現有の規格のほとんどが往々にして、企業の規格という形で存在し、規格化の範囲が狭く、汎用性を備えていない。実際には、各 種材料規格の背景には、信頼できる材料の供給元が必要で、それがなければ、製品の継続的、かつ確実な発展を確保することはできない。信頼できる材料の供給元は、かなりの程度材料の汎用化に依存している。
その他、李氏は別の問題について、「材料と規格の間の対応関係が不明確で、同じコードの材料でも、内容が類似している複数の規格に対応していている可能性があり、製品の研究、製造、設計、材 料の選択などにマイナスの影響を与える」と指摘する。
中国の材料の規格は数が非常に多い。中国国外の状況と比べると、米国のASTMインターナショナルの材料の規格は約2000項目と、少ない。うち、金属や非金属、複合材料の規格の数はいずれも、中 国のそれより少ない。
なぜ、中国の材料の規格の数はそれほど多いのだろう?その原因は、同じ材料が往往にして、類似した複数の規格に対応しているからだ。例えば、2A12アルミニウム合金の規格を見ると、2 つの規格の化学成分、外形の寸法、生態力学性能などに対する条件がほぼ同じで、違う点と言えば、そのうちの一つのほうが組織の構造やテストに対してより細やかな条件があるだけだ。「 これは規格の内容が重複している典型的なケース。整合を取って規格を統一することに問題はない」と李氏。
行動計画は、原材料の規格化体系を整備することに言及し、そうすることで製品の品質を確保すると同時に、原材料の節約、管理の円滑化を促進し、流動資本の回転を加速させ、製品のコストを下げるとしている。
また、行動計画は、現段階の材料の規格体系の欠点を指摘し、今後3年以内に、規格の先進性、協同性、牽引性を向上させなければならないとしている。李氏は、「規格の先進性を高めるには、材 料の規格が規定する指標の量や存在度に対する高い条件をクリアしなければならない。行動計画は、生産抑制、描写・性能、使用期間評価を規格の制定・改訂の重要なポイントとしている。これらの分野において、規 格先進性は、同じ指標に対して一層厳格で的を絞った条件について表れており、数だけでなく、質を一層重視している」と分析する。
協同性を見ると、金属加工に従事する企業の責任者は、「行動計画が言及している複数の部門の規格の制定・改訂の協同にしても、川上・川下の規格の協同にしても、生産側の参加は多いものの、ユ ーザー側の参加が少ないというのが、よくある問題だ。材料工業は、製品製造のための原料を提供し、多くの製品が最終的に消費者にサービスを提供する。規格制定の過程で、ユーザーの願いを無視すると、本 末転倒となってしまう。そのため、建設材料の規格化体系は、科学研究、生産、ユーザー、検査・測定などの各主体に十分の人材を動員し、共に重点分野の規格の制定・改訂業務を推進しなければならない」と指摘する。
李氏は、「中国国内の原材料の規格は、最先端とはまだ距離があり、協同性も不十分であり、各国の連携が日に日に緊密になっている今、国際規格と一致させなければ、中国の製品は、本 当の意味で世界に進出することはできない」との見方を示す。
技術のブレイクスルー、品質の向上に必要な内なる力
規格化体系構築のトップダウンの下、質と技術の面におけるたくさんの難題解決が急務だ。行動計画は、コア技術・基盤技術のブレイクスルー、品質管理技術の最適化が必要であるほか、技 術成果の転化を加速しなければならないと指摘している。
コア・基盤技術のブレイクスルーのためには、世界最先端の技術、製品を目標にして、まず、業界が重点を置く製品の難題解決に力を集中して注ぎ、その成果を他にも役立て、最終的に、材 料業界の全面的な発展を強化しなければならない。寧波博威合金材料股份有限公司の研究開発総監・趙紅彬氏は取材に対して、「順を追って一歩一歩進めなければならない。中国の同分野の発展の歴史は浅く、多 くの材料の細分化が、世界の最先端水準とまだ大きな差があることを認識しなければならない。海外の協調型製品企業に対してM&Aを実施するというのも先進国に追いつくための手っ取り早い方法かもしれない」と の見方を示す。
ただ、「M&Aにより、ある分野で先進国との『並走』を実現することはできても、一時的な解決策に過ぎず、問題を根本的に解決してはいない。もし、『先頭を走る』のであれば、コ ア技術の面で他の人の制約を受けてはならず、そのために基礎研究や自主イノベーションの面での取り組みが必要だ」と強調する。
急所となっているコア技術の分野に力を集中させるほか、大量生産の過程における質の安定を効果的にコントロールできるようでなければならない。品質管理の最適化という面で、自動化、情 報化された設備の検査・測定、データ診断、自動モニタリングなどのシステムを構築することが、企業の今後の主たる発展の方向性であることは間違いない。それらオンラインモニタリング、分析されたデータも、管 理者にとっては、品質の向上や関連の対策のための有力なサポートとなる。
コア技術の科学研究、模索と高品質の製品の間で、技術成果の転化という重要な部分をなおざりにしてはならない。これは「ごく当たり前のこと」であるものの、時 代によってそこに新たな意味も加わってくるものだ。趙氏は、「原材料の川下製品を生産する主体である企業は、ハイエンド製品を作るという意識を持ち、関連の科学研究院と積極的に折衝して、国が牽引し、科 学研究機関が協力するという有利な情勢下において、主観的能動性を発揮し、新技術、新製造工程、新製品を本当の意味で実現しなければならない」と指摘する。
品質向上をバックアップする「インターネット+」
「インターネット+」時代の到来により、伝統的な原材料工業企業はどのようにモデル転換を実現すれば良いのだろう?行動計画はその明確な答えとして、「インターネット+」を通して、品 質の向上を実現させることを挙げている。その中には、スマート工場の建設を推進し、品質のスマート管理を展開し、品質の追跡能力を向上させることなどが含まれる。
現在、材料工業の「インターネット+」の整備はどのような状況なのだろう?
趙氏は現状について、「アセンブリなどの業界と比べると、材料業界の『インターネット+』の整備は遅れている。ほとんどの材料関連の企業は、情報化の初期段階にある」と指摘する。また、浙 江海亮股份有限公司情報部の陳鋼部長も、「デジタル化モデル転換の分野では、ほとんどの企業がスマート製造デジタル化工場やサプライチェーンのバランスマネジメント、財務共有など、一層スマートで、正確、か つ円滑な情報化システムを構築するための計画初期段階にある」との見方を示す。
趙氏は、「原材料工業を含む多くの産業において、スマート化製造がトレンドとなっている。規格化の統制の下、スマート化は、モジュール化--自動化--情報化--デジタル化という段階を経て実現する」とする。ま た、陳部長も、「製品の技術規格、製造工程の規程を機器・設備のモジュールにしっかりと組み込めば、経験主義が原因のミスを避けることができ、操作する人のミスも減る。労働者が行うのが不適切な、あ るいは重複や過重な作業を自動化して高度化し、技術の情報化を製造過程全体に盛り込むことで、人、機器、原材料、方法、環境などの生産要素をうまく融合させて、最 終的にスマート製造デジタル化工場の目標を達成することができる」との見方を示す。
「スマート工場の建設や品質のスマート管理などの措置を通して、最終的に、製品の品質がより安定し、製品供給能力が向上し、必要な人員も減り、一 層正確で細分化された製品の生産コストをリアルタイムで見ることができるようになるだろう」とも陳部長は言及した。
優れたビジョンのもと、各方面の一致した努力が必要となる。陳部長は、「生産設備の種類は多く、インターフェースの規格が統一されていないため、企業はこの分野に多くの資金を投じなければならない。政 府が設備のインターフェースの規格化を推進することを願っている。また、政府が伝統的な業界のスマート製造、企業の情報化などの面で、モデル事業に対するサポートを強化することを願っている。企業にとって、人 材が最も貴重な財産であることに間違いはない。資金を人材の取り込みに配分し、人材を招聘して、流出しないようにできるようでなければならない」と指摘する。
本稿は、科技日報「補"頂棚"打"地基" 提昇原材料工業質量」(2018年11月14日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。